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ウィザースの5チーム・トレード Part 1:ウェストブルック篇

レイカーズがウィザーズからラッセル・ウェストブルックをトレードで獲得し、レブロン、アンソニー・デイヴィス、ウェストブルックのビック3が誕生しました。

(Image created by SI)

このトレードの絵を描いたのはレイカーズでもウィザーズでもなく、ウェストブルックだったそうです。なぜウェストブルックはレイカーズに行きたかったのでしょうか。ESPNのラモナ・シェルバーンの記事を元にトレードで何が起きていたのか紹介します。

ウェストブルックの2年間

ロス出身のNBA選手たちは地元が大好きで、ESPNのザック・ロウによると他の都市で生まれ育った選手たちよりかも家族や友人たちの前でプレーしたがっている選手が多いそうです。そして、それはラッセル・ウェストブルックも同じで、彼も生まれ故郷のロスに戻りたがっていたそうです。そして、このトレードの間接的なはじまりは2年前まで遡ります。

2019年、カワイ・レナードがラプターズでNBA優勝した後、クリッパーズに行くかラプターズに戻るか考えていてフリーエージェンシーが止まってしまったのを覚えているでしょうか?

その時、レナードは他のスター選手と一緒じゃないとクリッパーズには行かないと言って他のスターをリクルートしていて、ケヴィン・デュラントやジミー・バトラーに電話をしてクリッパーズ行きを誘っていたと言うレポートもありました。

サンダーにいたウェストブルックはそれを見て、レナードと組んでクリッパーズに戻ろうとしたそうです。ウェストブルックにとって、このクリッパーズとレナードの状況は自分がロスに早く戻るチャンスでした。

ウェストブルックはその件について話し合うためにレナードに電話をしたそうです。しかし、レナードはウェストブルックの電話に出ませんでした。レナードは、じっくりと考えた後、ウェストブルックのレイカーズ行きの希望を利用することにしました。

レナードは当時ウェストブルックのチームメイトだったポール・ジョージに電話して、自分はウェストブルックではなくジョージと組みたいと伝えたそうです。感じとしては、「お前のチームメイトのウェストブルックがお前をオクラホマに残してロスに戻りたがっている、だからオレと組もう」と言うような内容だったようです。

同じくロス出身のジョージも、ペイサージ時代からロスに戻りたい発言をしてきていて、レイカーズへのトレードの噂もありました。

ジョージは、その前年にウェストブルックと一緒にサンダーに残る決断をしてサンダーと再契約していましたが、ここでレナードと一緒にロスに行く選択肢も出てきました。ウェストブルックに忠誠を誓っても、彼に出て行ったらオクラホマシティーにひとり取り残されるのは自分です。ジョージも自分の夢とチームメイトとの板挟み状態になり悩んだ事でしょう。

それから1週間も経たないうちに、レナードとジョージはクリッパーズへ行くことを決めました。

レナードがなぜウェストブルックを選ばなかったのは明かされていませんが(というかレナードからは決して話さないでしょう)、声をかけた選手たちを見ると、レナードはリーグでも貴重なスターウィングと組みたかったように見受けられます。

そして、その後ウェストブルックはそれからの2シーズンヒューストンとワシントンDCで過ごし、シーズン毎にロスから遠ざかってしまっていましたが、それでもロスへの帰還をあきらめることはなかったそうです。

2021年、レイカーズのオフシーズン

レイカーズはこのオフシーズン、レブロンのまわりでプレーできるシューターを強化しようとしていて、キングスのバディー・ヒールド獲得に向けて動いていましたそうです。ヒールドはシュート能力も高く、昨シーズンのスリーメイドとスリーアテンプトは共にカリーに次いでリーグ2位です。そのため、ヒールドはレブロンを中心としたチームにフィットすると考えられていました。

レイカーズは、ヒールドの22.5億円の契約にサラリー・マッチするため、モントレズ・ハレルが約9.7億円のプレーヤー・オプションにオプトインするのを待っていました。(想定では、クズマとハレルをヒールドとトレードすると言われていて、ハレルはすでにサクラメントの家を見つけはじめていたそうです)。7月29日には、レイカーズはハレルがオプトインすればトレードされるとのレポートが出ていて、キングスとのトレードはすでに規定路線だったようです。

