卑怯な大人2


結局マニュアルを破りドラムばかり入ったチキンセットをチンピラのいいなりで売りました。


チンピラが来るのを予測していたのか普段はギリギリで揚げている

チキンを余分に揚げていました。

そのせいもありその日はチキンが余ってしまいました。

「内緒でもって帰れや」

「えーほんますか」

「ありがとうございます。」


その日はチキンを西村さんとチンピラのお蔭で

家に大量に持って帰りました。

うちは家が商売していたのでおかんもおやじも

ほとんど家にいません。


弟や妹たちと家族が揃って夕飯を食べたりが

少なく各自がこずかいの中から出前などで

食べていました。


後でわかったことですが俺の時代は良かったけど

弟や妹の時代は景気後退に入り(それでも今よりは随分ましかも)

お金を置いていないときもあったようです。

余談ですが今でも弟はオカンとあまり仲がよくなく

弟がおかんを恨んでることが一つあります。



ある日事です。

夜中に僕の部屋にサッシのほうから誰か

忍び込んできました。

「泥棒や――」

その2日ほど前大家さんから最近このマンションの周辺

泥棒に連続して入られてるので注意してと言われた矢先です。

多分その泥棒と思いますが上の階に入り警察に突き出されました。

ブログの泥棒とのじぎく賞を参照してください

僕は泥棒と思い込みおもいっきり蹴り上げました。

僕の学生ズボンを握りしめて倒れてるのは弟でした。

「お前なにやっとんじゃ」

「このズボン貸してーな」

と泣きそうな顔で訴えてきました。

「俺はいていくやつないからあかん」

弟はあきらめたのか暗い顔で自分の部屋に戻りました。

あいつなんで学生ズボンいるんやろ

そう思いましたがめんどくさいのでそのまま寝ました。

でも弟側から入れる部屋の入口のカギをかけてるとは言え

夜中にサッシの窓から入って来たのはよっぽどの

ことだったんだろうと思います。


ある日、三宮に出ていこうと歩いていたら前から

ピエロの様な幅の太い半パンでもない異様な丈の

学生ズボンで白い靴下が見えた中学生がこちらの方に

歩いてきます。

弟でした。

見た瞬間おそ松くんのデカパンみたいなその格好に吹き出しそうに

なりましたがこれは可哀想やと思いましたがめんどくさいので

ズボンのことにはふれず無視して行こうとしました。

「兄貴 どこいくん?」

「三宮や」

5歩ほど歩いて弟のほうを振り返りました。

「あ  俺の洋服ダンスの横に吊ってる学生ズボンおまえにやるわ」

「えーーーほんまーー 有難う」

俺の気が変わらんうちと思ったのか弟は全力疾走に近いぐらい

家の方角に走って行きました。

弟は2歳下で今の僕より少し身長が高くその頃も背が急激に伸びたので

中1の時の学生ズボンが丈の短いピエロのデカパンみたいなズボンに

なってたのです。

景気が悪くなりオカンが弟の学生ズボンを我慢させていたのです。

なので僕の学生ズボンならピエロにならなくても済みます。

弟はよっぽど恥ずかしかったのか意を決して窓から侵入してきた

のだと思います。

その件がすべての原因かどうかわかりませんがオカンと弟はあまり

口を聞きません(笑)

弟はもう多分心の中では許してるしオカンも覚えてないのかも

しれないけど口をあまり聞かないのは照れ臭いのかもしれません

話を戻します(笑)

「チキンもってかえってきたぞーー」

ケンタッキーフライドチキンはわざわざ買いに

行かないと食べれないので弟と妹には貴重な食べ物でした。

チキンを持って帰ると弟と妹はよっぽどお腹が

すいていたのか、わーとゾンビのごとく群がってきました。

「待たんかぃや ようけあるから」

「はよ 皿もってこいやー」

弟と妹を押しとどめ台所から皿を持ってこさせました。

「お前らチキンにケチャップつけて食ったら旨いのしっとーか」

「ケチャップもデルモンテや」「カゴメは合わんねん」

とケンタッキーで西村さんとお姉さんたちに教えてもらった事を

偉そうに中学生の弟と小学生の妹に言いました(笑)

店から持って帰ってきた持ち帰り用につけるデルモンテの

ケチャップをかけ弟と妹は口のまわりを油とケチャップで

ぐちゃぐちゃにしながらむさぼるようにチキンを食べていました。

その頃のケンタッキーフライドチキンは秘伝のスパイス入りの

小麦粉をきちんと丁寧に1個づつつけて大きな圧力鍋で

これもまた丁寧に揚げていましたのでスパイシーで柔らくて

ジューシーで今のチキンより絶対的に美味しいのではないかと

思います。


ある意味中毒性がある食べ物というか最近はありませんが

時々無性に食べたくなることもありますね。

子供は特に好きではないかと思います。


でまたアルバイトの日が来ました。

今日は西村さんでなく店長と僕です。


阪神タイガースが勝った日は機嫌がよく負けると

機嫌が悪いみたいなわかりやすい人でした。


店長も西村さんと同じく真面目で純粋で面白いいい人でした。

時給は安いけど働く人たちが心の綺麗ないい人ばかり

の職場でした。


僕は野球に興味はそんなにありませんでしたが神戸でもある事ですし

阪神のことはTVのスポーツニュースなどで少しは知ってましたので

店長と阪神の話題で話せる程度の知識はありました。


その日も阪神の話題です。

「新しい外人来たみたいやな」

「へぇ~ そうなんすか」「ラインバックより上すか?」

「バリバリ大リーグらしいで」

その頃はいまのようにメジャーリーグと呼ばず大リーグと

呼んでいました。

勿論大リーグで活躍している日本人選手などはいない時代です。

「じりりりーん」

事務所の黒電話が鳴りました。

「スーパーバイザーやったらタバコ買いに行った言うて」

と顔の前で手を振り店長は居留守を決め込みました。

「工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工 」

「居留守!?」

昔の電話はかけてくる人の都合でかかってきて

受ける側が取らないとか留守なら仕方ないという感覚でしたね。


スーパーバイザーとは各店舗を束ねて統括してる偉い人です。

僕たちアルバイトにはニコニコして優しいおっさんですが

事務所で店長や西村さんには鬼のように厳しく接していました。


売り上げの数字がかんばしくないことを責められてると

言ってたのでその日は電話に出たくなかったのでしょう。

で仕方なく俺が電話を取りました。

「ありがとうございます ケンタッキーフライドチキントーア―ロード店です。」

「@$%%&&%&&%&」

受話器の向こうから日本語でない言葉でまくし立ててきました。


「店長多分英語すっよ」

またしかめ面の顔の前でめんどくさそうに手を振りました。

「お前学生現役やろ」

今度は横に振るのでなく手首が上下のシッシのポーズです。


英語のゆっくりしゃべってくださいは沖縄にいたオカンのお姉さん

から教えてもらってたのでそう言いました。


「Please speak slowly.」「Pardon?」

「@$%%&&%&&%&」

どうやら出前しろと言ってるようです。

「北野まで配達しろって言ってますよ」

「う~~~ん」「暇やし持って行ったるか?」

「北野やったら歩いて行けますよ」

坂上がるのはしんどいですが北野はそんなに遠い距離では

ありません

その頃はケンタッキーの出前バイクもありませんし

ピザの出前などもありません

配達はうどん屋さんかそば屋さんか中華料理屋さんしか

ない時代でした。

続く。。。

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