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ジョッシュ・プリモの公然わいせつ疑惑

ジョッシュ・プリモがスパーズから突然ウェイブされた理由は、元スパーズの女性セラピストや他の女性たちに下半身を露出した容疑が出たためのようです。プリモはそのセラピストの女性から訴えられ、警察も調査をはじめました。ちょっと驚きですね。今回は何があったのか時系列でまとめていきたいと思います。

10月28日

スパーズが突然2021年のドラフト12位指名のジョッシュ・プリモ(19)をウェイブしました。その3週間前ごろに彼の2023-24シーズンの$4.3Mの契約を保証していたばかりなので、プリモのウェイブのニュースには皆が驚きました。スパーズ・スポーツ&エンタテイメントのCEOのRC・ビュフォードは声明で「長期的にこの決定が球団とジョシュアの両者にとって最高の利益にかなうことになることを望んでいる」とだけ言っていて、具体的な理由の言及を避けています。

&スコープのマーク・J・スピアーズさんは、スパーズのようなスモールマーケットのチームがロッタリー指名の選手を何もなくただ捨てる事はないので、コート外で何か有害な事があるはずだと予想していましたが、この時はまさかプリモが公然わいせつの疑惑が出るとは思っていませんでした。

スパーズの声明から数時間後、プリモはウェイブになった事に対しESPNに「みんなが今日の発表に驚いているのは知っている。私は以前から苦しんでいるトラウマに対応するために助けを求めていて、この時間を利用してより完全にメンタルヘルスの治療に専念する。将来、これらの問題について話すことができるようになり、同じように苦しんでいる他の人を助けることができることを願っている。現時点ではプライバシーに感謝する」と声明を出しています。

スパーズのヘッドコーチのグレッグ・ポポヴィッチは、スパーズが声明をリリースした直後に会見に現れて「私たちはあなたたちに話した事を貫く」とだけ話し、コメントを控えました。

ちなみに、プリモはこれで1巡目指名権選手としてはNBA史上最速でウェイヴされた選手になってしまいました。その日数456日。2位はケンダル・マーシャルで483日だそうです。

刑事事件に巻き込まれたなら様子を見るはずですし、鬱などのメンタルならメンタル疾患と発表するはずなので、この時の注目は、スパーズはなぜ$4.3Mを保証してからすぐにロッタリー指名選手をリリースしたのかでした。

(*日付はすべてアメリカ時間)

10月29日

ESPNのラモナ・シェルバーンとWojが、スパーズがプリモをウェイブしたのは女性たちに下半身を複数回露出した疑いがあるためだとレポートしました。

その後、The Athleticのシャムズ・チャラニアが、その女性のひとりはスパーズの元従業員で、彼女は弁護士のトニー・バズビーを雇ったとレポート。

そして弁護士のトニー・バズビーが、プリモから下半身を複数回露出したと主張しているスパーズの元従業員の女性から雇われた事をESPNに明かしました。

バズビーは2021年にNFLのクォーターバックのデショーン・ワトソンへの性犯罪訴訟で24人以上のマッサージセラピスト女性たちを弁護している事で知られています。ワトソンの容疑は結構エグいので興味ある方は調べて見てください。また、バズビーは2021年の10月に起きたアストロワールドで10人が窒息死した悲劇で、トラビス・スコットに対して$750Mの訴訟を起こして和解を勝ち取った事で知られています。

(トニー・バズビー:Photo by Bob Daemmrich/The Texas Tribune)

下半身露出はちょっとななめ上過ぎて信じられませんでしたが、セレブ相手に訴訟をしている弁護士の登場も急展開です。

10月30日

10月31日

各メディアがその元従業員が誰か探っていたであろうその時に、それを真っ先にレポートしたのはWojでもシャムズでもなく、サンアントニオ・エクスプレスニュースやKENS 5の地元メディアでした。バズビーの法律事務所が彼らに声明を送ったのだそうです。

その声明の中で、プリモから露出された女性の名前が明かされました。彼女の名前はDr. ヒラリー・コーセンで、スパーズではスポーツ・セラピストとして働いていたようです。また、声明でバスビーがヒューストンで11/3に記者会見をひらくと明かされました:「その記者会見で、トニー・バズビーはDr. ヒラリー・コーセンと他の女性によるプリモに対する訴えについて話をする」

