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シクサーズとネッツのトレード:ハーデン篇

ジェームズ・ハーデンがネッツにシクサーズへのトレード要求をしたことにより、メンタルヘルス問題で試合出場を拒否していたベン・シモンズとのトレードが実現しました。それまでシクサーズは、ハーデンのトレードは夏に狙うと言われていたので、これにはビックリした人も多いのではないでしょうか。

ハーデンやハーデンを狙うシクサーズが裏でどのように動いていたのかレポートが出てきたので、何があったのかまとめてみました。

情報が多過ぎてまとめるのがむずかしいのですが、まずは時系列で見ていきましょう。

トレード・デットライン2週間前

この頃のシクサーズのプレジデントのダリル・モリーに関しては、ハーデンはオフシーズンに狙うという見方が多く、Bleacher Reportのジェイク・フィッシャーやThe Athleticでクラッチ(シモンズのトレードの当事者)のシャムズさへもそうレポートしていました。

シモンズのトレード交渉に関わったライバルチームによると、モリーはオフシーズンにスーパースターを狙うためにシモンズをとっておきたがっていると感じていたそうです。モリーが狙っていたリラードやビールもシーズン中のトレードはムリっぽく、彼が設定したラインに届く選手が得られそうにありませんでした。

また、リラードやビールもチームがプレーインまで行けなかった場合、夏の状況がどうなっているかわかりません。トレードは一発勝負なので、下手に動いて大きな獲物を逃しては取り返しがつかなくなります。実際に、モリーはオーナーからシモンズのトレードを夏に持ち越す許可を得ていたそうで、シクサーズはパニックトレードはしないとも言われていました。焦らずにいられるのは、今あるディールも夏には残っていそうだとの判断もあったと思います。

あるいは、シクサーズはこの頃からハーデンがネッツを出て行きたがっていると知っていたのかもしれません。シクサーズにはハーデンに近い人たちが多く、裏でコミュニケーションをとっていても不思議ではありません。モリーはもちろん、CEOのタッド・ブラウンもロケッツでハーデンと一緒で仲が良いと言われていますし、ラッパーでハーデンの友人のミーク・ミルズはシクサーズの共同オーナーのマイケル・ルービンの友人です。バックチャンネルを使おうと思えば、いくらでもタンパリングできてしまいます。

夏にハーデンと契約するという事は、サラリーキャップに彼のマックス級のサラリー分の空きがなければいけません。そのためにはシモンズとトバイアス・ハリスのトレードが必要になります。シクサーズがハリスのトレード先を探していると言われはじまたのもこの頃でした。シクサーズはネッツとのハーデンのトレードの交渉でレバをかけるため、ネッツとのトレードやサイン&トレードではなく、フリーエージェンシーでもハーデンを余裕で契約できてしまうことを示す必要があります。そのためには、ハリスの約37億円のサラリーをどのようにトレードできるか当たりをつけておきたいところです。

ハリスのトレードは、キングス、ホークスらと交渉をしていたと言われていましたが、実際はもっと多くのチームからの評価を得ていたと思われます。

一方、その頃のネッツは…

ネッツはハーデンをトレードするつもりはなかったそうです。ケヴィン・デュラント、カイリー・アーヴィン、ジェームズ・ハーデンのビック3で優勝を狙えると考えていたようですし、何よりもオーナーのジョー・サイとGMのショーン・マークスはハーデンから長期的にネッツに残りたいと聞いたそうです。

この頃のハーデンのレポートには、13年のキャリアでFAになったことがないハーデンは、夏にはネッツ以外の機会も模索すると元チームメイトやコーチたちに言っていたとか、カイリーのパートタイムのステータスにフラストレーションを溜めているとか、KDがいない時のオフェンスの負担が大きい等の不満があった程度で、彼がトレードを希望するという情報は出ていませんでした。ジェイク・フィッシャーも、今シーズンハーデンはネッツで優勝するためにプレーすることにコミットしているとレポートしていました。

上記のようにシクサーズが夏にハーデンを狙っているというレポートも含め、もし仮にハーデンのトレードがあるなら夏だと思っていました。なぜなら、KD、ハーデン、カイリーのビッグ3はそれまでたった16試合しか一緒にプレーしていなく、その真価を発揮できていなかったからです。セオリー的に史上最高オフェンスと呼ばれるチームがどこまで行けるかハーデン自身も知りたいだろうと思っていましたし、彼が長期的にネッツにいたいと言うのはそのポテンシャルを知っているからだろうと思っていました。

