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ケヴィン・デュラントの最終通告

ケヴィン・デュラントがネッツのオーナーのジョー・サイとロンドンで直接会った時に、自分を取るかヘッドコーチのスティーヴ・ナッシュとGMのショーン・マークスを首にするか決めてくれと直談判したことをThe Athleticのジャムズ・チャラニアがスッパ抜きました。その記事のタイトルもショッキングなもので「ケヴィン・デュラントがネッツのオーナーに、彼をトレードするかスティーヴ・ナッシュとショーン・マークスを首にするか伝えた:ソース」でした。

かつてマイケル・ジョーダンが公にGMのジェリー・クロースを首にすると言った事がありましたが、オーナーに対して自分に残って欲しければヘッドコーチとGMを首にしろと究極の選択を迫った選手は今までにいないのではないでしょうか。私はKDはナッシュと仲が良いと思っていたので、ESPNのブライアン・ウィンドーストにならずにはいられませんでした。

「なぜKDはそうしたんだ?」

そして、その会話が本当にあったことを裏付けるように、ジョー・サイはそのレポートが出てきてからすぐにツィッターでフロントオフィスを支持する投稿をしました。

また、シャムズは、KDがサイに「チームの方向性を信じることができない」と伝えたこともレポートしています。

今回はなぜKDは究極の選択をオーナーにつきつけたのか、これまでの経緯を踏まえながら解説していきます。

これまでの経緯

まずはKDのトレード要求から最後通告に至るまでの経緯を簡単に振り返りたいと思います。

ネッツは、史上最高スコアラーとも言われているKDのトレードリターンは史上最高レベルのものでなくてはならないと考えているようです。そのため、他チームとのトレード交渉でもオールスタークライスの選手+できる限りの多くの指名権を要求していると言われていました。ネッツはKDのトレード後もタンクからの再建ではなく、勝てるチームをつくりたがっているのは間違いありません。

しかし、そのような高いネッツの要望に応えるようなチームは現れそうにありません。この小康状態が続く理由としては、以前の記事で紹介しましたが、むやみに高い金を払ってもまたKDからのトレード要求があるかもしれない事や、今はネッツがふっかけているフェースで、相手チームもネッツの要求がさがるのを待っている等の要素があると思います。それに加え、SNYのイアン・ベグリーが、どのチームもこのトレードで3チーム目や4チーム目になってネッツを助けるつもりはないとレポートしていました

またリーグ内では、ネッツは実はKDをトレードしたくないため、そのように高いトレードリターンをキープしているのではないかと言っているエグゼクティブたちもいるそうです。ネッツはKDにキャンプに来てもらい、ベン・シモンズ、ジョー・ハリス、パティー・ミルズ、新戦力のTJ・ウォーレンやロイス・オニールらがいる新しいロスターを気に入ってもらうつもりなのでしょうか。それを裏付けるかのように、ESPNのザック・ロウが、「ネッツはまだトレード要求を取り下げることをあきらめていない」とレポートしています。そのためか、ネッツにKDのトレードを焦っているような様子は見られませんでした。

こうしてみると、トレードがなかなか進展しないことに焦ったKDサイドが、現状を打破するためにサイに最終通告をつきつけたように見られます。

ウィンドーストは最終通告の内容について、「私が知っている限り、彼はシーズンが終わった時にこれをネッツに言っていなかった。トレード要求をした時にもネッツにこれを言っていなかった。だから今それをやるのは彼の戦略だ」と言っています。

マーク・ステインは、KDはサイが最終通告には屈しないことをわかっているが、「事を荒立ててネッツが高い要求を下げるように画策したというセオリーがある」とレポートしていました。

この最終通告でネッツはKDのもくろみ通り焦りはじめて、トレードリターン価格を下げたのでしょうか?

