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ダニー・エインジの辞任とブラッド・スティーヴンスのプレジデント就任について

18年もの間セルティクスのプレジデントを務めてきたダニー・エインジ(62)が辞任し、なんとヘッドコーチのブラッド・スティーヴンス(44)がエインジの後任に!

エインジの辞任は前から噂されていたそうで、驚いている人はいなかったようです。しかし、その後任にフロントの経験が全くないヘッドコーチのブラッド・スティーヴンスになったことは皆が驚いていました。そこでエインジとスティーヴンスに何があったのか詳しくまとめました。

ダニー・エインジは2年前の5月に2度目の心臓発作を経験し、それが人生を見直すきっかけになったようです。

エインジ:「病院のベットで6人の子供たちに囲まれて、この仕事をやめなければいけない、ストレスが大き過ぎる。その時にやめることを考えはじめたかもしれない。この2年間、バブルや規則やセキュリティーやプロトコルもマネジメントしなくてはいけなくて、仕事が楽しくなくなってしまった」

通常の仕事の上に、リーグが定めた厳しいコロナ・プロトコルを運用/実行していくことについて、エインジの本能はやめろと言っていたそうです。そして、今年のトレードデットライン(3/25)後にはオーナーのウィック・グラウスベックに辞任の意向を伝えていたそうです。

エインジはその前から、ヘッドコーチであるブラッド・スティーヴンスと、自分が辞めて空くポジションにスティーヴンスを後任にすることを話していたそうです。

これはスティーヴンスもヘッドコーチとして苦しんでいたタイミングです。セルティクスはチーム内にケガやコロナ感染もあり、成績も勝率5割付近でした。その上、スティーヴンスはすでにロッカールームを失っていたと言われていて、彼は今シーズンで解雇されるのではないかとも言っている人たちもいました。

(ブラッド・スティーヴンスとダニー・エインジ)

また、チーム状態の他にも、スティーブンスは精神的に疲弊していたようです。

セルティクスの大ファンでチームとのコネクションがあるThe Ringerのビル・シモンズが言うには、スティーヴンスはバブル前のカイリー・アーヴィン最後のシーズンから精神的に疲弊してしまい、パンデミック中のシーズンでは消耗しきってしまい、今回のヘッドコーチを辞めてプレジデントになる決断をしたのではないかとのことです。カイリー・アーヴィン時代のチーム状況、去年のバブル、そしてすぐにはじまったコロナ・プロトコル満載のシーズンと精神的に厳しいシーズンが3年続き、ヘッドコーチの情熱も薄れてしまったのでしょうか。

この件では、スティーヴンスと仲が良いウォリアーズのヘッドコーチのスティーヴ・カーも同情的でした。スティーヴンスにはまだ学校に通う10代前半の子供が2人いて、パンデミック中に絶えず家族から離れているのは精神的に辛かったのではないかと言っています。ビル・シモンズやケヴィン・オコナーも、スティーヴンスは大のファミリーマンだと言っていたので、ヘッドコーチをしていてなかなか家族との時間が取れないことも大きく影響していると思われます。

また、解雇も噂されていたスティーブンスにとって、最大のサポーターのエインジがいなくなり、新プレジデント体制になった時にセルティクスでコーチを続けていける保証はありません。それなら給料は安くなりそうですが(今は1年で約7億円)、スティーヴンスならヘッドコーチにすぐに戻れると思うので、チャンスがある内にフロントを経験しておくのも悪くない話だと思います。

ちなみに、インディアナ大が7年約70億円でスティーヴンスにヘッドコーチをオファーした噂を覚えているでしょうか?スティーヴンスは噂を否定しましたが、インディアナ大は本当にオファーをしていたようです。

この時に、彼はすでにエインジの後任の筆頭候補だったようです。

オーナーのグラウスベックも、経験がないスティーヴンスのプレジデント就任には問題がなさそうでした。グラウスベックがスティーヴンスをプレジデントに雇うことにしたことについて、スティーヴンスの知性とバスケの才覚のほかに、このチームのことを誰よりも知っているのが理由だったと言っていました。

グラウスベック:「エインジとスティーヴンスは一緒にロスターの決断を何年もしてきて、今のチームにはスティーヴンスのDNAと指紋がつけられている。エインジも後任にはコーチとコーチ側の話をわかる人がいいと言っていた。ブラッドが後任になるのは自然なことだ」

(グラウスベックとダニー・エインジ Photo by Garrett Ellwood/Getty Images)

スティーヴンスにはフロントの経験もないですが、未経験からプレジデントになった人たちも少なくありません。パット・ライリー、アイゼィア・トーマス、マジック・ジョンソン、クリッパーズのローレンス・フランク、そしてダニー・エインジらがいます。

