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卑怯な大人27

闇雲にバイクを走らせ、諏訪山から

再度山方面を通り何となく六甲山

を目指しました。

その頃はノーヘルからヘルメット着用に

変わる頃でしたが当然ノーヘルでした。

再度山からのコースはプロのレーサーが

練習したり暴走族がよく走っている

くねくねした対向車の見えないカーブ

の多い道でした。

調子に乗ってドンドン加速しながら走っていると

道路が少し茶色い事に気づきました。今から考えると

多分土砂を運ぶダンプが走りながらこぼしていったものでしょう。

勝手にこのバイクはフロントのタイヤとフェンダーが離れている

モトクロス用やし土や砂ぐらい落ちてても大丈夫やと思い込んでました。

KAWASAKI250TRというバイクで凄くかっこよかったのを覚えています。

何とも言えない爽快感を味わい更にアクセルを回し走っていき

見通しのきかないカーブを強引に進むといきなり真正面から乗用車

が現れました。

キキキッー

「危ない!!!!」

そのまま相手のフロントガラスに突っ込むかと思いました。

フロントガラス越しに見えた助手席の女性はびっくりして何か叫びながら

両手を上にあげています。

(うわーー ぶつかるわーーーー)

相手の車は左にかわしてきたのでとっさに

右にかわした瞬間タイヤが相手のバンパーと接触しました。

そうしたらすーっと滑ってハンドルを取られバイクは横になり

右足を挟まれました。

(あー足ちぎれる―――)

多分何秒のことでしょうが動きがスローモーション

みたいなコマ送りになりバイクが倒れたまま半回転し俺は

そのまま巻き込まれて道路の側溝に転がり落ちました。

他はかすり傷でしたが右足は大怪我でたてませんでした。

「大丈夫かぁ~」

車から男の人が下りてきました。

俺は無免許であったことが気まずくできるだけ

すぐにその場から離れたかったけど足から大量の血が出ています。

とっさに答えました。

「はい 大丈夫です。」

いまなら絶対、大丈夫ちゃうやろとつっこまれそうですが

その人も人をはねたかもと思ったのか少し顔が青ざめていました。

女の人が足をハンカチで縛ってくれました。

(山原の兄ちゃんに借りたバイク大丈夫かな?)

(オカンにぜったい発狂されるわ)

(足が感覚ないわ)

そんなことが頭を駆け巡りました。

「病院連れて行くから車に乗ってよ」

何度も病院へ連れて行くからと言われたのを

断り、頭がフラフラするのを我慢し歯を食いしばりました。

「いえ自分で行きますから」

「ほんまか?」「ほんまに大丈夫? じゃぁ俺ら行くで」

1人になり段々薄暗くなってきた道を

びっこをひきながらなんとかバイクを押して帰ろうとしましたが

右足の自由がきかないので押しながら帰るのは到底無理です。

これはあかんと思い怪我している右足に激痛が走りましたが

根性を振り絞ってバイクにまたがりバーテンの山原兄ちゃんの

アパートまでたどり着きました。

すると銭湯帰りの兄ちゃんが前から歩いてきました。

「ごめん 六甲でこけてもてん泣」

「 (;゚Д゚)エエー」「お前足$%%・・・」

意識をなくしその場で倒れてしまいました。

後にも先にもアルコール以外で意識がなくなったのは

その時だけですw

気が付いたらトーアロードにあった川北病院のベットの上でした。

本当は春日外科病院が近いのですがヤブやと言う噂と

オカンがよくかかってたので川北でした。

もう今は多分両方の病院ともないと思いますねw

「運よかったなぁ~」「上の肉だけやられて他の骨もどこも大丈夫や」

「念のため破傷風の注射も打っといたし」「しばらくしたら治る」

「明日様子見て明後日ぐらい退院やな」

先生がそう言いました。

ふと先生のよこを見るとオカンでした。

気まずそうに山原の兄ちゃんもいました。

「自転車でこけてん」

「あんたウソいいな山原君から聞いたで」

「山原兄ちゃん怒らんといてな」

「山原君があんたを運んだんやで」「ほんまええかげんにしい」

「山原兄ちゃんすんませんでした。」

「あーべっちょなかってよかったな」

山原兄ちゃんは250TRに乗っていつも神戸港に釣りに行ってましたが

山原兄ちゃんも実は無免許でした。

「単車、どこも大丈夫やったでさすがモトクロス用やな」

「ほんまや 頑丈でよかった」

少し雑談をした後オカン達は帰りました。

次の日起きて少年マガジンを読んでると誰に聞いたのか

麻紀がやって来ました。

「どうしたん」「何やってんの」「心配するやんかー」

泣き出しました。

まだでも心のもやもやは晴れていません

麻紀のせいではないけど甘えていたのかまたふてました。

「あぁ~」

生返事だけです。

「なんで私の話真剣に聞いてくれへんの」

 ゴン!!

いきなり足をどつかれました。

「おぉーーー 痛いやん泣」

「悪い 真剣に聞くから叩くのやめて」

「フフフ」

「お前性格悪いなぁ」

「今頃気が付いたん笑」

少し荒んだ気持ちが麻紀のお蔭でほころんで行く気がしました。

「ところで小堀さんに聞いたけどお兄ちゃんどっか悪いんかな?」

中毒の様に正露丸を毎日大量に飲むことはさすがに病気かもしれません

でもその時はあれだけ元気やし大したことではないと思っていました。

続く。。。

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