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なぜ私たちがコーントルティーヤ専門店を作ったのか

こんにちは。
New Classic Tortilla Club(以下、NCTC)のオーナーの片山です。
NCTCはアジアで初のトルティーヤメーカーです。
2023年6月にアジアで初となるトルティーヤ専門店、
Tortilla Club TORTILLERIA(トルティーヤクラブトルティレリア)を代々木上原にオープンしました。
TORTILLERIA(トルティレリア)とはトルティーヤ屋さんという意味です。
トルティーヤとはメキシコや南米を中心とした国のトウモロコシをベースにした生地の事です。

ご来店頂いたお客様やNCTCを知ってくれている方からは
「何でトルティーヤなの?」と百発百中で聞かれます。説明した回数は数え切れません。
簡単に言うと「トルティーヤを米・パンに並ぶ日本の主食にしたいから」

そこで私たちの熱い想いを冷静に適温で届ける為に、NCTCの歴史からお店のオープンに至るまでの想いを綴ってみようと思います。


1.New Classic Tortilla Clubとは

NCTCは前述の通りアジア初のトルティーヤメーカーです。
NCTCの始まり〜コンセプトまでお伝えできればと思います。

・Los Tacos Azules

NCTCの始まりを伝えるうえで、このお店を避けては通れないでしょう。
2019年の春に三軒茶屋のLos Tacos Azules に行きました。

色々なタコスを注文すると運ばれてきたのは、素敵なお皿に乗った綺麗なタコス。
その中で一際目立つのがトルティーヤに一切れのアボカドが乗り塩を振っただけのシンプルすぎるアボカドのタコス。
尖りに尖ったスタイル。


他のタコスと並んでも一際目立つアボカドのタコス

アボカドのタコスを一口食べた瞬間、
「え、まじで…?」
今まで経験した事のない衝撃が走りました。「アボカドだけでこんな美味い事ある?」
アボカドだけとは思えない満足感。
そう思ってもう一口。
確かにアボカドは美味しい。一切れで出すぐらいだからちゃんとこだわって仕入れているアボカドなんだろう。
それはそれとしてこの満足感は何だろうか。
「これ秘訣はトルティーヤなんじゃね?」
そんな疑惑が自分の中に浮かびつつ、他のタコスも食べてみたがとても美味しい。そりゃ具材がめちゃくちゃ美味いもん。これだと分からない。
もう一回アボカドのタコスのみを注文してみた。
2回目もやはり見た目のシンプルさと相反する満足感。
『トルティーヤが美味しすぎるんだ!』
タコスを美味しくする物はトルティーヤなんだとこの時確信しました。
この瞬間に、
『将来トルティーヤメーカーになろう!』
『このトルティーヤを日本中誰でも食べれる世界を実現しよう』
そう決心しました。
ここからNCTCが始まるまではもう少し先のお話。

・自家製トルティーヤへの道のり

その後色々なタコス屋でタコスを食べましたが、あの衝撃を超えるトルティーヤに出会えない。
なぜだ…なぜなのだ。
ないなら作ってしまえばいい。
そう思って軽くリサーチすると、トルティーヤは小麦かトウモロコシかでまず2つに別れる。
あのお店で食べたのはコーントルティーヤと言ってた事を思い出したので、コーントルティーヤを作る事に決める。
本来はトウモロコシ粉で作るのが一般的ではあるが、そんな事を知る由もない自分は、コーンスターチを手に取り水に混ぜてこねるが一向にまとまらない。
終わりの見えない作業に痺れを切らした自分は小麦粉を混ぜるという本末転倒な事をしていた。
そうして初めて出来上がったトルティーヤは丸くならないし、カッチカチなのに中はゴムの様に噛み切れない、トルティーヤが出来上がった。
タイヤでも齧ってんのかと思いました。

もはやタコスではなく、無理やり伸ばした生地に具材を乗せた料理

そこで挫ける自分ではない。
後日Los Tacos Azulesに行き、トルティーヤを作ってみたが上手くいかなかった事を話したところトウモロコシ粉の存在を知る。
家に帰りリサーチを進めるとトルティーヤを作るための魔法の粉、マサハリナという物があると知りました。パンケーキミックスみたいなもんですね。
とりあえずマサハリナなるものをAmazonでポチって数日後、チートのような魔法の粉マサハリナを手に入れた自分は、早速トルティーヤを作ってみる。
「おお…めちゃくちゃ簡単じゃないか。」
「楽勝だぜ。」
調子に乗りながら作ったトルティーヤにテキトーに作った具材をのせ食べ、
「全然美味しくないじゃん…」
それはもうテンションだだ下がりでした。
不味くはないけど、Los Tacos Azulesのあの衝撃には遠く及ばない、
及ばないどころかそもそもの競技も違う。そんな感覚でした。