それが変わったのが、7月30日のNBAドラフトの日でした。

その日の早くに、レイカーズのGMのロブ・ペリンカの元に1本の電話がかかってきました。ウィザーズのGMのトミー・シェパードです。要件はウェストブルックのトレードでした。

ウェストブルックの決断

ウェストブルックは、オフシーズンもビールとよく連絡を取り合っていて、2人はウィザーズでの未来をどうするか話していたそうです。2人ともお互い一緒にプレーするのは楽しいけれど、同時に現在のチームではハイレベルな戦いをするのは厳しいと心配していたとのことです。

また、来年FAになれるビールのトレードの噂も多く出回っていました。仮にビールがチームに残ろうとしても、チームの方がビールにタダで出て行かれてしまう前に彼をトレードに出して少しでもアセットを得ようとするかもしれません。ビールがチームに残る保証も100%ではありません。

ウェストブルックは、これまで相棒のスターから取り残されてきました。サンダーではケヴィン・デュラントに出ていかれ、ロケッツでもジェームズ・ハーデンが移籍したい要望を出していました。ウェストブルックはジェームズ・ハーデンに取り残される前に、エージェントとトレードを模索し、ハーデンよりも先にロケッツを出て行くことに成功しました。

ウェストブルックはさいしょ、ビールには自分の未来について好きなだけ時間をかけて考えればいいと思っていたそうです。しかし、レイカーズのヒールドのトレードが加速して行くのを見たウェストブルックは焦りました。

ウェストブルックは、もしレイカーズがヒールドのトレードをしてしまえば、レイカーズには自分をトレードするアセットがなくなると理解していました。そして、レイカーズのドラフト22位指名権もウィザーズとのトレードに使えそうです。

ウェストブルックにとってこれは見逃す事はできないチャンスでした。もしかしたら、これがレイカーズへ行き、故郷で優勝を狙うという夢の最後のチャンスになるかもしれません。ウェストブルックがトレードに動きました。

2021年、ウィザーズ

ウィザーズは昨シーズン、コロナがチーム内でアウトブレークしてしまい、コロナに苦しめられました。そのため選手たちもチームも本調子を出せずに、シーズン後半にやっと盛り返してプレーイン・トーナメントに滑り込むことができました。そのため、ウィザーズは今シーズンもウェストブルックとブラッドリー・ビールのコンビにもう一度チャンスを与えて、どれだけ勝てるのか見てみる方針を固めていたそうです。

しかし、ドラフトの朝、ウェストブルックと彼のエージェントがウィザーズにトレードの相談の電話をかけて状況が変わります。その電話は、「ウェストブルックはあと2シーズンをウィザーズでプレーするのもハッピーだけど、もしレイカーズとのトレードが両チームにとって良いものになるようであれば、ウェストブルックは故郷で優勝を狙いたい」といったような内容だったそうです。

ウィザーズのGMのトミー・シェパード:「ラスと心から話をした… レイカーズとのトレードのチャンスがあるならば、行くべきだ。彼の殿堂入りのキャリアと彼が私たちにしてくれたことを見れば、それがウィザーズのためになるならば、私が彼を助けるのは当然のことだ」

ウィザーズはウェストブルックの希望を叶えるために動き出します。GMのシェパードがレイカーズのGMのペリンカにウェストブルックのトレードを持ちかけました。

レイカーズのオフシーズン II

7月30日、レイカーズはウィザーズからのウェストブルックのトレードオファーを受けてからどうするか検討しました。

ウェストブルックはレブロンとADにフィットするか?シュートのないウェストブルックはレブロンのチームに合うか?