最終通告後のネッツ

このミーティングの結果どうなったかと言うと、ネッツからすれば何も変わっていないようです。

ウィンドーストによると、「ネッツのケヴィン・デュラントを巡る動きはまったく変わっておらず、今だにトレード交渉に切迫した様子は見られない」そうです。

サイもKDのトレードについては「ネッツにとってベストのことをする」と明言しています。他チームに自分の資産をなるべく高値で売るために強い姿勢を見せていく必要があるのですが、このサイの発言の意図はちょっと違うようです。

ウィンドーストはそのスタンスについて次のように言っています。「サイは”我々はネッツのためにベストの決定をする”と言っている。私がそれを解読してあげよう。彼は基本的にこう言っている。”KDが何をようと、私たちはトレードの見込みを変えることはない、もしトレードされなければ、4年の契約の義務を果たしてトレーニングキャンプにレポートするんだ”」

また、ウィンドーストは「ネッツにプレッシャーをかけるためにやったことだとは思うが有効だったようには見えない。私はチームと話しをしたが、彼らはこれは彼のトレードバリューを高めていないと思っている。彼らはこれで彼のトレードバリューは傷ついたと思っている」

この最終通告はネッツだけではなく、他チームにも影響を与えています。他チームはネッツが置かれている微妙な状況を見て、トレードオファーを減らしてくるでしょう。これからさらにネッツとKDの状況が悪化すれば、彼らはKDをより安く獲得できるようになるかもしれません。KDがトレードしようとして動けば動くほど、ネッツのレバレッジがなくなってきて、他チームから足元を見られてしまいます。しかし、ネッツがリーグに送っているシグナルは最終通告は「問題ない」です。むしろこのような騒動に動じない姿勢すら感じられ、ネッツには当初のプラン通りに作戦を実行しているかのような冷静さと計算高さも感じられます。これまでカイリーやハーデンを相手にして鍛えられたのでしょうか?笑 

なんとかネッツから出たいKDからしてみれば、思い通りにならなかったと感じているかもしれません。結果、KDは自分で自分のトレードをやりにくくしたようにも見えます。

また、巷では、このKDの最終通告について、ネッツはマークスとナッシュを首にしてKDを選ぶべきだと言っている人たちがいます。KDの代わりはいませんが、マークスの代わりの候補はたくさんいるというのがその理由です。しかし、彼らはマークスを誤解しています。なぜならマークスはただのGMではないからです。

実はマークスにはGM以外の役職にも就いていて、それはバスケットボール・オペレーション部門のVPやプレジデントやCFOよりも偉い役職の「オルタネイト(副)・ガバナー」です。マークスはなんと球団のナンバー4なのです。マークスは前のオーナーのプロホロフによって雇われましたが、サイは彼にオルタネイト・ガバナーの役職も与えるほど信頼を寄せているようです。このような$3Bの組織のトップエグゼクティブたちが選手の要求に対して折れるとは考えづらいです。KDの要望は通ることなく、ナッシュもマークスも首にならず、KDもトレードされないというオチになのではないでしょうか。これでサイがマークスを首にしたら本当に驚きです。

お互いにいろいろな思惑があると思いますが、最終的にこのKDとネッツの関係はここに落ち着きます:ネッツはKDとの契約があと4年も残っている

KDから究極の選択を突きつけられても、ネッツは特段焦る必要もないのです。

そうなると問題はKDが次にどうするかです。ベン・シモンズのようにホールドアウトしてシーズンを無給で全休するとか、マーク・ステインのレポートで出てきたように引退するなどの可能性が考えられますが、ポジティブな選択肢は残されていません。

それでもKDは引き続きネッツからのトレードを模索していきそうです。だとすれば、この最終通告は終わりではなく、ネッツへの揺さぶりのはじまりではないでしょうか。なにせKDのまわりはトレード要求のノウハウの宝庫です。ベン・シモンズのようにトレーニングキャンプ~シーズンをホールドアウトしたり、ハーデンのようにやる気のなさを見せつけたり、カイリーのようにトレードしなければシーズン中に膝の手術をしてシーズンを休むと脅すこともできます。

次にKDがネッツにリアルにプレッシャーをかけられるのがトレーニングキャンプです。KDはバスケ愛が強すぎるため、ホールドアウトはしないだろうと言われていますが、どう動くのでしょうか。ウィンドーストの8/19の最新の情報だと、「私が集めた情報だと、彼とネッツはトレーニングキャンプで会うことにしているようだ… 現在のところ、ネッツは再挑戦したがっていて、KDがそれに合意することを希望していると思う。彼らのトレード交渉やその要求の仕方を見ると、ネッツはKDをトレードしたがっていないと他チームに思わせている。ネッツはこのチームを戻したがっている、KDがそれに乗るかはトレーニングキャンプでわかる」と言っています。