しかし、そこで挫ける自分ではない。
後日Los Tacos Azulesに行き、一通り食べ終えてトルティーヤの事を色々聞きました。
そもそも粉は使わず、トウモロコシの粒から直接生地を作っている事や、トウモロコシをトルティーヤにする為に伝統的な仕込み技術を使っている事を知りました。(多分今までも毎回説明してくれていたと思います…小学生が物理を習ってるぐらいのチンプンカンプンな状態でした。)
ただそこは小学生ならではのスポンジの様な吸収力で、知識を得た自分は色一気に中学生までレベルアップしました。

そこから更に自分でリサーチを重ね、ニクスタマルという伝統的なトルティーヤの製法を知りました。(ニクスタマルについてはまた改めて他の記事で)
ニクスタマルをする為には専用のトウモロコシ製粉機が必要であり、そもそもメキシコのトウモロコシも必要でした。
色々調べてみると、日本では手に入らないのでメキシコから輸入するしかなさそうだ。
なかなかハードルが高そうだぞ…。
更にリサーチを進めると、製粉機は何とかなりそうだがトウモロコシをどこに問い合わせればいいのかサッパリ。

だがしかし、そこで挫ける自分ではない。
リサーチを続けるうちにアメリカのMasiendaというコーントルティーヤブランドの存在を知りました。
Masiendaはトルティーヤを通じてメキシコのトウモロコシ農家を守り、メキシコのトウモロコシの在来種を守る活動をしている会社である。
実はトウモロコシは政治やカネの問題が密接に絡み合っている(この話は長くなるので別の機会に)

ここではメキシコの製粉機やトウモロコシを取り扱っている事を知り、直ぐに連絡をしてみた。
何日か経ち帰ってきた返信は、
「アメリカ以外に商品を送った実績もなければ送れるかどうかも分からない。あと、僕たちは売る相手には必ず面談を実施してから売るかどうか決めているから一度電話をしたい。」
そして向こうから来た候補の時間が、日本時間で夜中の24時〜27時。

よしよし、かなり前進したぞ。
とりあえず2日後の24時に電話面談の約束をした。
電話で面談と言われても、自分の英語力でまともな面談が出来るとも思えない。
そこでメールで予め自分の想いを伝える事にした。
「僕は日本でトルティーヤを主食にする為に活動しているトルティーヤメーカーで、君たちの応援が必要だ。そして僕が日本でトルティーヤを主食にできれば、結果として君達の活動の助けにもなるはずだ」
という様な、まだ何も始まっていないのにも関わらず勝手に抱いている熱い想いだけをつらつらと書いたメールを送った。

電話面談当日になり、
「本当に電話くるのかな?」と半信半疑で電話の前で待つと24時ぴったりに電話が鳴った。
「君の熱い思いは伝わったよ、早速だが欲しい物を教えてくれ」
製粉機やトウモロコシなど欲しい物をチョイスしてあっさりと面談はパスした。
「キターーーー!」
気持ちは電車男である。列車は走り出した。

後日、とうとう製粉機を手に入れた自分は早速トルティーヤ作りを開始する。
伝統製法の二クスタマルを経たトウモロコシを製粉機にかける。
さすがの海外製マシーンのやかましさで、トウモロコシをすり潰していく。
出てきた生地を見て、とうとうここまで来たかと感動。
平らにプレスしてフライパンで焼き、初めての自家製トルティーヤが完成した。

1から自分で作ったトルティーヤを口に入れると、それは今まで食べてきたタコス屋のトルティーヤとは全く違う、口に広がる芳醇な香りや軽やかな食感、しっかりとしたトウモロコシの味。
初めての製粉で、Los Tacos Azulesに次ぐ日本で2番目に美味しいトルティーヤが出来上がったのであった。

粒度がかなり荒めだが、初めてのトルティーヤ。

製粉機も手に入れ、トウモロコシも手に入れ日本で2番目に美味しいトルティーヤを作れるようになった。すぐ調子に乗ってしまう自分は、ここでトルティーヤメーカーを立ち上げることを決意した。

実際には今のNCTCのトルティーヤ作りはかなり細かい作業をひたすらに繰り返して完成しているので、トルティーヤについては改めてまた別の投稿で書く予定です。

・New Classic Tortilla Club

さて、美味しいトルティーヤを作れる様になった自分は、早速メーカーとしてトルティーヤを主食にする為に何が必要かを考えました。
まずはブランド名が必要だ。
Tortilla Clubという名前がすぐに浮かびました。
何か足りないなと思い、日本に新しい文化を創り将来的にクラシックになる存在という意味を込めてNew Classicという言葉を頭につけました。
そしてNew Classic Tortilla Clubが誕生しました。

