生駒_1-補足

未来の福祉PJ 生駒 朋子 インタビュー

今日、誰かの居場所をつくる。

本当は行きたくない学校、家庭内のもつれ、会社での失敗。はたから見れば何の問題がない人に見えても、どこかで生き辛さを感じ、小さなSOSを出している方たちがいます。

そんな社会からこぼれおちそうな声を拾い上げ、「その人が自由でいられる居場所をつくりたい」と話すのは、自身が12歳の時に脳梗塞を経験し、障がいと健常の見えないボーダーに直面し続けてきた生駒朋子さん。2017年9月に石川県加賀市に移住し、現在Next Commons Lab 加賀(以下:NCL加賀)のメンバーとして活動しています。

ーー 生駒さんのプロジェクトを教えてください。

プロジェクト名は「未来の福祉」です。現状、福祉は自分とは関係のないものだと思っている方も多いのではないでしょうか。高齢者や障がい者、もしくは不登校の子どもや生活困窮者のケアなど、社会に必要なサービスである一方で、そこに関わっている人は一部なのかもしれません。

このプロジェクトでは、関わる人を限定せずに福祉の意味をもっと広げて捉えています。誰もが多かれ少なかれ悩みや不安を抱えている現代において、それぞれの“生き辛さの種”を共有しあい、心が解ける居場所づくりを目指しています。

第一歩として、「かガールサロン」というお喋り会を開いています。家事に疲れた主婦でも、学校に行きたくない子どもでも、障がいを抱える人でも、女性であれば誰もが自由に参加できる週一回のサロンです。オープンして3ヶ月ですが、すでに常連の方もいらっしゃいます。今はまだ女性向けのサロンですが、徐々に対象者を広げて、理想とする未来の福祉を描いていきたいですね。

ーー 加賀に来る前のこと、詳しく教えてください。

岐阜県出身で、県外に出たのは大学生の時です。名古屋の大学に進学し、国際コミュニケーションを学びましたが、今の活動にはそんなに活かせてないかもしれません(笑)。わりと当てどころもない学生時代で、休学してハンドメイドにはまった時期もありました。

今の原動力は、小学6年生の時に脳梗塞になったことだと思います。生活に支障は全くないですし、自分自身は気にしていませんが、その当時、まわりの態度が急に変わったことをまざまざと覚えています。友達も先生も気を遣ってくれて、それが余計に辛かったですね。「かわいそうな人扱いしないで」と思いましたし、それから自分は絶対に笑っていこうと決めました。

大学卒業後も、障がい者雇用枠でテレビ局やネット広告会社を経験しました。仕事自体は面白かったのですが、連日深夜まで続く働き方に限界を感じて、岐阜に戻ることを決めました。ただ地元にこだわっていた訳ではないので、次のステップは常に考えていました。

ーー その頃NCL加賀の取り組みを知ったのでしょうか?

そうです。実家に戻ってクラウドソーシング等の仕事をやっていましたが、もっと人に触れる仕事がしたいなと感じるようになりました。そんな時にNCL加賀のことを知りました。仕組みに惹かれ、ひとりだけなら孤立してしまいそうなところ、仲間と情報や意見を交換しながら起業できるのは魅力的でした。

何よりプロジェクトのテーマに惹かれました。これまでどちらかと言えば「介護される側」だったので、自らが福祉業界に関わるという新鮮な選択にとてもわくわくしました。障がいを持つ方の中には、自分のやりたいことを諦めていたり、周囲の目を気にしてチャレンジできない方もいらっしゃいます。自分がNCL加賀に飛び込むことで、ある意味ひとつのサンプルになれるのではないかと思いました。

ー 今はどんな暮らしを送っていますか?

勉強の日々ですね。

もともと、教育や福祉の学校を出ているわけではなく、現場経験があるわけでもないので、当事者会や支援者会に参加して現場について学んでいます。また、私が理想とする支援を実践してる施設への視察なども積極的に行なっています。他にも、小学生が放課後に集まる学童のバイトも月10日ほどやっています。プロジェクトに繋がりそうなものには、市内外問わず積極的に顔を出しています。

加賀市に越してすぐの頃は、やるべき事が定まっていないのに時間だけはある自由さが不安でしたが、学童のバイトを通じて知り合いが増えたり、かガールサロンのコミュニティも生まれつつあって、今は凄く充実しています。

ーー 最初に加賀にきたときの印象を教えてください。

移住した頃は9月。ちょうど当地は祭りシーズンであったこともあり、楽しそうな地域だという印象を持ちました。

加賀市には3つの温泉があるのですが、私もそのうちの山中温泉という所に住んでいるので毎日温泉に入っています! 温泉に一緒に入ることでより打ち解けたりはしています。大雪の時なんかはご近所の繋がりが本当に有り難かったですね。色々助けてもらいました。

ーー これからチャレンジしたいことを教えてください!

NCL加賀は3年間のプロジェクトですが、私は任期が終わってもずっと加賀市にいたいなと思っています。そのためには、このプロジェクトを自立した取り組みにしないといけません。

移住してもうすぐ一年が経ちました。知人もたくさん出来ましたが、まだまだ増やしていきたいです。もし活動に興味がある方はぜひご連絡いただければ嬉しいですし、「かガールサロン」にも気軽に来ていただきたいです!
あとは、自分が障がい者の人たちの手本になれるとは思いませんが、こうやって知らない土地に飛び込んで、奮闘する仲間がいるという事実が、いつか誰かの心に届けばいいなと思って頑張っています。

(インタビュー:2018年8月21日 場所:山代コドン


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