見出し画像

フランチャイズビジネス

 最近ニュースを賑わせているセブンイレブンのフランチャイズに関するニュースを見て考えるところがありますので書いてみます。

 まず、当店は今でこそ完全な個人経営店として営業しておりますけれど、元々は某コーヒー専門店の店長として雇われ、その後フランチャイズ契約を結んで15年ほどフランチャイズ経営の期間があります。
 フランチャイズ契約とは、フランチャイザーがビジネスのノウハウを提供し、フランチャイジーが対価を支払いビジネスを行う。メリットとしてはナショナルブランドだったり、すでに知名度のあるブランドを名乗れることや、仕入れのスケールメリットを活用できること。また、販売管理のハード面やソフト面でのフォローがある事など、個人では実現が難しいビジネスへの参入を対価を支払うこととロイヤルティを支払うことにより、ワンストップで継続して行う事ができる点です。

 当店のフランチャイズ契約は、もともと責任者として勤務していた店舗を引き継ぐ形でしたので、それまでに自分が作った実績を活用できる点がメリットとして一番大きく、店舗は賃貸物件でしたが、家主と交渉し「また貸し」の形で、実質の借主は私個人という形態にしてもらい、店舗内装や什器、焙煎機等の設備についてはロイヤルティを支払うことによるレンタル扱いになりました。

 フランチャイザーとしての本部の経営状況は今一つではありましたが、当時は美味しい良質な生豆を使用するコーヒー専門店だったので、私が責任者を務めている店舗は単体では収益をあげており、フランチャイズ契約に移行して数年は安定した経営を行う事が出来ました。

 ですが、本部がスーパーに卸売りを始めたあたりから、比較的低廉な生豆を使うようになり、「おいしいコーヒーを売る店」としての根幹が揺らぎ始めました。こうなるとお客様にも味の変化がわかるようになり、物販営業に影響が出始めます。
 ならばよい豆を仕入れれば良いのではないか。と思うでしょうけれど、フランチャイズ契約があり、レンタル店舗で営業している以上、フランチャイズ本部(以下FC本部)から”割高な”生豆や焙煎豆を仕入れる契約で、他から仕入れる事は契約違反になり、1回でも契約解除となることがあります。そして、全て悪い豆ではないが、コーヒー豆を販売する店として満足のいく品ぞろえが出来ない程度には良い豆が入荷しない上、FC本部経営状況のさらなる悪化のため、生豆の在庫すらなく、発注しても入荷しないような日々が続き、やむなく店内で飲んでいただく喫茶・カフェ営業へ方向転換します。
 店内の雰囲気もまあまあ良かったこともあり、赤字にはならずに経営できてはおりましたが、毎月月末あたりになると発注しても生豆が入荷しなかったり、明らかに品質の落ちている焙煎豆が届いたり、すでにフランチャイズ契約によるメリットなどどこにもなくなりました。

 ここで「契約」の話です。

 自己所有物件での営業であれば「良質な生豆が入荷しない」「発注しても納品されない」件を理由にフランチャイズ契約を解除し、完全な独立経営にできるものですが、当店の契約したフランチャイズの契約では”店舗の賃貸契約は又貸し”、”店舗の備品什器はレンタル”ですので、契約を解除すると店舗も失うこととなります。

 ならばFC本部から店舗を買えばいいじゃないか。という話になりますが、希望価格と売り手側が提示する価格に乖離がある場合には成立しませんし、そもそも売り手が売らなければ成立しません。

 これは契約書にそう書いてありますし、契約時に確認して署名捺印してありますから、「話が違うからやめます。契約金は返してください。店は本部のものなので返します。さようなら。それでですね、改めて店を売っていただきたいのですけれど。」は要求できますので、そのまま応じてくれればOKです。これだけ商品の入荷が滞っているのであれば、契約解除と契約金の返還は、裁判でもまあ負けないでしょう。店を売ってくれるかどうかは別問題ですが、金額に折り合いがつけばヨシとしましょう。

 ですが、契約そのままで「豆が満足に入荷しないから店閉めちゃうぞ」「自分の家族が倒れたから店閉めちゃうぞ」「いいもの入ってこないから別なとこから仕入れちゃうぞ」とやってしまったら契約違反です。こちらに非が出てきます。この場合はこちらが違約金を払う形までありますので、悪手です。

 ここで大きな出来事があります。

 当店の場合には、又貸しの形での賃貸家賃をFC本部に支払い、本来の借主であるFC本部が家主に支払う流れでしたが、本部から家主への支払いが相当期間滞っていたことが家主から督促があり判明しました。その後改善するとのことが改善せず、家主より再度の督促があり、このまま契約するわけにはいかないが、当店(私)と直接の契約であれば、従来通りの賃貸契約を続行してもよいとの条件を提示されました。また、当店としても預けていた金銭の横領に当たる件について関係機関に相談し、届けを出せば受理するところまで進みましたが、その前に店舗の売却とフランチャイズ契約の解除をFC本部に打診し交渉、店舗の売却価格等について折衝したうえで契約書を取り交わし、店舗の売買とFC契約の解除、新たな賃貸契約を締結し、晴れて完全な個人事業としてスタートを切ることが出来ました。

 ここまで、最近の豆ひどいのも多いな。と思ってから10年くらいかかりました。今は品質の良い生豆を自分の好きなように入荷し取り扱って豆屋を営業出来ているので楽しくやっています。

 フランチャイズ契約というものは参入しやすく、多少の資金があれば誰でも始められます。そして、売り上げが上がっているうちは双方に都合の良い契約なのですが、15年契約などの長期計画の場合には、契約時と事情が相当変わってくることも考えられます。その場合、FC本部は店舗への投資分を被り、オーナー個人は契約金を失って契約解除し、新たな人生をスタートするのが通例のようです。

 今後何かを始めようと思っている方は、やめ時に不利の無い契約かどうか、10年後、20年後に健康でいられるか、また、高齢化する家族の対応など、人生プランと契約をしっかり見合わせてみましょう。

 駄文に最後までおつきあいありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?