トレード1週間前

しかし、トレード1週間前になり、ハーデンのネッツへの不満を持っているというレポートが増えてきます。ここに来て、じょじょにハーデンの不満がリークされて来た感じです。しかし、ハーデンはこの時点でもトレードをされたいという噂を否定していました。ハーデンは、オーナーのジョー・サイとGMのショーン・マークスに、「噂は信じるな、問題あれば私から直接言う」と伝えていたとの事。

この時点でもシクサーズとネッツのトレード交渉はなかったようです。

トレード3日前

そして、3日前になり、ハーデンがどうやらシクサーズへのトレードを希望しているというレポートがあがってきます。まさかの急展開です。実は裏ではいろいろあったみたいですね。

負けているとは言え、KDやハリスのケガがその主な理由で、レイカーズのようにチームが機能不全だったという訳ではありません。それでもシーズン中にトレード要求するという事は、ハーデンは相当のストレスを抱えていたと思われます。一体ハーデンはネッツの何が不満だったのでしょうか?

ハーデンの不満

これまでに出て来たハーデンの不満をリスト化してみます。

  • 上記のように、カイリーのパートタイム状態に対して不満

  • カイリーのワクチン非接種に対して、カイリーは何もしても良いのかと思っていた。ちなみにハーデンも最初はワクチン接種に積極的ではなかった。ハーデンはずっとネッツにカイリーが必要だと言っていた。「ワクチンを射つ」とジョークも言っていた。

  • カイリーがパートタイムでアウェイの試合にしか出られない。この年齢で優勝を狙えるシーズンを無駄にしたくはなかった。

  • ハーデンがトレードされたがったのはカイリーも原因だと言われている。1/17のキャブス戦の前、カイリー・アーヴィンはネガなエネルギーを祓うためにロッカールームでセイジを焚いた。毎試合やるわけではないがキャブスとの過去がそうさせたのだろう。ハーデンはそれを見て、カイリーを3つの頭がある生き物かのように見ていた。2人の間には変なバイブがあった。ハーデンは苛立っていて、カイリーはハーデンとは合わなかった。カイリーもハーデンがトレードされたいと知った時、そうなることを願っていた。

  • KDがケガで欠場し、オフェンスの負担が大きくなった。

  • シューターが少ないため、チームのスペースのなさに苛立っている。

  • ナッシュのローテーション:ナッシュはクロージング・ラインアップは決まったクランチタイムのユニットではなく、調子が良い選手を使いたがる。それがハーデン的には流動的過ぎた。

  • オフェンスのアプローチの違い:マイク・ダントニが組み込んだオーガニックでフリーフローなオフェンスに対し、ハーデンはボールを持ちたがりたがった。自由な動きのアプローチを望むKDとカイリーとは考えが違っていた。

  • ネッツのアシスタントコーチは、ATOでデュラントのプレーがデザインされた時にハーデンがあきれた表情をしたのを見た。

元ロケッツのスタッフによると、「ハーデンがプライベートでコーチ、チームメイト、球団への不満を言っていることがリーグ中で知られているが、それは過去彼がやってきたことだ」そうで、「NBAで彼とある程度の時間を過ごせば、彼はすぐに他人を責めるのがわかる」そうです。ハーデンにとって100%の味方ではなければ敵になるとの事。この辺りのハーデンの性格もネッツと合わなかったのかもしれません。

  • ブルックリンに住むことを楽しんでいない。ヒューストンでは有名人として楽しむことができたとも言われている。

  • 天候。NYは寒すぎるのでしょうか(フィリーとは車で90分ですが…)。

  • ニューヨークとテキサスの州税の大きな違い(確かにNY州は全国でも高い方ですが、これはほとんどのチームに行っても避けられないような…ちなみに今シーズンの彼の州税は約5.6億円です。州税のないテキサスから来れば損していると思うのも理解できます)。

これに対し、ハーデンがとった行動はロケッツにトレード要求をした時と同じようななものでした。

チームから離れはじめたハーデン

ネッツに不満があったハーデンは、ロケッツにトレードをプッシュした時のような行動に出ます。

1/21:スパーズ戦でトリプルダブルをした後、ハーデンはクラブで遊ぶためにチームから抜けてヒューストンへ行った。ちなみに、これはトレードデットライン3週間前のことです。

