死んでいる、というのは不思議なことなのかも知れない

久しぶりの予定がない連休。することもなくて、ずっとごちゃごちゃと頭の中を混ぜ返すようなことばかり考えていた。それで、私が例えば明日死んだって、誰も気づかないんだよなあって。不意に思った。明後日は仕事だから、そこで初めて気付くんだ。「ああ、あいつ、遅刻かな?」って思われて、まずは職場の上司が私に電話をする。繋がらない電話に苛々させるんだろうな。それで、何度かけても電話に出なくて、暫くは諦められて、お昼か、夕方くらいに家族に連絡がいく。家族に。って、誰に連絡されるんだろう。母か、祖父母か、でもきっと母には繋がらないんだろう。だから祖父母だ。でも祖父母に連絡しても私の家は知らないし、鍵もないし、どうにもできないだろうな。心配だけさせて、申し訳ないな。兄にも電話されるだろうか。それなら多分兄じゃなくて兄の職場に繋がる方が早い。多分。
夕方になって、漸く母が電話に出て、私に連絡が取れないことを知る。けど、どうだろうか。それを知ってあの人は、何をするんだろう。多分、苛々したメールが来て、「連絡しなさい。人に迷惑をかけるな」なんて書かれていて。でも私がそれを読むことはないね。それか、勘の鋭い人だから、もしかしたら何となく私が死んでいることを察するんだろうか。それは嫌だな。そういう予感は、無駄に人を悲しませるだけな気がする。
それで、その日の夜か、次の日か、その辺りに初めて誰かが私の家に来るんだろう。もうその時には腐りはじめているだろうか。人が腐るまでにはどれくらいの時間が必要なんだろう。腐りたくはないな、申し訳ないし。冬は腐りにくいのかな。でも、暖房と電気毛布は消しておかなきゃな。
そもそも一体、最初に誰が見つけるんだろう。母はきっと忙しいから来ないだろうし、祖父母には荷が重いし、兄は遠くにいるし、上司か、先輩かな。あの上司だろうか。すごくお世話になったし、何だか本当に謝りたくなってきたな。他人の死体なんて見たくないだろうにな。申し訳ないよなあ。ああ、警察だったらいいのに。仕事なら、割り切ってくれるかもしれない。腐った私を見て、嫌な顔をするんだろう。不憫に思われるかもしれない。20半ばの女性がどうして、と思ってくれるなら幸いだな。私の人生に、すこしでも思いを残してくれたなら。そうして、私の友人や、恋人が、私の死を知るのは、きっと随分後の話だ。だって誰も、私以外に私の周りの連絡先を知らないし、iphoneはロックがしてあるし、ああ、そしたら。彼らも彼女らも、私が死んだことに気付かずに数年を過ごすんだろうか。元々LINEの返信は全然しない方だし、相変わらず音沙汰がないなと思われて、また返事のないLINEにメッセージを送って、返信がないことに苛立って、いつしか見切られて、記憶から消されてしまうんだろうか。それはなんだか、不思議なものだなあ。じゃあ、私が死んでしまうことと、人知れずどこかに消えてしまうことでは、違いはないよなあ。生きてても、死ねるのかもしれないなあ。

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