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四国八十八ヶ所巡礼②

まだ免許もバイクも持っていない高校一年生の夏に、青春18切符で旅に出た事がある。

九州を出て、各駅停車に乗り山陽本線を東に進むと、岡山県の倉敷を過ぎた辺りから電車の中で聴こえてくる周囲の会話が関西弁になる。
すっげぇ、生の関西弁だ!と感動した覚えがある。
聴こえてくる会話の方言が変わった時、ああ、遠くに来たのだなと実感する。
お遍路が始まる徳島もまた、関西語圏である。
ちなみに愛媛あたりは広島弁に近い。

徳島県鳴門市にある1番札所霊山寺さんには、比較的大きな売店が併設されており、お遍路に必要な道具はここで揃う。
右も左も分からない状態で行っても、何をどう持つのか、をきちんと説明して頂けるので非常に助かる。
この準備がいまいち分からないので、愛媛や香川のお寺さんをスルーして、1番からの順打ちを選んだ。



北海道某局すずむしさんのように、山門で写真を撮って終り、ではなく、きちんと納経納札し御朱印を授かりながら寺院を巡り、初日は12番の焼山寺さんで門限が来た。

鳥居ではなく、発心門。この門をくぐるといよいよ88ヶ所の巡礼の旅が始まる。
第1番竺和山霊山寺
第2番日照山極楽寺
第3番亀光山金泉寺
第4番黒巌山大日寺
第5番無盡山地蔵寺
第6番温泉山安楽寺
第7番光明山十楽寺
第8番普明山熊谷寺
第9番正覺山法輪寺
第10番得度山切幡寺
第11番金剛山藤井寺
第12番摩盧山焼山寺

この12番焼山寺さんは、88ヶ所最初の遍路ころがしと呼ばれており、かなり山奥にある。

駐車場に着いた時点で門限が迫っており、焦りから駐車場から本堂までの山道を本当に走って駆け上り、納経を済ませ、17時ギリギリで御朱印を授かった。

生まれて初めて、
死んだらここに埋めてほしいと思った。
神秘的で美しいお寺。
焼山寺さんからの眺め。巡礼の初日が終わった。

余りに慌ててお参りした為、山を降りた道の駅で休憩しながら放心状態で地図が印刷された看板を眺めていた。

と言うか、ここは何処だ。

スマホのナビは便利だが、余りに頼り過ぎると方向感覚を失う。まして山道ばかり走って来たのでどっちが北やら南やら、である。
と、不意に後ろから声を掛けられた。


振り向いて見るも最初は誰だか分からなかったが、
あんた、最後にお参りしなすった人やろと言われて気付いた。
焼山寺さんで、御朱印を書いて下さった方だった。
泊まる所はあるか尋ねられ、〇〇町でキャンプしてます、と言うと丁寧に帰りの道を教えて頂いた。
何度もお礼を言い別れたが、私が初めて触れたお遍路の文化、お接待(おもてなし)の文化だったように思う。

だが、後に私はとんでもない間違いを犯した事に気付いた。

寺院に納経納札し御朱印を授かる時に、その寺院の御本尊様の姿が描かれた

「御影札(おみえふだ)」

と呼ばれる札を授かる。

手渡しで頂いたり、置いてある物を自分で取ったりする。
この焼山寺さんの御影札は後者のセルフスタイルだったのだが、

!?

間違えて、カラーの物を持って帰って来ちゃった!(有料)

濡れたり皺になるのを嫌い、ひとまとめにジップロックに入れて後で整理するスタイルがいけなかった。随分時間が経ってから気付いた。


すごく親切にして頂いたのに何だか泥棒みたいな真似を働いて、本当に申し訳ありません。
いずれお返しに(お金を払いに)伺います。
申し訳ありませんでした!


そのような事をしでかしてるとはつゆ知らず、日が暮れた山道をキャンプ場まで帰るのだった。

帰りに買った晩御飯。
コンビニに売っているミートソースのスパゲッティが甘い。
結構カルチャーショックを受けた。


つづく

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