今、そこにある、核

先週、この本を読んでいました。Twitterでフォローしている方(複数)が絶賛されていたので。

https://www.amazon.co.jp/dp/4101017816?tag=note0e2a-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1

いい作品だったと思います。扱うモノが「核」なので、どうしても重い感じにならざるを得ないのですが、今の日本の現状を直視した上で(舞台は東京ですが)多くの国籍の人が登場する「国際謀略サスペンス」として読みました。

私はこのような「国際謀略サスペンス」のジャンルは好きで、時々読むのですが、海外の作家だと、かなり古いですが、この1冊が思い浮かびます。

https://www.amazon.co.jp/第四の核-上-角川文庫-フレデリック・フォーサイス/dp/404253709X

「第四の核」、1984年作品。舞台は1987年のイギリス。イギリスに小型の原爆を持ち込むソ連のエージェントと、その爆発を阻止すべく奮闘するイギリスMI5の「しがない」課長とが、あるタイムリミットに向けて収束していく息詰まる攻防、原爆を成り立たせるのに欠かせない物質「ポロニウム」が物語の一つの鍵となる、というと、「ワン・モア・ヌーク」と少しは共通点があるかもしれません。

ただ、「ワン・モア・ヌーク」はあの原発事故と、その後の経過を間近で体験した日本人でしか書けない物語だ、という点では「第四の核」と大きな違いがあるでしょう。

私はあの原発事故の当時すでに首都圏に住んでいましたし、その後の福島のみならず関東の野菜に対する風評被害も目の当たりにしました、そして目の前には、少しのきっかけで不安が増幅してしまう妻、全部のことを知っていないと不安になってしまう妻がいました(全部のことを知りたがる、というのはアスペルガーの傾向でもあるのですが)。

なので、送り出された多くのニュースに対して、夫婦間でかなり深刻な意見対立がありました。とにかく多くの情報を集めて不安をなんとか鎮めようとする妻と、今目の前にある情報からして「それはあり得ないだろう」と判断する私(楽観的観測もあったかもしれません)。離婚寸前とまでは行かなくても、正直、危ない時期があったのです。

来月いきなり核テロが東京で起こったらどうする?といった話は、私の手には負えませんが、来月いきなり放射能事故が東京のど真ん中で起こったらどうする?と言う話はさほど荒唐無稽とも思えず、その事故の影響を考えるとき、誰もが福島に思いを馳せることになるでしょう。

あれだけ多くのデマと事実が吹き出した「3.11」から9年。放射能自体で何万人も死ぬ、というのはデマだったことが証明されましたが、「災害関連死」はかなりの数に上りました。それを二度と起こさないために私たちにできることはなにか?

それは、過去の貴重な経験と冷静な判断、そして文字通りの情報の海から今できる最良の選択と、さらに未来への希望を持てる選択を取れる力を持つことなのかもしれません。

それは今すでに、ある意味別の形で試されている、という気がしています。

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