1/23:ヒューストンからミネソタへ飛んでチームに合流。ウルブス戦は13得点。

2/1:プライムタイム放送のサンズ戦はきちんとプレーした。

2/2:キングス戦では最低限の努力しかせず4得点。これが結局ネッツの一員として出場した最終戦になりました。この後はケガで試合を欠場しています。

トレード・デットラインまで1週間。ここからハーデンの自分勝手な行動が加速して行きます。

2/4:ジャズの試合のハーフタイムになるまで遅刻。その後ハーデンはラスベガスへ遊びに行きました。ベガスはソルトレイクシティーから近く、ロケッツ時代からユタに来た時に通っていたそうです。また、ロケッツ時代では、ロスでの試合の後は遊ぶため、チームとはいつも次の目的地で合流していたとの事。ネッツはこのトレードデットライン1週間前に、ハーデンは明らかにやる気をなくし、トレードされたがっているのを知っていたようですね。

2/6:遠征のラストの試合のナゲッツ戦。ハーデンはベガスからデンバーにやって来て試合に遅刻。

2/8:セルティクス戦でも試合開始から遅刻。

2/9:チームがウィザース戦のためにDCに向かう中、彼はヒューストンへ戻った。ネッツとはトレードされるまでヒューストンに戻ることで合意。

2/10:トレード・デットライン当日。ネッツがシクサーズと交渉している間、ハーデンはクラブで遊んでいた。ソースによると、ハーデンはトレードがあるとわかっていたそうです。

ジェイク・フィッシャーが、これらの情報が本当かどうか裏を取るためにハーデンに近い人物に連絡をすると、「ハーデンっぽいだろ?」と返されたそうです。

このように、ハーデンは1月後半になるとロケッツ時代のようにいろいろハデに夜遊びしていたようですが、トレードデットラインの週までは見かけ上ネッツにコミットしていたようです。少なくとも上記のようにサイとマークスにはネッツに長期的にいたいと言い続けていたそうですが、球団の外に流している情報は与えずに、裏でシクサーズへの脱出戦略を練っていたようです。

ネッツは、ハーデンの言葉を信じていて、ケヴィン・デュラントが復帰すれば彼の行動も変わるだろうと期待していたとの事。デュラントも、状況が良くなることを願いながらハーデンを見守っていたようです。

ハーデンは上記のような消極的且つ間接的な行動でトレード要求を匂わせていましたが、ネッツがなかなか自分をトレードする様子を見せないので、直接FaceTimeでマークスとサイにシクサーズに行きたいと伝えたそうです。ネッツは球団のためになるトレードしかしないとハーデンに伝えて、ハーデンはそれに納得したようです。そして、ネッツとハーデンはトレードデットラインが過ぎるまで欠場することに合意をしたとの事。

タイミング的には2/3のデットライン1週間前あたりでしょうか。言いたいことを伝えた後は途中チームから離れてベガスへ行って遊んだりとやりたい放題やっていた感じです。

TNTの仕事でその頃ネッツと一緒に行動していたクリス・ヘインズは、ネッツの選手たちはハーデンがトレードされたいのをわかっていて、それがチームを疲弊させていたと言っていました。

ちなみに、ハーデンがトレード要求するのを直前まで拒んで来たのは、2年連続で2つの球団にトレード要求をして世間の反感を買いたくなかったからだそうです。

交渉

ハーデンからのトレード要求がありましたが、ネッツとシクサーズが具体的な交渉をはじめたのはトレード当日だったようです。それまでGMのマークスもモリーから何をオファーされるかわからなかったとの事。

1/11に一度だけダリル・モリーがネッツのGMのショーン・マークスに電話をかけ、ハーデンのトレードの探りを入れていたようです。

モリーもトレード交渉は直前になってからするタイプだそうです。混乱の隙をついて交渉の優位に立つのが好きなのでしょうか。

ネッツとシクサーズのトレード交渉は数時間しかありませんでしたが、お互いが条件も飲めないものも含め、あらゆるシナリオを想定していたはずです。どんな交渉を得てこのトレード内容がまとまったのかをより理解するために、ネッツとシクサーズの駆け引き材料も整理してみます。

ネッツの弱みはもちろん、ハーデンのフライトリスクです。

ネッツはすでにタックスに入っており、ハーデンが抜けてもキャップを超えてしまっています。そのため、フリーエージェンシーでの戦力補強はMLEやトレードエクセプションになり、ハーデンの抜けた戦力を埋めることは厳しくなります。そうならないためにも、ネッツは条件次第で今とれるシモンズを取っておくべきと考えたのではないでしょうか(しかも、32歳でマックスを希望するハーデンを欲しがるチームは意外と少ないと思います。そのためシモンズはリターンとしても結構良い契約なのではないでしょうか)

