卑怯な大人31

物語の登場人物モデルはいますが

フィクションです。



俺は根性を決めて事務所に行き

入口のインターホンを押した。

大袈裟に腕と頭に包帯を巻いて行った

 ピンポーン

「へぃ どちらはんでっか?」

「中元と申します。」「川島さんと約束してました。」

「どうぞ」

対応の声は怖いけど組長宛の

大事なお客さんに失礼な対応はできない。

だからと言って大事なお客さんばかり来るとは

限らない。

玄関に郵便局のふりをして揉め事の相手がカチこんでくるかもしれない

もしかして都合の悪い招かれざる客かも知れない

〇くざの事務所にはいろんな人間がやってくる

それらから事務所の若い衆は監視カメラで監視しているのだ

玄関口に立っている組長宛の来客は必ずどんな奴なのか

確認し事前に準備しているのだ。


大事な客、招かれざる客どちらにしても対応が遅れることは

命取りになる。

例の如く細い階段を上がると

トカゲ目が立っていた。


監視カメラを見ていたのだ。

「ワレ 何や」

「え 川島さんに会いに来ました。」

「なにぃー」

「親分にいらんことぬかしたら承知せんどぉー」

ここまで来て引き下がるわけにいかんし

事務所に行くとトカゲ目がいる事は織り込み済みやった。

外の様子を察知したのか中から川島さんが出てきた。

「ハチョリ 何ガタガタしとんねん」

「へぃ」

川島さんはいつもながら勘が鋭いというか動きがいつも

1歩先を行ってる

(ハチョリ?? こいつ韓国人か?)

(あー やっと思い出した。)

(こいつ俺が中一の時三宮のマクドナルドで恐喝してきた奴や)

昔神戸の三宮に初めてマグドナルドが出来た時

朝高の制服の2人組に金出せと言われて逃げた事があった。

その時の奴や 

その爬虫類ぽい目が印象深かったので思い出した。

後でわかったのだが河本哲がそいつの日本名で

河哲が本名だった。

マグドナルドで恐喝してきたあの時の朝校生、それが

河本とは神戸はほんま狭い。

川島さんがニコニコして出迎えてくれた。

「大ちゃん 久しぶりやなぁ」

「夜バイトいってへんのか」

「お どないしてん その包帯 彼女と喧嘩でもしたんか笑」

包帯をわざと大袈裟にまいて行ったのを

からかわれた。

「まぁ中は入れや」

中に入るとこないだ俺に唾かけた奴もいた。

若い衆から鬼の形相でメンチをきられまくり今にも

とびかかって来そうな感じやった。

「大ちゃん ところで 中岡 亡くなったそうやな」

「はい ガンだったみたいです」

「そうかぁ せっかくカタギになったのになぁ」

「真面目に働いてました。」

「もったいないのぉ」

そういいながら机の引き出しから封筒をだし

俺に手渡しました。

「これ悪いけどわしの代わりに中岡とこ大ちゃんが持って行ったってくれるか?」

「亡くなったと聞いて用意しとったんやけど渡せんままやったんや」

「なんぼ 昔ここにおったから言うてもわしは〇くざやからな笑」

「直接行きにくかったんや」

「え あ はい わかりました」

「これで香典袋買って持って行って」

川島さんは財布から1万円を出して俺に手渡した。

「名前は適当に書いて、釣りはもってこんでええから」

預かった封筒はその重みから結構な金額が入っているようでした。

「ほんでなんや話て」

俺は中岡から聞いたことや葬式に河本らが来た事を

川島さんに説明をした。

「告げ口みたいですんません」

「中岡の家、お母さんも病気で大変なんです」

「俺には川島さんにお願いすることしかできません」

「あっはは 大ちゃんはほんま色々あるのぉ」

すると川島さんの顔は前に事務所で見た怖い顔より更に怖い

大魔神みたく鬼の形相に変わり顔色は

みるみる赤くなりスーッと青ざめてきた。

「それは ほんまの事か?」

「もしちょっとでも話が違とっとたら大ちゃんもただですまんぞ」

「ほんまに中岡の葬式にうちのもんがそんな事しに行ったんか?」

「はい お話した通りです。」

川島さんは数秒間震えていきなり服を脱ぎ壁に飾ってあった

木刀を掴んで応接室の外に飛び出し3人を怒鳴りあげました。

「おのれらいま聞いたけどお前ら中岡の葬式に金取り立てしにいったらしいの」

「ここに正座せんかぇーー」

他の2人はきょとんとしてましたが河本はふてくされた表情でした。

「へぇー 何が悪いんでっか?」「親分いつも言うてはりますやん」

「貸した金はきっちり取り立て%$#&’’’」

ボコン!! ボコン!! バキッ!!

「オンドレ― 親に口答えさらしやがって」

河本はクリスタルの灰皿で殴り飛ばされました。

ガキーン

ガラスの灰皿が衝撃で割れました。

「ほんで病気の親から香典むしりとったんかぇ」

目の前で3人は木刀で滅多打ちです。

(うぉー死んでまうんちゃうん)

俺は恐怖で身動きできませんでした。

(もうほんまこんなとこ2度と来たくないわ)

川島さんの怒りはおさまりません

「もう中岡はカタギになったんや」

「あれほどカタギの人に迷惑かけるな言うたやろ」

「してええことと悪い事あるんじゃ」

「すんまへんーーーー」

しばらくして川島さんがくるっと俺の方を振り返りました。

表情が一変していました。

上の服を脱いでたのでTシャツの下に綺麗な刺青が透けて見えてました。

刺青のない部分の肌は赤く紅潮していました。

「大ちゃん すまなんだな」

川島さんは申し訳なさそうにそう言いました。

「いえ」

3人とも血まみれです。俺は右膝がガクガクしてます。

「ほんで ワレら中岡のツケはなんぼや」

「へぇ ニシュウマンです。」「残りはシュウマンですうぅぅー」

河本が小さな声で言いました。

川島さんは自分の財布をボンと俺に手渡しました。

「これでこいつらが取り立てた分埋めてくれ」

「少のぉて悪いけどわしと大ちゃんの仲に免じてこいつら

許したってくれるか?」

はいと答えるしかありません。

続く。。

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