おなじく10/31にはプリモがウェーバーからクリアされてフリーエージェントになりました。しかし、このような容疑がかかったプリモをピックアップするチームは出て来そうにありません。裁判が終わるまでの様子見でしょうか。ナッシュ解雇やカイリーの反ユダヤ主義騒動や停職処分中のウドーカを雇おうとしているネッツにちょうどいい選手だとジョークをいくつか聞きました。

11月3日

そしてバズビーが先手を打って記者会見を行いました。コーセンも出席しています。その会見の主なポイントをあげていきます。

(記者会見でのDr.ヒラリー・コーセン:右端のブロンドの女性。手前の男性はトニー・バズビー弁護士。Photo by Melissa Phillip)
  • コーセンはスパーズに2021年の9月にチーム心理学者として雇われた。

  • プリモはDr. ヒラリー・コーセンに合計9回下半身を露出。最初は2021年の12月のカウンセリング中だった。

  • コーセンはスパーズにその事を2022年の1月にマネジメントに報告。

  • 同時にその件でGMのブライアン・ライトに会おうとするも、何度も予定をプッシュバックされる。

  • 2022年の3月にやっとライトに会ってプリモに対して懸念を伝えた。

  • 2022年の3月にコーセンは再びプリモとセッションをするように言われ、そこでまた性器を見せられた。

  • 2022年の4月にコーセンはライトに再び会って、スパーズがプリモの行為に何もしない事へのフラストレーションを伝えた。

  • 2022年の5月、コーセンはスパーズの法務部と会い、コーセンはプリモと接触を持たないように伝えられた。

  • 2022年の6月、コーセンは、スパーズの法務部門からグレッグ・ポポヴィッチもプリモの件については知っていると伝えられた。

  • 2022年の6月、スパーズはプリモを使って、今シーズンの新しいジャージースポンサーシップを披露した。

  • 2022年の7月、コーセンはスパーズの法務部門からNBAサマーリーグには参加しないように伝えられた。

  • 2022年の8月、コーセンの契約は更新されずに辞めさせられた。

  • プリモは7月のラスベガスでのサマーリーグでも公然わいせつを犯した容疑がある。

  • プリモがウェイブされたのは、ミネソタへの遠征中にプリモが他の女性に下半身を露出した疑いが出た数日後だった。

  • プリモの露出は次第に過激になっていった

  • コーセンはプリモと公の場で会うように言われ、プリモは再び下半身を露出。彼は彼女と再び会おうとしたが、彼女は拒否した。

  • GMのブライアン・ライト、顧問弁護士、人事部のトップはコーセンの3月の訴えに適切に対応するのを失敗した

  • GMのブライアン・ライトはコーセンと会うことを幾度か延期した

  • スパーズはコーセンの不満を無視し、プリモの行為をもみ消そうとした。プリモがいつかスター選手になる望みのためにコーセンを犠牲にするつもりだった。

  • スパーズはプリモの行為が公になってからウェイブした。遅すぎる。

  • コーセンは6月に、コーチのグレッグ・ポポヴィッチもその問題を知っていると伝えられた。バズビーは「それはウソだったと結論づけた」

  • スパーズの声明は完全な茶番だ。他の球団のように、忠実な従業員を犠牲にしてアスリートの忌まわしい行為を容認している。

  • スパーズのマネジメントは、問題をプリモに話す代わりにコーセンに辛抱するように伝え、「家から働いてもいい」と伝えられた。また「チームはコーセンへの信頼を失った」と伝えられた。

  • コーセンはプリモに対し刑事訴訟をするつもりだ。

バズビーの記者会見の様子:

コーセンも会見では「私が働いていた球団は私を失望させた」「私は声をあげ、助けを求め、選択肢を与えた。私の声、感情は沈黙された」「スパーズは正しいことをするのに10ヶ月かかった。長すぎる」などと訴えました。

以下はプリモに対する訴状?の一部です。被告の性癖やそれをコントロールしなかった事や、原告に合意なく性的違法行為をした等訴えています。

以下はスパーズに対する訴状?の一部です。原告に対して、被告は何も対応しなかった事を言っています。

損害:原告は主に精神的苦痛を受けたそうです。

コーセンの訴えに対し、スパーズのビュホードは、「提示された事実、詳細、時系列の正確さ」には合意しないと言っています。他にも「もっと情報を共有したいところだが、法的手続きに任せる事にする」や「スパーズは最高水準を維持する事を約束し、私たちの価値とカルチャーに沿って行動していく」と言っています。