同様にシクサーズの弱みもキャップです。

現時点で来年ハーデンがFAになってもキャップがないため契約できません。ハーデンもFAになったところでマックスで契約できるチームはピストンズやマジック、スパーズなどの再建チームに絞られてしまい、優勝は狙えそうもありません。

そのため、シクサーズとハーデンがFAを通して一緒になるためには、最低でもベン・シモンズのトレードで最低限のサラリーを受け取りつつ、どこかにマイナス資産と言われているハリスの37.63億円をサラリーダンプするしかありません。そのためには少なくとも2つの1巡目指名権を差し出さなくてはいけないでしょう。

ですが、キャップをつくれそうな再建中のピストンズやマジックが、トバイアス・ハリスのために貴重なキャップを使うとは思えません。もしハリスを引き受けてもらうなら、プロテクションなしの1巡目指名権と若手のマキシィを差し出さないといけないかもしれません。

または、ドラフトの日にサンダーのキャップルームにシモンズをダンプすることも可能です。そしてハリスのリターンを最低限のサラリーにすればいけるかもしれません。しかし、サンダーの要求は相当高くなるでしょう。

しかもシクサーズはすでに皆から狙いを知られているので、あらゆる交渉でかなり足元を見られるはずです。

こうして見ると、ハーデンのためにキャップルームを空けるのはハードルが高すぎて現実的ではありません。1巡目指名権をいくつも取られた上に若手まで出さなければいけなくなり、総合的な戦力は落ちるはずです(シモンズかハリスのトレードのリターン次第ですが)。

そうなると、シクサーズにとってもっとも都合がいいのがネッツとのサイン&トレードです。むしろ、シクサーズの最善の一手は、ネッツとのサイン&トレードだけです。ハーデンを取るためには、ネッツの協力が欠かせません。

ネッツが強気だったのもトレード内容を反映しています。結局多くを差し出したのはシクサーズでした。

トレード内容:

ネッツ獲得:

  • ベン・シモンズ

  • セス・カリー

  • アンドレ・ドラモンド

  • 2022年1巡目指名権(プロテクションなし)2023年の1巡目指名権に変更可

  • 2027年の1巡目指名権(No.8プロテクション)

*シクサーズは2025年の1巡目指名権をサンダーに送っています。そのため2つ目の指名権は2027年になりましたが、ハーデンもこの頃は引退しているかもしれませんし、エンビードも32歳でどうなっているかわかりません。ネッツにとっては良い指名権だったかもしれません。

シクサーズ獲得:

  • ジェームズ・ハーデン

  • ポール・ミルサップ

ネッツは他チームにサイブルのバリュエーションをリサーチしていたようで、サイブルをパッケージに含めるように交渉していたと思われます。

サイブルが入ればサラリー的にはほぼイーブンのトレードになっていたでしょう。しかし、シクサーズはサイブルを出すのは拒否します。その代わりに、ネッツは2022年の指名権を2023年にディファーできる権利を得たと思われます。シクサーズは今20位中盤で、不作の年と言われているドラフトでは良い指名権とは言えません。来年は何があるかまだわからず(ハーデンやエンビードがケガするかもしれない)、もっと良い条件になる可能性もあるからです。

最終的にネッツはこの1巡目をトレードするかもしれませんが、良いリターンだったと思います。

振り返れば、ネッツはハーデンの獲得する時に以下の契約とドラフトアセットを手放しています:

  • ジャレット・アレン(オールスター)

  • キャリス・レヴァート

  • トウリーン・プリンス

  • ロディオンズ・クルークス

  • 2022年、2024年、2026年の1巡目指名権(プロテクションなし)

  • 2021年、2023年、2025年、2027年のピックスワップ

それが今、

  • ベン・シモンズ

  • セス・カリー

  • アンドレ・ドラモンド

  • 2022年1巡目指名権(プロテクションなし)2023年の1巡目指名権に変更可

  • 2027年の1巡目指名権(No.8プロテクション)

に変わりました。

悪くありません。1年と1巡目指名権をかけて、プレーメイクとディフェンスができるウィング、シューター、経験あるビックを得ました。フリースロー成功率はかなり落ちますが、チームとしてはより完成度は高まったのではないでしょうか。

KD:

