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シカゴ・ブルズ:ロッカールーム騒動やトレード情報など途中経過まとめ

The Athleticのシャムズ・チャラニアとダーネル・メイベリーが、シカゴ・ブルズの内情を「ラヴィーンとブルズは目と目を合わせていない」とレポートしてから、ロッカールームでの選手たち同士の言い合いや、ラヴィーンのトレード噂などがいっきに噴出したブルズですが、いったん状況も落ち着いて来たようなので、何かある前にいちどブルズのレポートをまとめたいと思います。

まずはブルズのリーグ内の立ち位置から見ていきます。

ブルズは12/30(日本時間)時点で15勝19負でイースト10位。プレーオフ確実圏内の6位のペイサーズとは3ゲーム差。プレーイン圏外の11位のラプターズとは0.5ゲーム差となっています。来年のNBAドラフトではマジックに1巡目指名権(トップ4プロテクション)をニコラ・ヴーチェヴィチのトレードで出していまっているブルズにとって、なんとか巻き返して6位を目指したいところでしょう。

538のElo予想(12/30時点)では、ブルズは今シーズン38勝44敗の10位で、プレーイン・トーナメント出場し、プレーオフ進出の確率は34%となっています。

直近の10試合(12/30時点)でのディフェンシブ・レイティングは118.0で26位。オフェンシブ・レイティングは116.2の10位。ネット・レイティングは-1.8の19位。150点取られたウルブス戦が響いているようです。

今回のロッカールーム騒動やトレード噂をまとめる前に、ブルズのマックスプレーヤーのザック・ラヴィーンとビリー・ドノヴァンの関係性もチームのダイナミクスに影響していると思うので、ここで紹介します。

11/20のマジック戦(108-107の敗戦)で、ラヴィーンは試合残り時間3:43にベンチにさげられ、接戦での試合をクローズする事ができませんでした。そこまでラヴィーンのシューティングは1-14だったので、ヘッドコーチのビリー・ドノヴァンがラヴィーンを下げた判断も理解できます。しかし、ラヴィーンは夏に5年で$215Mのマックス再契約しているエースなので、他の選手をベンチに下げるのとは訳が違ってきます。試合後、ラヴィーンは「それはビリーの判断だ。彼が結果を受け入れなければいけない。私がそれに納得しているかと聞かれればノーだ」と話していました。

ラヴィーンは翌日その事について「私は彼(ドノヴァン)に、悪いゲームしていてもコートに出てなんとかプレーしながら調子を取り戻せる権利を得ていると思っていると伝えた。彼の判断はチームのためにベストなことをしようとした事だったとリスペクトする」と話しています。

ドノヴァンはラヴィーンをベンチに下げた采配について「その時はチームにとってベストだと思った。私は彼は私は常にチーム第一に考えて最善な尽くそうとしているのをわかっていると思う。また、彼の立場、意見、コートに出ている必要があると思った事、それがチームにとってベストだと思った事をリスペクトする」と言っています。

ラヴィーンに関してはディフェンスができない事が言われているので、実際にドノヴァンは接戦でのディフェンスとオフェンスのバランスを考慮に入れてラヴィーンをクローズさせなかったと思われます。

ラヴィーンはこの件について「あれはただの1試合だ。大げさに騒ぎ立てたくない」と話していましたが、このラヴィーンとドノヴァンの間の問題が尾を引いている事を示唆するレポートが出てきました。

ラヴィーンがゲームをクローズできなかった試合から10日後、The Athleticのシャムズが、ブルズはヘッドコーチのビリー・ドノヴァンとシーズン開幕前に契約延長していたとレポートしました。

ドノヴァンの契約内容は明かされていないのですが、最初の4年から数年足されるので、少なくても2026年まで(おそらく最終年はチームオプション)延長されたのではないかと言われています。これは同時に、ドノヴァンはしばらく首にならずにブルズを指揮していく事を意味しています。

このレポートが出てきた時、なぜブルズはこれを隠していたんだと不思議がられていましたが、今思い返してみれば、これは球団がラヴィーンに対して、ドノヴァンはしばらくいるから揉めるな的なメッセージが込められていたようにも見えます。タイミング的にも、これがリークされたのがなぜ今なのかも大きなポイントです。もしそうだった場合、ラヴィーンとドノヴァンの間の摩擦は報道されている以上に悪いものだったと言う事になります。または、他の問題がロッカールームに出ている可能性もあります。

ここで12/21のシャムズの「球団に近いソースによるとラヴィーンとブルズは目と目を合わしていない」と言うレポートに戻ります。この数週間、ラヴィーンと球団の間には隔たりがあるそうです。シャムズはラヴィーンのベンチの件には触れていませんが、タイミング的には「隔たり」がある期間と一致します。