ウェストブルックはキャリア・シューティングが43.7%で、レブロンがヒートとキャブス時代にチームメイトだったウェイド(48%)とアーヴィン(47%)よりも悪く、やはりシュートのなさが気になるところです。ただ、彼はこの5シーズンの内4シーズンで平均トリプルダブルを達成していて、昨シーズンはアシスト11.7とリーグトップです。

レイカーズにとって、このウェストブルックのアシスト力が重要な要素だったようです。

昨シーズンが終わった時、レイカーズはプレーメイカー(レブロン以外の)が必要だと評価していたようです。レイカーズは、デニス・シュルーダーにその役を担って欲しかったそうですが、彼のプレーオフでのプレーはその域に達していませんでした。そのため、レイカーズはこのオフシーズンにカイル・ラウリーやクリス・ポールらのエリート・プレーメイカーを補強候補に入れていたそうです。

しかし、キャップルームのないレイカーズにとって彼らを得るにはS&Tしかなく、S&Tで彼らを得ると今度はハードキャップになってしまい、現実的にはハードキャップ以内にサラリーを収めることが厳しい状況でした。

また、レイカーズにとって、レブロンがウェストブルックのトレードにどう思うかも重要です。レブロンからヒールドではなく、ウェストブルックのトレードの了承を得なくてはいけません。

ウェストブルックはすでにこと時はレブロン・ジェームズと一緒にプレーすることについて話をしていたそうです。彼らは一緒にワークアウトし、ジムとコート場でお互いをプッシュし合うといったようなことを話していましたとのこと。

レイカーズは、レブロンとADがウェストブルックのトレードを歓迎したので、ウェストブルックのトレードを選びました。

レイカーズ、ウィザーズ、ペイサーズの3チーム・トレード

ドラフト当日、ウェストブルックはウィザーズからレイカーズにトレードされ、レイカーズはサラリーマッチのためにクズマ、ハレル、KCP をウィザーズに出します。ヒールドよりもウェストブルックの方がサラリーが高いため、ヒールドのトレードに出そうとしていたパッケージにKCPが加わることになりました。ここは本来ならPGを出したウィザーズにはS&Tでカルーソやシュルーダーを渡せば良かった訳ですが、選手たちが拒否した(特にもっと多くのサラリーを望んでいたシュルーダー)のか、ウィザーズが拒否したのかKCPがトレードされました。

トレードの内容は:

レイカーズ

  • ラッセル・ウェストブルック(約44.2億円)

  • 2024年の2巡目指名権 ウィザーズ/グリズリーズの最低順位(via ウィザーズ)

  • 2028年のウィザーズの2巡目指名権(via ウィザーズ)

ウィザーズ:

  • カイル・クズマ(約13億円)

  • KCP(約13億円)

  • ハレル(約9.7億円)

  • アーロン・ホリデー(via ペイサーズ)

  • 31位指名権、アイゼィア・トッド(via ペイサーズ)

  • キャッシュ(via ペイサーズ)

合計:約35.7億円

ペイサーズ:

  • 22位指名権のアイゼィア・ジャクソン(via レイカーズ)

こうしてラッセル・ウェストブックは2年かけて念願のロスへの移籍を手にしました。ウェストブルックはレイカーズでの会見で、「これはシュールだ、まだ実感がわかない。祝福されている。私のような人間にとってそれらの夢は実現されないので、多くのことが言葉にならない」と喜んでいました。

背番号も「0」に復帰です。

これで残すは「優勝」のみ!故郷でのウェストブルックのプレーに期待がかかります。

2人も「アルファ」がいるとチームが機能しないケースもありますが、このレブロンとウェストブルックはハードワークと規律でそれを乗り越えていけそうです。また、ウェストブルックとレブロンの2人とも体のコンディション維持にプライドをかけていてるほどプロ意識が高く、ジムにも朝早くに行くタイプなのもプラスに作用するのではないでしょうか。2人は思っているよりもチームメイトとしてフィットするかもしれません(レブロンがボールを持たずにウェストブルックのためにスペースをつくるとか)。

そして、このトレードはここで終わらず、ネッツとスパーズを絡めた5チーム・トレードに発展して行きます。

次回はトレードの詳細に迫る「ウィザーズのチーム・トレード Part 2:ウィザーズ篇」です。


参考サイト:How two phone calls two years apart led to the Los Angeles Lakers landing Russell Westbrook

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