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#カムカム絵 全部

NHKの次の朝ドラが和菓子の話ときいて、甘いものに興味のないぼくは、前作の「おかえりモネ」ほど楽しめないかもしれないなと思っていました。実際「カムカムエヴリバディ」がはじまっても、戦争や家柄の違いなどで身も心も傷つくようなシーンが多く、仕事をしながら横目で流し見る程度でした。ところが、そんな重苦しい「安子編」が終わり「るい編」に入った途端、成長したるいが笑顔で踊りながら登場したじゃないですか。これは果たして同じドラマなのかと戸惑いつつ、るいが竹村夫妻のもとに身を寄せたとき心底ほっとして、この場面を絵に描きたいと思ったのです。

こうして描いた「場面似顔絵」が思いがけず好評だったので、るい編のクライマックスともいえる場面を描いてみることにしました。

人数が多いので途中で飽きないよう、全体の大まかな構図を決めたら、人物ごとにラフ→下絵→仕上げをしていくという変則的な方法で描いていきました。
別々の場面を同時進行で重ねるというドラマの巧みな演出にならい、絵でもそこにいないはずの人たちを描き込むという手法をとってみました。

こちらの絵も反響が大きかったので、調子に乗って「間違い探し」もつくってみました。「間違い」というより「過ち」と表現すべきかもしれませんが……。

そしてドラマは「ひなた編」となり、「安子編」とのつながりを意識した演出が随所に見られるようになっていきます。同じ俳優さんが親子両方を演じるのも楽しいですね。

劇中劇というものがありますが、劇中劇と劇中劇を演じる劇が複雑に絡み合いながら進むお話に、絵でもそんな世界を描けたらと思うようになっていきます。

深津さん演じるるいや、市川さん演じるベリーは比較的描きやすかったのだけど、川栄さん演じるひなたの似顔絵はとても難しかったです。若い女優さんはだいたい描きにくいのだけど、川栄さんはとくに表情が豊かで場面ごとにコロコロ変わり、吊り目なのかタレ目なのかすら判断がつきません。時代が移り変わるにしたがって髪型やファッションがどんどん変わるのも、そうだったそうだったと懐かしく見ていました。

こうしてお気に入りの場面を気ままに描いてきたのですが、ドラマが佳境に入り、アニーさんが安子であるとわかった瞬間、ああ、もう描けないなと思いました。「伏線回収」というテクニカルな話ではなく、もっと深い場所でこの物語は紡がれていたのだと思ったとき、この壮大さは絵では表現できないなと思ったのです。

でも最終回、過去を悔やみ何十年も素性を隠して生きてきた安子が、何事もなかったかのように子や孫や知人たちと楽しげに過ごしている姿を見て、過去なんてそんなもんだよなって思ったら気が楽になって、最後に1枚描く気になったのでした。

おもしろかったー。
全ての出演者、スタッフにありがとう!

お気持ちだけで十分だと思っていますが、サポートされたくないわけではありません。むしろされたいです。