グレッグ・ポポヴィッチも、これはもう裁判になるので詳細は話す事はできないと言いながらも、次のように話しています:「私はスパーズの声明とともにある…長い間スパーズを見てきた人なら誰でもこのような告発は真剣に受け止められているとわかっているとだけ付け加える。それは確認している…私は、これに対応しているマネジメントにいる男性と女性たちが、目的意識を持って、効率的に、迅速に対応し、そして、それを告発者、被告者、球団関係者を含む関係者全員がまだ快適で安心できるように感じられるように最新の注意を払ってケアすると絶対の自信を持っている。私が言えるのはそれだけだ」

プリモの弁護士のウィリアム・J・ブリッグスIIはコーセンの主張に対し、「彼女は自分の利益のために醜いステレオタイプと人種差別的な恐怖でもて遊んでいる」と論点をずらし、彼女の行為はクライアント(プリモ)への裏切り行為だと反論しています。ブリッグスの声明の要点は以下になります。

  • コーセンの主張は、完全なつくり話か、大げさな装飾か、完全な空想のどれか

  • プリモは故意に露出はしていない。ただワークアウトのショーツから自分の一部が見えている事に気付かなかっただけだ。

  • プリモはコーセンを信頼していた。不思議なことにプリモよりはるかに年上のコーセンはなぜか彼の陰部が見えている事を伝えなかった。コーセンはプリモ本人に露出のことを伝えていないので信憑性がない

11月4日

これに対してサンアントニオの警察も動き出し、プリモの公然わいせつの調査を行うようです。「ベクサー郡のシェリフオフィスはジョシュア・プリモ事件の被害者に連絡をとっている。容疑の予備調査がはじまる」

アメリカの応用スポーツ心理学学会(AASP)もコーセンの支持を表明しました。「我々はDr.コーセンを支持し、性的犯罪とスポーツ球団がそのメンバーたちが虐待の報告をした時の不適切な対応を強く非難し続ける」

今後の展望

裁判になってしまうとすべてが公になるので、スパーズとプリモにとっては厳しい状況におかれます。特にスパーズは球団カルチャーがリーグ1と言われているので、PR的打撃は避けられないでしょう。

問題は、スパーズはプリモが正しいと信じているなら、なぜ彼をウェイブしたのか?スパーズがプリモは何もしていないと本当に信じているならサラリーを保証したすぐ後にウェイブしないはずです。問題を抱えているにも関わらず、またやらかしたのが発覚したのでやむお得ず切ったとしか見えません。

元サンズのフロントで働いていたNBAアナリストのアミン・エルハッサンによると、スパーズはインテルとスクラビング(地元の警察とのコネクションを持ちストーリーをもみ消せる)はリーグでもトップクラスだそうです。すべてのチームはスクラブができる人材を抱えているそうです。アミンはスパーズがプリモを切ったのは、警察関連のインテルからこの事件はスクラブできないと言われたのでプリモを切ったのではないかと推測しています。

また、コーセンがプリモの性癖を訴えてた事により、球団のリーガルが動いていたので、球団は確実にコーセンの不満は知っているはずです。それにも関わらず、なぜスパーズはユニフォームのバッジのエンドースメント披露にプリモを使ったり、プリモの$4.3Mを保証して、まるで何もなかったかのように振舞っていたのでしょうか。少なくとも、被害を訴えている人に寄り添った何らかの対策を講じる必要があったと思います。

それに、この件はポップのレガシーもかかっています。コーセンが主張するように、もしこの事をポップが知っていたら、このレジェンドの晩節を汚すことにもなりかねません。特にポップはアシスタントのベッキー・ハモンに自分が退場になった時にヘッドコーチを任せたり、社会的正義にも声をあげているプログレシッブ的な存在で、このような公然わいせつ容疑にも強く反対するような人物です(だと思います)。私はポップやビュフォードのファンだけに、彼らがそれを知っていたとは信じたくありません。逆に、もしポップが知らなかったのであれば、今度は球団内のマネジメントやガバナンスが問題になってしまい、コーセンの主張の多く(上記c, e, f, g, h,)が通ってしまいます。