また、ブルズはザック・ラヴィーンとデマー・デローザンのふたりだけのミーティングを設けたり、何度もチームミーティングを開いて問題解決しようとしたそうです。シャムズの記事では具体的にその問題が何か/なぜラヴィーンとデローザンのふたりきりのミーティングだったのか触れられていませんが、Heavy. のショーン・デヴェニーが、ザック・ラヴィーンとデマー・デローザンは今シーズン、フロアでシンクアップする事に問題を抱えているとレポートしています。これはもうラヴィーンとデローザンの間に意見の相違があるという事と以外考えられません。

ただ、シャムズによると、「ふたりはお互いリスペクトしあっている。個人的な良い関係を保っている」そうなので、ケンカをして険悪になっているという訳でもないようです。

そして、シャムズは、ロッカールームではヘッドコーチのビリー・ドノヴァンとコーチング・スタッフへの懐疑的が増えているとも言っていて、選手たちの中には、ローテーションや起用法、戦術、試合の準備など、何かしら不満を抱えている人がいるようです。接戦のクロージング・ラインアップに入れなかったラヴィーンがその中に入っている事は間違いありません。そう考えると、球団がドノヴァンは首にならずにしばらくの間ヘッドコーチを続けると言うメッセージを出して、温和に不満を抑えようとしたとしても不思議はありません。

そしてその後、12/19のウルブス戦で150点取られて負けた試合のハーフタイムで選手たちが言い合いになった事がレポートされました。

NBCスポーツのK.C.・ジョンソンによると、そのハーフタイムでは、フラストレーションがたまった選手たちが「強く言い合った」そうで、どうやら全体的には「我々はもっと良いプレーをする必要がある」と言うものだったそうですが、「その苛立ちの中にはディフェンスをしないザック・ラヴィーンに向けたものもあった」そうです。

シカゴ・サンタイムズのジョー・カウリーによると、選手たちの苛立ちはウルブス戦の前半だけが原因ではなく、その前の5試合のディフェンス崩壊も関係していたようです。ロッカールームでの選手たちの「怒りはラヴィーンに向けられたものだったと言われている」そうで、かなりの大声を出していたため、コーチング・ルームにいたコーチがロッカールームに様子を見に行った程だったそうです。

ラヴィーンのディフェンスについて、カウリーは「それは驚きではない。5年$215Mの契約をする昨シーズン、彼はディフェンスをすると約束していた。2021年のチームUSAでディフェンスの才覚を見せ、ブルズのトレーニングキャンプと2021-22レギュラーシーズンの最初の6週間ディフェンスの才覚を見せていた。その11月末のラヴィーンのディフェンシブ・レイティングは103.4で、スターターとしては79位の自己最高。左膝が痛みが悪くなり、シーズンを116.2の事故最悪で終えた。ケガも治り、契約も片付いて、ラヴィーンはディフェンスもしてくれるだろうと期待されていたが、そうはならなかった」とレポートしています。

これが本当なら、ブルズの選手たちはラヴィーンにリーダーとしてもっとディフェンスに力をいれるべきだと考えている事になります。

このロッカールームの言い合い問題に対し、ドノヴァンは「責め合いがあったと聞いている。それは私個人的には健康的だと思う…何が言われたかは私にはわからない」と話しています。

そして、ラヴィーンがディフェンスをハイレベルでできないのは膝の問題なのか、ただディフェンスをやらないだけなのか聞かれ、ドノヴァンは「私はこの5試合でのチーム全体、全員がディフェンス的に良いプレーができると思っている。ザックだけではなく、デマー、アレックス、みんなだ。まとまって良くならなくてはいけない。コーチングスタッフとして、私たちは彼らを助けなければいけない」と答えています。ドノヴァンはラヴィーンを守っているようにも見えますが、大声で言い合っても、後半は前半の71点よりももっと悪い79点を許して改善しなかった事を見れば、ディフェンスの問題はドノヴァンの言うようにラヴィーンひとりだけの問題だけではないようにも思えます。

私はブルズの試合をあまり見ていないのでなんとも言えないのですが、ブルズ対ロケッツ戦を見たThe Ringerのケヴィン・オコナーは、ドノヴァンのディフェンスのカバレッジが良くなく、ボディー・ランゲージは悪く、チームはケミストリーはなく、エフォートにも欠け、チームにはまとまりがないと話していて、ドノヴァンの戦術やコーチングにも問題がある事を示唆しています。クリス・ヴァーノンはヴーチはトラフィックコーンのようだったと話しています。

ロンゾ(夏に左膝メニスカス損傷の手術を受けたが、まだ痛みがある)がいれば攻守良くなると思いますが、残念ながら彼はまだ走る許可も降りていないとの事。Wojによれば、ロンゾが今シーズン復帰できる保証はないそうです。

ラヴィーン:「フラストレーションがたまる。全員が苛立っている。ファンたちもそうだとわかっている。恥ずかしい事だ。最終的には、自分自身を見て現実的になり、どうカムバックして戦い返すのか見つけなければいけない」

このようにクリスマスが終わっても成績が振るわずに改善が見られない場合は、今後のチームの方向性をどうするかが話題になってきます。プレーイン圏外だったブルズは改善するどころか問題が出てきてしまったため、必然的にメディアや他チームからこれからこのままプレーオフを目指すのか、タンクしてドラフトのトップ4を目指して再建やリツールに方向転換をするのか注目されてしまいます。

