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HUB台湾PJ 王 立中 インタビュー

日本と同様に高齢化が進んでいる台湾。

人口減少や少子化、同じ時局を迎えている二つの国を重ね合わせ、 “ローカルtoローカル(地方から地方へ)”を生み出すプロジェクトに取り組む方がいます。取り組むのは王 立中(おう・りちゅう)さん。台湾で生まれ育ち、加賀では2018年1月からNext Commons Lab 加賀(以下:NCL加賀)のメンバーとして活動しています。

台湾から日本へ、そして加賀へ。

ーー 王さんのプロジェクトを教えてください。

プロジェクトは「HUB台湾」です。このタイトルは「台湾と加賀を繋ぐ中継地のような存在になる」というメッセージが込められています。

例えば、今の情報やサービスは都心部を経由して海外に展開することも多いと思いますが、もしもこれらを地域主体で出来るなら、“発信する側”と“受け取る側”はぐっと近づいて、お互いがお互いを理解しあいながら、より密な関係を構築していけるかもしれません。時にはビジネスを超えた友情関係も生まれるかもしれませんし、お互いの地域のファンになる人も出てくると思います。

僕にとってHUB台湾というプロジェクトは、そういったシーンを増やしていくプロジェクトです。ふたつのローカルの接点を生み出していくことで、これまで遠くに感じていた距離を縮める機会を増やしていきたいと思っています。

具体的には、僕がプライベートで運営してきた台湾向けのメディアを利用して加賀の取り組みを発信したり、逆に台湾に足を運んで日本や加賀のことを伝えるイベントをどんどん開催していきます。これらの活動を通じて、今度は台湾の方が加賀に遊びにくるようになるなど、じわじわと加賀と台湾の距離を縮めていきたいですね。

最終的には、NCL加賀やその他の企業が台湾で展開をする際に頼られる存在になれたらいいなと思っています。

ーー 加賀に来る前のこと、詳しく教えてください。

台湾で生まれて、大学までずっと台湾で暮らしていました。大学時代はプロダクトデザインを学んでいたんですが、日本のデザインを知るうちにどんどん興味が湧いて、27歳の時に東京に行くことを決めました。

東京では、日本語学校に通っていたんですが、社会経験も大切だと気づいたこともあり、最終的にはさまざまな交流会に参加して実践的な日本語を学びました。その後、念願だったグラフィックデザインの専門学校に入学しました。

卒業後も日本の暮らしが気に入って東京に住み続けました。それと、今の奥さんと出会って結婚もしました(笑)。奥さんは日本人なので、僕も日本で就職したいと思い、デザインや不動産の会社で広告関係の仕事をしばらくしていましたね。

その後、31歳の時です。友達に誘われて民泊事業で起業しました。そこでは、主にデザインや民泊施設の運営を担当していました。

ーー 石川県加賀市やNCL加賀を知ったきっかけは?

NCL加賀メンバーと共通の友人がいて、その人に「HUB台湾」の存在を教えてもらったのが始まりです。もともと、ものづくりが好きで学生時代から趣味で色々作っていたので、加賀の九谷焼や山中漆器などの伝統工芸には凄く興味がありました。この伝統工芸の文化は台湾からみてもとても魅力的だと思います。

そういった加賀の地域資源や面白いところをメディアで発信しながら、興味を持った人には加賀を訪れてもらって良い出会いを作っていく・・・そういう活動自体にとても興味があったので、このプロジェクトを知った時に思い切って飛び込みました。

ーー 加賀に来ることに不安はなかったですか?

不安はもちろんありましたが、そもそも日本の地方移住には凄く関心がありました。きっかけは、不動産会社で働いていた時に出会ったお客さんの言葉です。台湾の方でしたが、北海道の家を紹介したら「老後は絶対ここに住む!」と、はっきりと言ったんです。

そのお客さんの気持ちが僕にはすごく分かって、それくらい日本の地方が持っている資源は豊かだと思います。日本の方は当たり前に思っているかもしれませんが、まず空気と水が本当に本当に綺麗です。

これは台湾では全く当たり前のことではありませんし、僕自身も加賀にはじめて訪れた時、空気が全然違うことに驚きました。

知らない土地に外国人として暮らす不安はまだまだありますが、まずは自分自身がこの暮らしを楽しむことで、まわりの友達にも加賀の良さを伝えていきたいですね。

ーー 今はどんな暮らしを送ってますか?

プライベートでは、工芸体験などのものづくりを楽しんでます。ぜひ地域の皆さんにオススメを教えてもらいたいですし、これからも色んな事にチャレンジしていきたいですね。

仕事面では、台湾でイベントを開催したりしています。過去に開催したものは日本や加賀に関心のある人たちを集めたイベントでしたが、思った以上に沢山の人が集まってくれて大盛況でした。台湾は日本と同様に高齢化が進んでいる国ですので、日本の地方で今何が起きているのか関心を持っている人が多いんです。同じ地域課題を抱えている国同士、共感しあえる部分が沢山あると感じていますし、だからこそもっと「ローカルtoローカル」の気持ちで接点を増やしていきたいです。

ーー これからチャレンジしたいことを教えてください!

ようやく車を購入したので、今は色々なところに顔を出しています。先日も、市の企画する学生ワークショップ “PLUS KAGA”に台湾の学生が参加することになったので、出来る限りサポートで同行しました。それまで “単なる場所”としか認識していなかった商店街も漁港も町並みも、そこで暮らしている人々を知ることで、地域が立体的に見えるようになりました。これからもそんな良い出会いを一つひとつ積み重ねていきたいと思います。

自分がやっている「HUB台湾」というプロジェクトは、名前だけ聞くと壮大なテーマのように思われるかもしれませんが、いまはまだ地道な活動の方が多いです。加賀と台湾を繋げたいといっても、まだ移住して8ヶ月なので知らないことも沢山あります。ぜひいろんな人に加賀の良さを教えてもらいたいです!

(インタビュー:2018年8月8日 場所:山代コドン


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