プリモにとっても厳しい裁判になります。前述した通り、プリモの弁護士はすでに外から性器が見えていたという事実は否定していません。論点はそれが意図的か意図的ではないかになりますが、私のこれまでの経験上、自分の性器が外から見えているのがわからなかった事はないと思います。仮に疲れてる時などに一度はミスがあったとしても、それが3人の女性に対して起きるものなのかは疑問です。彼女たち3人全員が法廷で具体的かつ詳細な証言をしたら、証拠はないにしても陪審員は彼女たちの信用性が十分にあると判断する確率は高いと思います。

とは言え、公然わいせつで有罪になると実際に重い刑になるのかもわかりません。そこでテキサス州で公然わいせつの罪に問われたらどのようば刑になるのか調べてみました。

Brett Pritchard弁護士のホームページによると、テキサスで公然わいせつの罪で有罪になると、180日の懲役か$2,000以内の罰金になるようです。すごく軽いですね(カリフォルニは懲役1年+$1,000の罰金)。2回目になると重罪になり、少なくても10年は性犯罪者登録になるようです。他には次のような影響も出るようです。

  • 永久に犯罪者になる

  • 職を見つけにくくなる

  • 住む家を見つけにくくなる

  • 特定の仕事にはつけない

  • 特定の教育機関には入れない

  • 公的な屈辱

そして、公然わいせつの罪に問われるのは、露出だけではなく相手興奮させる意図があったかどうかだそうです。プリモのケースでは、プリモがコーセンを興奮させようとして露出したのをバズビーが証明できなければ犯罪の罪に問われる事はないそうです。

そして、被告をどのように弁護するのかのポイントは:

  • 露出の程度。映像などの証拠がない限り、合理的な疑いの域からは出ない。

  • 相手を興奮させる意図がない。

  • メンタル疾患。メンタル疾患だと診断されていれば刑事責任に問われない。

  • 酔い。酔うと合理的判断能力が衰えるため。

  • 年齢。子供は罪に問われない。

  • 母乳。女性は公の場で母乳を与える権利がある。

だそうです。すでにプリモの弁護士は、「コーセンが40歳とかなり年上」や「偶然性」を訴えています。プリモが最初の声明で「メンタルヘルス」や「トラウマ」に言及したのも、裁判を見据えての弁護士の作戦の一部であったと思われます。

ただ、テキサスの法律はわいせつ罪に軽いかもしれませんが、NBA的には重い事態になるかもしれません。

もしプリモが有罪になれば、NBAはプリモに罰則を与えるかもしれず、そうなると球団も「PR的な懸念&NBAの罰則」と「プロモの実力」を天秤にかけるでしょう。もし無罪になっても、上記のようにメンタルや意図的ではなかったような「曖昧」な決着になると、まだ優勝や勝利に貢献できると証明できていないプリモとの契約に躊躇する球団は多くなりそうです。

そして、有罪か無罪かに関わらず、その影響はバスケだけ収まらないでしょう。にかつてデリック・ローズが集団レイプで訴えられたことがありましたが、ローズは正義を求めて示談をせずに裁判を選びました。その原告の女性の話がウソかホントかに関わらず、原告側の訴状や詳細な証言が出た事によるローズへのPR的打撃はかなり大きかったと思います。ましてや今回は露出なので、相当な印象悪化に繋がるでしょう。ローズは裁判で勝ちましたが、もしプロモが刑事裁判で有罪になってしまったら、それらの証言が真実になってしまいます。刑罰は軽いかもしれませんが、プロモのブランドには大きな傷がついてしまいます。今後はハッキリと無罪を証明できない限り、シューズカンパニーなどからの大きなエンドースメント契約は望めないと思います。この騒動でプリモはすでに相当のお金を失っていると思いますが、有罪になればそれが億単位へと増えて行くでしょう。

そうなると、スパーズとプリモにとって最善策は裁判に入る前の示談になります。示談を成立させ、きちんと謝罪をして、バスケと人間性の成長を見せる事ができれば、まだ19歳のプリモにとってリーグに戻れる確率は高くなると思います。まだまだ若いので、どこかにセカンドチャンスは必ずあるはずです。プリモの才能に賭ける再建中のチームがあるかもしれませんし、サラリーキャップでタックスを大幅に超えているチームが安くプリモと契約したがるかもしれません。いちど決着をつけて、PR会社も雇って、戦術的にダメージをなるべく軽くしながら前に進むのです。

いずれにしろ、裁判/示談の内容待ちです。まだ裁判がいつになるかの情報は出てきていないと思いますが、どうなるのでしょうか。また何かあればレポートして行きたいと思います。


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