名前は出来たものの、トルティーヤをコツコツ作ったところで主食になる気もしない。
自分がそうだった様に、初めて食べるトルティーヤが圧倒的に美味しい物でない限り、わざわざまた食べたいとは思って貰えないだろう。
その為に、手間暇かけて仕込んだトルティーヤを焼きたての状態をその場で食べてもらい、自分が経験したトルティーヤの感動体験を味わってもらう必要があった。
その為にまずはTORTIRELLIA(トルティーヤ屋)が必要だという確信がありました。
メキシコではコンビニの様にトルティーヤ屋さんがあり、各家庭やタコス屋さんまでトルティーヤを買いにきます。
主食になるにはオンラインではなくリアルな場所が必要だと思いました。

だがトルティーヤ屋さんが急に出来たところで売れるのだろうか。
そもそも日本人はトルティーヤと聞いて、タコスやブリトーの生地の部分と知っている人は多くない。感覚としては10人に1人ぐらいだろう。
タコスですらタコライスと間違われてしまうぐらいの認知度のこの国でどうやって進めていこう。どうやって認知度を高めていこう。
まずはブランドを知ってもらわなければいけない。

そしてこの時自分はただのサラリーマン。
お店もなければお金もない。あるのは製粉機とトウモロコシだけ。

そこで閃いてしまいました。
何もないなら、ある事にしてしまおう!(意味不明)
どういう事かと言うと、昔から存在していたかの様なブランドにしてしまうと言う事です。
架空(妄想)の話をまるで本当かの様にインスタに投稿して、先にファンを獲得してしまおうという戦略です。(詐欺師の発想)
妄想を現実に変えていくまでのストーリーを売りにしていこう。
そしてNCTCがあれこれやってファンが増えてきたら待望のお店をオープン
そんな流れが素敵じゃないか。

設定としては、メキシコのとある街New Classic Townのトルティーヤメーカーである、NCTCが日本でトルティーヤを主食にするまでの物語です。

早速インスタのアカウントを作成し、1発目の投稿しました。懐かしい。

こうして、2020年の8月より日本初のトルティーヤメーカーとして活動を開始しました。
しかし当初はイラストを描いて、架空の話をつけて投稿するというスタイル。イラストを描く時間がなかなか取れないんだこれが。
人に頼むお金もない僕はまた閃いちゃいました。
写真に合成しよう!(詐欺師の発想 part2)

ライターにTORTIILAという文字を合成しました。
まるで本当にあるかの様なライターだが、この時はまだない。
そして架空の設定をインスタに投稿し、もっと細かいストーリーはFictional Catalog(架空のカタログ)としてZINEの方にまとめていきました。
Fictional Catalogの中身は今後NOTEで1話ずつ公開していこうと思います。

こちらもアメリカで撮ったおじいさんの背中にロゴを合成しました。
もはや無いものをあるかの様に生み出す悪魔の手法を思いついてしまった僕は、架空の物をリアルにするという設定のもといいねの数が多いものを後から商品化していきました。
お店はないのにグッズは豊富という謎な状態でした。
お店はどこにあるんですか?というDMが来ることもしばしば。
「その時はメキシコにあるみたいですよ」と返していました。

あとはTacos Journeyと称して、タコス屋さんを食べ歩き勝手にレビューをする投稿などを繰り返し地味にファンを獲得する作業を繰り返していましたが、一向にお店を出せるような認知度は獲得出来ていませんでした。

架空の世界にはこんな素敵なお店を持っているのに…(知らんがな)
1階はショップ、2階がオフィスという個人的な想い爆発の物件です。
※ちなみにこの写真を見てお店を探して、迷われるお客さんが少なくないですが、外観全然違いますので。いかんせん架空ですので。

そんなある日、個人的にフォローしていた301 inc.の大谷さんのインスタのストーリーで、
「代々木上原で複合施設オープンの為にディレクションしています。詳細はまだ何も決まってないが興味ある方は連絡ください」
こんな感じの投稿を見つけました。
詳細は全く分からないが、投稿を見た瞬間すぐにDMを送っていました。
「投稿を拝見し、何も詳細が分からないまま、何か面白い事を始めたいな…と考えている自分がいました」と送っていました。
振り返ると面識もない人に送る文章とは思えないヤバさですね。
大谷さんが返信をくれていなければ今のNCTCはなかったでしょう。感謝感激。

DMでやり取りをし、話を聞くと代々木上原駅から徒歩30秒という好立地で1階にテナントが並ぶとのこと。
建物はメゾネットになっており、2階がついている。
架空の話が現実になった瞬間でした。

