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社畜舞台創造科がブラック企業と闘って劇場版スタァライトを見に行った話

疲れた………………….

見終わったあと最初に浮かんだ言葉は「面白かったー!!!」「最高の映画!!」「世界最高傑作だ!!!」….などではなく、「疲れた…」でした….すいません!!でも本当にマジで頭がフラフラで倒れそうなぐらい疲れてしまい、口から魂が出ている状態だったのです。

2021年6月4日、当時の僕は絶賛10連勤中だったというのもあるのですが、特に6月4日周辺は3日ぐらい寝ないで働いていました。そして実は6月4日も普通に仕事でした…。でもどうしても何としても公開日初日に見たくて浴びたくて仕方なくて…(公開日初日に見ないとネタバレが怖くてTwitterを開けなくなってしまうのもあり※廃人)しかもこの日は新宿バルト9で公開初日舞台挨拶というものが行われていたんですよね…。古川監督と小山百代さんと三森すずこさんに会える!?!!??!直接感謝の気持ちを伝えられる(念力で)!!!なんとしても拍手を送りたい!!!!!!という気持ちが高まったのと10連勤中で頭がおかしくなっていた僕は、6月4日は仕事で映画館に行けないことは分かっていたのにチケット戦争に参加して座席を確保してしまいました(本当にすいません)。だから何としても6月4日は何があっても新宿バルト9に行って劇場版スタァライトを見なければならないことになっていたわけなんです。

「有給をとっておけば良かったじゃないか」と言われそうですが、寝ないで働かないといけないあたりから分かる通り僕はブラック企業に就職してしまっていたのです(仕事のことは好きなんです)。脳内で何度も会社のビルを爆破して新宿バルト9に直行する未来を妄想していました。むしろ新宿バルト9が会社に来てくれ!!!いや、上から会社のビルを潰してくれ!!!と本気で思っていました。たぶん相当メンタルの状態もやばくなっていて、妄想と現実が行き来するような、起きているのか寝ているのか、生きているのか死んでいるのか分からないような感じで日々を過ごしていました。会社でも「ス…ァラ…ト…」「劇場版…ス…ァ……」という感じでぶつぶつ呟きながら働いていたかもしれません。

そんな日々の中で劇場版スタァライトは公開される前から、というか公開されるという事実だけで生きる理由の一つになっていて、忙しい仕事も辛いことも全て劇場版スタァライトを見に行けば報われるという気持ちで頑張っていました。だから何としても仕事があろうがブラック企業だろうが僕は新宿バルト9の初日舞台挨拶つき上映に参加しなければならない、参加しなければ死んでしまうということになっていました。

なのでまず寝ずに働くことにしました。時間がない時はやはり睡眠を削るしかありません。生きるか死ぬかのときに寝ている暇などありません。眠くて眠くて仕方ないときは「劇場版スタァライト!」「劇場版スタァライト!」という素振りで目を醒ましてひたすら仕込み続けていました。

公開前日、6月3日も朝から終電まで仕事でしたがもう気持ちは上の空で、遥か遠くの空を見ていました(ビルの中なので空なんて見えないのですが)。まだ劇場版スタァライトがどんなストーリーになるのかすら全くわからないし想像もできませんでしたが、多分このとき僕は劇場版スタァライトのエンディングの晴れやかな青空が見えていたのだと思います(妄想です)。どんなに難しくても、舞台少女たちは必ず次の空に向かっていく終わり方になるはずだと確信していました。なのでまず6月4日はテレワークにしてもらわなければなりませんでした。妄想の中で見た空を守るためには会社に幽閉されているわけにはいきませんでした。なんとしても会社の枯れ果てた砂漠の運命の舞台から抜け出して、せめて自宅に身を置かなければなりませんでした。1%でも舞台挨拶に近づけるように先輩に頼み込んでテレワークを許してもらい、無事終電で帰宅したあとすぐ自宅で仕事を始めることができました。3徹目に突入していたので謎の涙が流れてきたりしながら謎の映像に音楽をつけ続けていました(音響効果という仕事です)。そこには何が映されているのか、どんなストーリーなのか、何を目指して作られているのか、僕は何をしているのか、全て曖昧でバラバラになっていくようでしたが、仕事は仕事なのでちゃんとやりたい気持ちもあり、涙を流しながら、でも少しずつ劇場版スタァライトに確実に近づいているという微かな希望を感じながら作業を続けました。あとで家族に聞いてみたら、僕の部屋からは選曲していたロックな音楽と一緒に奇声が漏れ出ていたらしいです。

甲斐あってなんとか午前中に作業が終わりました。とりあえずデータを先輩に送ってみます。すると「めちゃくちゃ早く仕込めてるじゃん!」という返事。劇場版スタァライトへの道が確かに見えたその時でした。「めちゃくちゃ助かるよ!じゃあ続きもよろしくね」というメールとともに、続きのVTRが送られてきたのです。舞台挨拶の開始時刻である16:50まで残り4時間みたいなタイミングでした。絶望感が漂いましたが、同時にこれさえ片付ければ家を飛び出して新宿バルト9に行ける!古川監督と小山百代さんと三森すずこさんに会える!!!劇場版スタァライトを浴びることができる!!!!という気持ちが勝り、眠気もどこかへ飛んでいき疲れは弾き飛んで息が上がり気味になりながら心臓がドクドクしながらエナジードリンクをがぶがぶ飲んで楽しく仕事を進めました。

無理やり仕事を終わらせた時、時計は15時30分ぐらいでした。まだ間に合う!!!絶対間に合う!生きる!!!!!!みたいな気持ちで先輩に「仕込み終わりました。偏頭痛が発症していまったので少し休憩します」と連絡し了承をもらった時には、家の壁すべてが吹き飛んで、青空が見えたような気がしました。頭の中ではもうすでにスーパー スタァ スペクタクルが流れていたのかもしれません。
もし電車が遅れたりしたら即、死・終わりという状況でしたが、電車は定時に来て、定時に到着しました。日本の鉄道の定時運行率はよく知られているように世界一です。それは100年前の大正の時代からすでに確立されていたそうです。当時はまだ電車は少なくて蒸気機関車がほとんどの時代でした。電車よりもはるかに運転が複雑で難しい蒸気機関車の定時運行は非常に難しく、当初は遅れてばかりだったそうですが結城紘毅という伝説の「運転の神様」が日本全国の鉄道を正確にしてくれました。まさに100年の鉄道史…定時運行を守った数知れない人々の努力によって、僕は無事16時40分に新宿バルト9に到着できたのです。

▲オタクの限界ツイート

「もしかしたら途中で寝落ちしてしまうかも…」と心配していましたが全然そんなことはなく、当然ながら人生最高の映画体験でした。目を焼かれ、塔から落とされ、舞台少女は列車に乗って次の舞台に行ってしまいました。そんな感じで、最悪な体調のなかで人生最高の時間が過ぎていきました。無事に約束の場所にたどり着けた安心感から、感想が「疲れた…」になってしまったのです。ボロボロになった身体を引き摺りながら帰宅すると、これまで見えていた世界が別のものに思えました。ふとスマホに届いたメールには「明日は始発出勤からの終電退勤でよろしく!」とありました。でも全然辛くありませんでした。劇場版スタァライトが映画館のスクリーンでキラめいている限りは何連勤でもできる気がしました。私たちはもう舞台の上という言葉にどれほど救われたかわかりません…。社畜のしょうもない話をここまで読んでいただきありがとうございました!!

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