ケヴィン・デュラントはハーデンのトレードをどう思っていたのでしょうか。

ネッツは大きな動きがある時はまずKDに相談をしているそうで、彼の意見次第でいろいろと決まっていくようです。ヘッドコーチにスティーヴ・ナッシュを選んだ時も、ドラフトでカム・トーマスを27位指名した時もKDの意向が強く出たそうです。カイリーがロードだけでもチームに復帰できたのは、デュラントがロビーイングしたからだそうです。カイリーのパートタイムの復帰にはハーデンも望んでいたそうで、KDとハーデンの足並みが最後にそろったのはカイリーの時だったかもしれないとのことです。

そのため、今回のトレードもKDがOKを出さなければハーデンはまだネッツにいたと思われます。フィッシャーによると、「KDはジェームズを出したくなかった。でもKDはもう終わっていたのをわかっていた」そうです。他のソースも「ケヴィンがその決断をしなかったらトレードはなかったと思う」と言っています。

また、他のレポートでは数ヶ月デュラントとハーデンは冷戦状態で、みんなが疲弊していたとも言われています。

また、KDはハーデンが秋のトレーニングキャンプにレポートした時、体が絞り切れていなくてがっかりしたそうです。逆にKDはオリンピックがあったのでコンディションは素晴らしかったそうです。これは、こういうトレードがあったので出てきた情報ですが、KDはハーデンのパフォーマンスに満足していなかったのは間違いなさそうです。

話を戻しましょう。KDはハーデンが動くまで、ハーデンのトレードには抵抗感があったようです。1/13にKDがNYでリッチ・ポールと会った時に、ポールから問題になりそうなハーデンと彼のクライアントのシモンズのトレード案を提案されたそうですが、最初はそのアイディアには反対していたそうです。KDはその48時間後にケガをしてしまい、残されたハーデンの状況は加速度的に悪化していきます。

このままハーデンの調子があがらずに素行が荒れていけば、シーズンを失ってしまう恐れが出てきていました。ハーデンが出て行きたいのは明らかで、そうなればシーズンを失った上に、夏にはリターンもなしに彼を失ってしまう可能性もありました。「ケヴィンは、”fuck it、ジェームズはShit(態度とゲーム)をもたらしてくれない。」って感じで腹をくくったようです。

トレードデットラインの朝、デュラントはショーン・マークスに電話して、ハーデンのトレードを承認しました。

ジョエル・エンビード:

ではシクサーズのザ・プロセスことジョエル・エンビードは最初はこのトレードに反対だったようです。ビル・シモンズがポッドキャストでザック・ロウに話した内容によると、その理由はハーデンよリもブラッドリー・ビールを欲しがっていたからだそうです。

以下ビル・シモンズ:

「これは私が聞いた話だ。私はこの件で全体を通してとても良い情報を得ていた。これはまさにそれが起きている時に私が聞いていたことだ。エンビードは本当にブラッドリー・ビールを欲しがっていて、本当に強くプッシュしていた。そして、彼はいつもビールと話していた。そして、彼は(ビールのトレードを)プッシュ、プッシュ、プッシュしていた。そして、このトレードの話が長引いた理由のひとつは、ハーデンを欲しがっていたシクサーズ側の存在があったことだ。明らかにダリル(モリー)にとって、ハーデンは彼の選手だからだ。でも、エンビードはビールの方がよりフィットすると感じていたので、本当にビールを欲しがっていた。そして、彼はそれをプッシュ、プッシュ、プッシュし続けていた。そして、ビールが怪我をしてしまった。それでもエンビードはまだプッシュしていた。”ダメだ、ダメだ、ダメだ、ビール、ビール、ビール”。まだ彼獲得に動いていた。そして、ビールは「抜ける」って感じになった。そして彼は手術を受けた。そうしてハーデンの状況になるんだ」。

エンビードがハーデンよりもビールを望むのもわかるような気もします。ハーデンはPnRでのリム・フィニッシャーを好みますし、ディフェンスもエンビードができないスウィッチを好みます。ビールの方がどんなオフェンスシステムにもフィットするし、ディフェンスもチームのスキームに合わせられると思います。

でもエンビードはハーデンになって結果良かったと思っているのではないでしょうか。

ハーデンの契約

ハーデンはネッツとの3年で約162億円の契約延長を断っていたそうですが、これはネッツがどうのこうのよりも単なるビジネス上の判断です。もしハーデンが今オプションをオプトインすれば、彼は4年で約227.2億円のマックス契約延長ができるようになり、5年で約274.7億円の契約になります。今は、ハーデンはおそらく4月にオプトインして10月頃に契約延長をするはずだと言われています。