全員が成功している訳ではありませんが...(ラリー・バード、ケヴィン・マケール、スティーヴ・カーらもいますが、突然仕切りを任せられた訳ではなく、プレジデントやGMになる前にアドバイザーらの役職でフロントに関わっています)

特にダニー・エインジはサンズでヘッドコーチをした後にセルティクスのエグゼクティブに就任したので、まさに今のスティーヴンスのようです。

しかし、スティーヴンスには優勝経験がありません。上で述べた選手へコーチあがりのエグゼクティブたちはローレンス・フランク以外にリングがあります。リングなしで選手たちや球団内からのリスペクトを得ることができるのかはこれからの実績で示すしかありません。ライリーのようにリングを見せびらかして勧誘する方法は取れませんね(笑)。

むしろ、優勝経験とエグゼクティブ経験がないにも関わらず、スティーヴンスをプレジデントにしたグラウスベックは、彼の頭脳を相当買っているということです。

キャップやエージェントなどの関係の構築などは、今のGMのマーク・ザーレンやエインジの息子のオースティンにフォローしてもらいながらやっていけば良く、それらが一通り理解できればスティーヴンスは一流のプレジデントになれる逸材だと期待されているのは間違いないでしょう。

また、セルティクスを買収したばかりのグラウスベックは、すでにフロント経験のないダニー・エインジを雇っているので、彼にとって経験のないプレジデントは問題ではないのでしょう。経験よりも「セルティクスのDNA」を理解していることの方が重要なのかもしれません。

(グラウスベックとブラッド・スティーヴンス)

これでスティーヴンスがこれからのセルティクスをどうするかがぜん興味が出てきました。このオフシーズンはドラフトをはじめ、彼の意思決定は大きな注目を浴びるでしょう。

課題は、ケガしがちなケンバ・ウォーカーの残りの約70.6億円の契約、トリスタン・トンプソンの約9.7億円の契約をどうして行くか、それにトレードに使いやすいスマートの約14.3億円の契約をどうしていくか、タックスをどうするかでしょう。彼が選手のことを本当はどう思っていたのかもわかってしまいそうで、ドキドキしますね。

エインジは就任してすぐにファンのお気に入りのアントワン・ウォーカーをトレードし、「トレーダー・ダニー」と呼ばれていました。スティーヴンスはスマートをトレードしたりするのでしょうか。

それに自分の後任のヘッドコーチを誰にするのかも気になります。セルティクスのフロントやラリー・バードとも仲が良いESPNのジャッキー・マクミランはチャンシー・ビラップスを推していました。彼の存在感(カリスマ感)は素晴らしく、みんなが彼の話を聞くそうです。彼がESPNに出演していたのもそれを気に入っていたディズニーの元CEOのボブ・アイガーの勧めだと言っていました。

現在、ヘッドコーチ候補に名前があがっているのは:

・スティーヴンスのアシスタントをしていたジェローム・アレンやジェイ・ララナガ。
・セルティクスの元アシスタントで現デュークの女子チームのコーチのカラ・ローソン
・シクサーズのアシスタントのサム・カセル
・クリッパーズのアシスタントのチャンシー・ブラップス
・ロイド・ピアース(元ホークスのHC)
・デヴィット・ヴァンタープール
・レイカーズのアシスタントのジェイソン・キッド
・ネッツのアシスタントのイーメイ・ウドーカ
・スパーズのアシスタントのベッキー・ハモン
・バックスのアシスタントのダーヴィン・ハムとチャールズ・リー
・ミシガン大のジュワン・ハワード

エインジに話を戻すと、彼はこれで引退するという訳でもなさそうです。「未来はどうなるかわからない」と言っています。「今はなんの計画もない。…私のゴールはブラッドをドラフトに向けて早く準備させることだ。前に言っていたように、私たちのみんながこの転換を助けて、できるだけセルティクスを良いポジションにつけることができる。そして、この先のどこかで未来を考える」

今のところ、故郷のオレゴンのブレイザースのフロントに入るのではないかと噂や、親友のジャズのオーナーのライアン・スミスの元に行くのではないかと言われています。

特に、スミスとの関係は深く、2人ともオレゴンのユージーン市で育ち、ユタのBYUに通っていました。また、エインジの息子のタナーがユタ州の2017年下院議会選挙で第3選挙区から立候補しましたが、その時の最大の支援者がスミスでした。今タナーはユタ郡委員会を務めています。

このような深い関係から、ジャズのシニア・アドバイザーになるのではないかとも言われています。

エインジが次はどうするのかはまだわかりませんが、大好きなゴルフを楽しむ時間はたっぷりありそうです。


参考サイト:‘Banner 18 or die trying’: Brad Stevens’ massive challenge with Celtics in replacing Danny Ainge / Opinion: For Danny Ainge, Brad Stevens and the Celtics, it was just time to move on

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