いとおかし、いとおかし4

こんばんは。「焼餅」のお話

語りとして、法話として

バックグラウンドや合法を示します。

８００年以上も語り継がれた

確かめた資料
①－0『発心集』鴨長明　建保4年（1216年）以前の成立。『長明発心集』とも。ただし、以下の刊本でのみ確認
　－１　片仮名本　慶安4（1651）年　八巻本　
五集・十五編のうち十五　
『大日本佛教全書』佛書刊行会（南条文雄代表）編纂　収録
　 －2　平仮名本　文化8（1811）年　八巻本　
五集・十四編のうち十二　
塙保己一編を『史籍集覧』 23 近藤瓶城 編 　近藤出版部, 1926　収載

②ー0『説法詞料鈔』光闡寺南溟　享保16（1732）年　五巻本
但し、以下の刊本にて確認
　－1『教家説林　勧化茗談集／説法詞料集』　濱口惠璋校訂　興教書院　
大正4（1915）年　因縁部・巻一の第三

③『布教資料全集』明治39（1906）年　田淵静縁　法蔵館
第五　因縁　三六　合法あり
『布教大資林』明治40（1907）年　田淵静縁　法蔵館
第一談叢　四六　上記と異文ながら同主旨（合法あり）
④『布教資料　譬喩因縁妙辨三百題』徳榮寺義渓述
大久保一枝補輯　第一譬喩因縁六　変化・合法あり

原文提示

①－1「正算僧都母爲子志深事」
山二正算僧都ト云人有ケリ。我カ身イミジク貴テ。西塔ノ大林ト云所ニ住ケル比。歳ノ暮雪フカク降テ間人モナク。ヒタスラ烟絶タル時アリケリ。京ニ母ナル人アレド。タエ〳〵シキ様ナレバ中〃心グルシウテ。コト更　アリサマヲハキカレシト思ヘリケルヲ。雪ノ中ノ心ボソサヲヤ押ハカリケン。若又事ノ便ニヤモレ聞ケン。念比ナル消息アリ。都タニ跡タエタル雪ノ中ニ。雪深キ嶺ノスマヰノ心細サナド。常ヨリモ細ヤカニテ。イサゝカナル物ヲ送ツカハサレケリ。不寄思程ニ最(イト)アリガタク哀ニ覺ユル中ニモ。此使ノ男ノイト寒ゲニ深キ雪ヲ分來ルガイトヲシケレバ。先火ナド焼テ此持來ル物（てう）シテクハス。今クハントスル程ニ箸ウチ立テ。ハラ〳〵ト涙ヲ落テクハズナリヌルエヲ。イトアヤシクテ故ヲ問フ。ニテハ答ヘテ云フ様。コノタテマツリ給ヘル物ハ。ナヲサリニテ出來タル物ニテモ侍ラズ。方々尋ラレツレドモ叶テ。母御前ノミヅカラ御グシノシタヲ切テ人ニタビテ。其替ヲソリナクシナ奉リ給ヘルナリ。只今是ヲタベムト仕ルニ。彼御志ノ深キ哀サヲ思ヒ出テ。下﨟ニテハ侍レド。イト悲ウテ胸フタガリテ。イカニモ喉ヘ入リ侍ラヌナリト云。是ヲ聞テヲロソカニ覺ヘンヤハ。良久涙ナガシケル。惣テ哀ミノ深キ母ノ思ニスギタルハナシ。愚ナル鳥獣マテモ其慈悲ヲバ具シタリ。田舎ノ者ノ語リ侍シハ。雉ノ子ヲウミテアタゝムル時。野火ニアヒヌレバ一タビハ驚テ立ヌレド。猶ステガタサノ餘ニヤ烟ノ中ニカヘリ入テ。終ニヤケシヌルタメシ多カリトゾ。又鶏ノ子ヲアタゝムル様ハ誰モ見ル事ゾカシ。毛ノヘタタリタルヲアカス思フニヤ。ミヅカラ胸ノ毛ヲクヒヌキテ。膚ニツケテ終日是ヲアタゝム。物ハマム爲ニヲノヅカラ立去テモ。カレガサメヌ程ニト急キ歸クルハ。ヲボロケノ志トハ見ヘズ。又ソノカミ古郷ワタリニ。思ノ外ニ世ヲ遁レタル人アリキ。事ノヲコリハ鷹ヲコノミ飼ケル時。ソノエニカハムトテ犬ヲ殺シケルニ。胎タル犬ノハラノ皮射切タルヨリ。子ノ一ツニツコボレ落ケルヲ。走テニグル犬ノ忽ニ立歸テ。ソノ子ヲクハエテ行ントシテ。ヤカテ倒レテ死ニタリケルヲ見テ。發心セリトゾ語リ侍シ。鳥獣ノナサケナキダニ。子ノ為ニハカク身ニモカヘテ哀ミ深シ。イハンヤ人ノ親ノハラノウチニヤドルヨリ。人トナルマデ念ゝニアハレブ志。タトヒ命ヲステゝ孝ストモ。報ツクサン事カタクコソ。

光闡寺南溟