そこで早速マックス再契約して契約が残り4年残っているラヴィーンの情報が出てきました。Heavy. のデヴェニーによると、あるイースタン・カンファレンスのエグゼクティブは「ラヴィーンはレイカーズに行きたがっている。それはしばらくとてもハッキリしている。エージェント(クラッチ・スポーツの)は彼にロサンゼルスへ行かせたがっている。彼はUCLA出身で、昨年のオフシーズン、契約についてガタガタしていた」と言っていたそうです。

ラヴィーンはレブロンとADのエージェンシーと同じクラッチ・スポーツに所属しているので、レイカーズ行きの話が出てくるのでしょう。クラッチつながりでレイカーズに行きたがっていると言うのは簡単ですが、トレードの数字のやりとりは非常にむずかしいものになっていて、現実的ではありません。

その理由は、ブルズのタックス回避があるからです。

ブルズのサラリーキャップは現在15人で$148.56M、タックスまで$1.7Mになっています。そのため、もしブルズがトレードしようとしても、出すサラリーよりも入ってくるサラリーが多くなってはいけません。もしラヴィーン($37.09M)を今トレードしようとしても、ラヴィーンのサラリーよりも少ないサラリーか同等のサラリーの選手を受け取る事が望まれます。そうなるとラヴィーンとサラリーマッチできるレイカーズの選手はアンソニー・デイヴィス($37.98M)だけです。レイカーズがラヴィーンのためにADをトレードする事はないでしょう。クラッチもAD⇄ラヴィーンよりも、レブロン、AD、ラヴィーンを一緒にプレーさせたいはずです。

レイカーズがトレードにオープンだと言われているラッセル・ウェストブルックはどうでしょうか。ウェストブルックのサラリーは$47Mなので、ラヴィーン+ミニマム⇄ウェストブルックのトレードではブルズはタックスに入ってしまいます。ラヴィーン+アレックス・カルーソ+ミニマム⇄ウェストブルック+指名権の方が現実的ですが、この場合、ブルズは再建を意味するので、レイカーズの2027年と2029年の指名権はブルズにとっては遠すぎて魅力的ではありません。ラヴィーンを市場に出せば、今シーズンのドラフト指名権をリクープできるかもしれません。

12月頭には、レイカーズはウェストブルックでデローザン($27.3M)+ヴーチ($22M)獲得するトレードを内部で議論していたとのザック・ロウのレポートがありました。

しかし、デヴィニーによると、ブルズはフル再建は今年はしないが、それを始めることはできる。大きなロスター変えはシーズン終わってからになるとも言われているそうです。ラヴィーンやデローザンのフェイヤーセールはしないが、あと1ヶ月様子を見て改善しないようであればシーズン中に何か動きがあるだろうという事でしょう。そもそもチーム事情がどうであれ、ブルズは来年FAになるヴーチ、RFAになるコビー・ホワイトをどうするか決めなくてはいけません。

そして、B/Rのクリス・ヘインズはデマー・デローザンについて、「ブルズはチーム・ケミストリーと責任でちょっとした機能不全に対応している。今シーズン改善しなければ、ライバルのエグゼクティブ達はオフシーズンにデマー・デローザンがトレード要求するかもしれないと信じている…彼の契約は来年最後だが、切れる契約でプレーすることは優れた選手とって考えられないだろう」とレポートしています。

デローザンはこれについてブルシットだと無言の反論をしています。

しかし、ヘインズはデローザンのエージェントともタイト(仲が良い)なので、無視できるレポートではありません。本人はそうは思っていませんが、エージェントからすれば、自分のクライアントに契約延長を与えたいと考えているのでしょう。エージェントサイドが夏に契約延長が可能になるデローザンについて今からブルズにプレッシャーを与えはじめているとも考えられます。

デローザンは2021年に3年$85Mの契約をしていて、この夏に契約延長が可能になります。そのマックスは4年$153.7Mですが、彼の年齢もあるので契約期間を2+1などに抑えた契約になると思われます。

ニコラ・ヴーチェヴィッチは現在4年$118.2Mまでに契約延長が可能です。それがなければ、この夏にFAになります。

今後のトレード・デッドラインまでの1ヶ月間のポイントは、以下のようになります。

  • ロッカールームで問題になったラヴィーンのディフェンス

  • このところ調子が良くないチームディフェンスの改善

  • ケミストリー。特にラヴィーンとデローザン

  • 契約延長を望んでいるデローザンを先手を打ってトレードするか

  • ヴーチの契約延長かトレードか。または夏に出ていかれる事を承知で我慢するか

  • RFAのホワイトをどうするか

  • リツールなら誰をトレードするか。カルーソなら1巡目が得られるのではないか

  • 2023年のブレイザーズのロッタリープロテクションがかかった1巡目指名権をトレードに出すか

  • ロンゾは復帰できるか


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