たとえKDがホールドアウトせずにキャンプに顔を出したとしても、2018年にジミー・バトラーが練習で暴れてウルブ相手に早くトレードするように迫ったことがあるので、安心はできませんが…

ただ、ウィンドーストの見立ては正しいように思います。

現在トレード交渉のレバレッジは、「KD <<<ネッツ < 他チーム」になっています。昨シーズンのベン・シモンズのトレード交渉もそうでしたが、選手にレバレッジがなく、他チームのレバレッジが高い場合はトレード進まない傾向にあります。The Athleticのサム・エイミックによると、2010年からこれまでトレード要求をした選手がトレードされた平均は2.9ヶ月で、ベン・シモンズのトレードは5.5ヶ月かかっているそうです。KDはまだ1.5ヶ月なので、まだまだトレードまで時間がかかりそうです。

KDは実際に新チームがどう機能するか見てからどうするか決めても良いと思います。ベン・シモンズを5にして、カイリー、カリー、ハリス、KDのラインアップがどうなるのか見てからでも遅くありません。個人的にはすごく見てみたいラインアップです。ひょっとしたらすごく機能してイースト上位に食い込めるかもしれません。それでダメだったら、ハーデンモードに入るなり、ジミーモードに入って暴れるなりしてトレード要求をしても良いと思います。または逆に素晴らしいプレーを見せるという選択肢もあります。リーグ中に昨シーズンのケガの前のようなプレーがまだできることを見せられれば、ネッツが希望するハイリターンに応じるチームが出てくるかもしれません。

ただ今は、KDをキープしたがっているネッツに対してKDがどう出るかにかかっています。ジミーやハーデンのようにキャンプやシーズン中にトレードをプッシュし続けるのか?それとも2007年にトレード要求をしたコービーのように丸く収まるのか?

ウィンドースト:「KDはトレードを頼んでノーと言われている… 彼はコーチを首にするように頼んだ。彼はGMを首にするように頼んだ。彼はノーと断られ続けている。彼はそれらの”ノー”を受け入れて、トレーニングキャンプに現れるのか?私たちはそれまで待ってどうなるか様子を見るしかない」

KDのトレード希望先候補(8/19最新版)

ここから先はKDの情報更新になります。まずはKDのトレード希望先から。

なかなかトレードが決まらない中、KDのトレード希望先にも変化が出てきたようです。これまで、サンズ、ヒートがあげられてきましたが、ベグリーによると、KD本人はセルティクスとシクサーズも候補先にあげてきているとのことです。セルティクスに関しては、NYのイアン・バグリーによると、KDはマーカス・スマートとプレーしたがっているとも言われています。

Boston Globeのアダム・ヒメルスバックによると、ネッツはKDのトレードでジェイソン・テイタムとジェイレン・ブラウンを得ようとしたが、もちろんその話はどこへもいかなかったそうです。その後、ネッツはブラウンとマーカス・スマートと1巡目指名権を中心としたパッケージを求めたそうですが、セルティクスは断ったそうです。現在のセルティクスのオファーは、ジェイレン・ブラウンとデリック・ホワイトと指名権のままのようです。ロバート・ウィリアムスもオファーはしないそうです。

トレード噂に巻き込まれたブラウンに関してですが、現在、ブラッド・スティーヴンスとイーメイ・ウードカはいつもブラウンと連絡を取って現状を報告しているそうです。ブラウンは状況に理解を示しているようだとのことです。

このトレード交渉をリークしたのはネッツではないかと言っている人もいるようです。エイミックによると、「あるソースは、ネッツは交渉の最低ラインとしてセルティクスがセカンド・ベストプレーヤーを出した事実を使っていると言っている。その意味は、もしデュラントのトレード交渉で二番目のベストプレーヤーを交渉のテーブルにあげるつもりがないなら、みんなの時間を無駄にするのはやめて、このレースから去るべきだ」というような状況のようです。