これはもう念願のTORTILLERIAをオープンするしかないじゃないか!
当初のファンを獲得を獲得してからという計画は、すでに頭の中にはありませんでした。
借りれるとも決まってないのに借りたつもりで動き始めていました。
店舗をやるにはスタッフが必要だ。
そう思い、前職での後輩に「トルティーヤを主食にする時が来たよ」そう言って引き抜きました。
誘い方もヤバいですが、来る方もヤバいですね。
しかもまだこの時はテナントが借りれるとも決まってなかったので
借りれてなかったら今頃どうなっていたのでしょうか。

正直収支を考えると、トルティーヤ屋さんがそんなにすぐに上手くいくとも思えないし不安は若干ありましたが、それ以上にトルティーヤを主食にするんだという勝手な使命感が僕を動かしていました。
そしてその後色々な苦難はありましたが、
日本初(アジアでも初らしい)のTORTILLERIAである、
Tortilla Club TORTILLERIA』を2023年6月にオープンしました。

2.Tortilla Club TORTILLERIAについて

長くなってしまいましたが、最後にTortilla Club TORTILLERIAについてちょろっとお話しします。

メキシコすぎないメキシコ感をイメージした店内になっています


私たちはタコス屋ではなくトルティーヤ屋さんです。
ブームを作ろうとしているのではなく、カルチャーを作ろうと思っています。
なので変に派手なパフォーマンスなどがある訳でもインスタ映えする様なメニューがあるわけではなく、他と違うのはどこよりも手間暇かけてトルティーヤの美味しさだけを追求しています。
気温や湿度、それに応じた煮込み時間などを毎日データに残し、日々トルティーヤを進化させています。
なので1回来て頂ければ最高なトルティーヤを食べて頂ける自信はありますが翌週はもっと最高なトルティーヤに進化しています。
週に1日や月に1日でいいのでトルティーヤを主食にしたご飯をご自宅でも試して頂けると嬉しいです。

お店では毎朝製粉したてトウモロコシから作るトルティーヤの量り売りや、
冷凍のトルティーヤ、瓶詰めのサルサ、レトルトの具材まで色々と販売しています。
毎日日替わりで2色のトルティーヤを提供しています。
今は6色のトウモロコシを取り扱っています。

トウモロコシの品種による様々な色合いのトルティーヤ


色鮮やかなメキシコ在来種のトウモロコシ


量り売りのトルティーヤは5円/1gで販売していて、注文枚数に応じて焼き上げて計って金額を算出します。
おおよそ1枚20g前後になるので、価格としては1枚100円前後になると思います。
基本的に量り売りのトルティーヤは家でフライパンで温め直して、その日中に食べるのがオススメです。
休みの日に合わせて食べたいという方には冷凍のトルティーヤパック(5枚or10枚)を販売していますのでそちらもオススメです。


お店ではトルティーヤの美味しさを伝える為の手段として、タコスやその他トルティーヤを使った料理を提供しています。
タコスを食べたあとはトルティーヤを買って帰り、家の食卓で夜ご飯のおかずをトルティーヤで包んじゃって下さい。
和洋問わずなんでも合います。

日々ご来店頂けるお客様は増えていき、わざわざ全国各地から来て頂ける方や、海外のお客様も「日本に来たら絶対に行こうと思ってたの」と言ってくださったり、トルティーヤの可能性を私たち自身とても感じています。

現在はタコス屋やレストランにもトルティーヤの卸売りを開始し、徐々にNCTCのトルティーヤを求めて下さるお客さんが増えています。
そのうち全国のタコス屋やメキシカンレストランどこで食べてもNCTCのトルティーヤが使われている事でしょう。

・一緒に働く仲間を募集!

そんな私たちは次のステップに進む為に、新しいスタッフを募集しています。
一緒にトルティーヤを主食にするまでの物語に興味のある人、
トルティーヤが大好きな人、3度の飯よりトルティーヤな人、
トウモロコシが好きな人など、どんな人でもウェルカムです。
Tortilla Clubでアルバイトをしたい方がいらっしゃいましたら、
お気軽にDMでご連絡ください。

また、実は私たちは木工やデザインを得意とした会社でもあり、主には家具や照明などを作っています。
Tortilla Club TORTILLERIAの店内の家具なども自分たちで全て作っています。

それらについてはここでは特に細かくは触れませんが、
「木工やデザインに興味があって仕事にしたいぞ!」という方がいらっしゃいましたら個人的にDMを頂ければと思います。もちろんTortilla Clubの方にDMを頂いても結構です。

とてもとても長い投稿になってしまいましたね。
次回は「NCTCのトルティーヤへのこだわり編」でお会いしましょう!
ではでは。