それよりもネッツにとって1番大きかったのは、どこまでオールNBA級のパフォーマンスが保てるかわからないハーデンのマックス契約問題をシクサーズに引き取ってもらえた事だと思います。これでネッツはもう38歳で約60億円のサラリーの選手のパフォーマンスに悩まされる必要もありません。意外とラッキーだったのではないでしょうか。

ひょっとしたらネッツはハーデンの契約延長交渉で4年目をチーム・オプションにするとか、パーシャル・ギャランティー(1部だけ保証)をしたがっていたのかもしれません。それを良く思わなかったハーデンは、ネッツに残れるという状況をレバレッジとして使って、モリーと裏で4年フルマックス契約延長を握ったのではないか…などと妄想してしまいます。

トレードのまとめ

このトレードではネッツもシクサーズも良くなったと思います。ネッツはベン・シモンズ次第ですが、セオリー的にはフィットするはずで、今までいなかったポイント・オブ・アタックを消せるディフェンダーとして、または相手エリートウィングにマッチアップできるディフェンダーとして機能するはずです。願わくば、この夏にシクサーズから得た指名権でグリフィンのアップグレード版のヤニスを守れてスリーが撃てるビックが得られればより完成度は高くなると思います。

シクサーズは相手ディフェンスを動かせるカリーを失いましたが、オールスターのハーデンの加入でオフェンスの可能性はより大きく広がります。2人ともオフェンスでは致命的な弱みがあるわけではないので、なんとかプレーオフまでに上手いこと機能する方法を見つけていけると思います。

シクサーズで今後あり得るのは、チームが負けだした時にハーデン問題が浮上してくる事です。

ロードトリップ中にベガスに行ったりするハーデンの特別扱いは勝っている間はいいですが、負け始めるとハーデンがチームカルチャーに与える影響はマイナスです。。原因はハーデンに好き勝手にやらせてかなりの権力を握らせてきましたモリーにありますが、彼はハーデンのやる気を殺がずにそれを止めさせる事ができるでしょうか。

また、シクサーズはハーデンがエンビードと揉めたらどうするのかも考えておかないといけないと思います。ハーデンはスターになってから今まで一緒に組んできたスター全員とうまく行ったことがありません。ロケッツ時代には、ハワード、CP3、ウェストブルック、(ヘッドコーチのマケールも入れときます)、そしてネッツ時代にはKDやカイリー…全員うまくいかずブレークアップしています。今回もエンビードとうまくいかないのが普通でしょう。

もし、ハーデンとエンビードがうまくいかなければ、モリーはどうするのでしょうか。シクサーズはエンビードのチームです。ザック・ロウもエンビードが「ザ・プロセス」の体現者で、球団も街も彼のものだと言っていました。エンビードのプライムはまだ続き、32歳のハーデンのパフォーマンスはあと数年で確実に落ちます。ハーデンは夜遊びが大好きで、クリス・ポールのように食事から見直して、コンディショニングに年間約1億円をかけるようなストイックさがあると思えません。その時、モリーは冷たくハーデンを他のスターとトレードするのでしょうか…

2人の関係が深いだけに、うまくいかなかった時にどうなるのかが余計に気になってしまいます。こういうドラマもNBAの醍醐味のひとつなのかもしれません。


参考サイト:With Ben Simmons-James Harden trade a hope worth waiting for, sources say Sixers prefer a summer deal/Sources Explain Why James Harden Would Welcome New Scenery Next Season/James Harden denies reports of unhappiness but acknowledges frustrations in Nets’ loss to Lakers/NBA Execs: Big Risk Pairing Joel Embiid & ‘Control Freak’ James Harden/A James Harden-Ben Simmons deal is a possibility before the NBA trade deadline: Sources/Report: James Harden frustrated with the Brooklyn Nets’ lack of spacing/NBA trade deadline 2022: Ben Simmons, James Harden and the league's wildest game of chicken/Amick: What I’m hearing on possibility of a James Harden-Ben Simmons trade between Nets and Sixers/Kyrie Irving’s role in James Harden trade, and is Zion Williamson the next big name to move?: Trade deadline first thoughts/James Harden-Ben Simmons trade: Inside story behind the deal/Unanswerable NBA Questions With Zach Lowe
サムネイル画像:Photo by Brace Hemmelgarn/USA TODAY Sports

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