シクサーズに関しては、ネッツが欲しがるような選手がいるか疑問ですが、最近KDはハーデンとロンドンとバルセロナで一緒に遊んだりワークアウトしたりしているようなので、そもあたりも関係していそうです。

サラリーマッチ的にはトバイアス・ハリスの$37.63だけでもストレートでトレードできますが、シクサーズは今シーズンハードキャップなので、KDの$44.1Mの契約と同額の契約をトレードをしなければトレードが成立しません。ハリス+タイリース・マキシィ、マティス・サイブル、ジェイデン・スプリンガー(後にウェイブ)、ポール・リードの$44.6MでKDのトレードが可能です。エンビード、ハーデン、KDのBIG3はおもしろそうです。

ネッツ的に現在ベストなのは、オールスターだったジェイレン・ブラウンやブランドン・イングラムでしょう。ブラウンは契約延長はしないので、フライトリスクがありますが… また交渉の一環かもしれませんが、ペリカンズはイングラムを出したくないとNola.comのクリスチャン・クラークがレポートしています。

また、ラプターズは引き続き、スコッティー・バーンズをパッケージには含めていないようです。

KD/カイリーに関する新情報

またKDやカイリーに関する新たな情報が出てきたのでリストにして紹介します。

  • ナッシュをヘッドコーチにしたのはKDではなくショーン・マークスだった。KDがHCをナッシュにしたいと言いはじめた訳ではなさそうです。

  • ネッツはKDに相談することなく、サンダー時代から仲が良かったアシスタントコーチのアダム・ハリントンを解雇したそうです。これまではそんなことはなかったそうです。NYポストのブライアン・ルイスはこれについて「簡単なことからリレーションシップが壊れる。彼と親しい誰かを首にして、それについて会話がない」と話しています。

  • ネッツのアシスタントコーチたちは、ジャック・ボーン以外全員がKDと関係があったそうです。今後はイゴー・ココスコヴのように、ナッシュの希望するコーチたちを集めて行く方針に変えたのかもしれません。

  • KDはハーデンのトレードで多くをトレードしすぎたと信じている

  • 昨年の夏、KDはワクチン摂取をしたくなかったという噂がある。またサイがNY市長にワクチン摂取していない選手をホームでもプレーできるようにロビー活動を十分しなかったことに失望したとも言われています。

  • フォックス・スポーツのリック・ビュウカーによると、昨シーズンの途中でネッツはカイリーをトレードしようとして、KDがそれはないと言って止めていたそうです。ビュウカー:「今でも彼らはまだグッドフレンドだと聞いた。KDは彼のことをチームメイトとして前のように評価していないのかもしれない。それはわからない」ビュウカーによると、カイリーは1シーズンに60試合以上出場しなくても良く、2連戦のどちらかに出場しなくて良い契約を求めていたそうです。ジョー・サイはカイリーに対してすぐにマックス契約延長を取り下げて、彼には厳しい対応を見せているとの事。これに対してカイリーはツィッターで「メディアのサブコンシャスの思考と感情のコントロールを打ち破る準備ができているなら、私のプラットフォームのひとつでそれについて話そう。私たちA11Evenのトライブ(部族)は真実と本当に起きていることについて会話をすることを愛している。パラダイムシフトへようこそ」と返していました。

  • マーク・ステインによると、「ネッツはカイリー・アーヴィンのトレードで未来のアセットだけではなく今勝てる選手を求めている。レイカーズはネッツにラスの$47.1Mの契約とふたつの1巡目指名権をオファーしたが、ネッツは断ったと聞いた。そのため3つ目のチームが必要になっている」そうです。

  • KDのパートナーのリッチ・クレイマンが最終通告の前にBillboardで球団を仕切りたいと話していました。これもKDがGMを首にしろと言っていたのと関係がありそうだとの噂もあります。クレイマン:「いつかNBA球団の一部になりたい。オーナーシップでもチームのプレジデントでも、KDが引退した後で彼とそうするのでもいい。レオン・ローズとボブ・マイヤーズは素晴らしい仕事をしている。私は一流の球団を運営したいか?Why Not?」


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