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悲しみのその先へ 木蘭の涙

スターダストレビューの代表曲といえば「木蘭の涙」になるのでしょう。多くのアーティストさんにもカバーされ、本人たちも「『スタレビさんもカバーされているんですね』って言わるんですよ」と自虐ネタにするぐらいカバーされまくっている楽曲です。

長年スタレビを聴いている身としては、その時々に感じる「木蘭の涙」があります。

木蘭の涙 バンドバージョン

1993年にリリースされたアルバム「SOLA」からのシングルカット曲。

当時キーボードを担当していた三谷泰弘さんのアレンジで、幻想的な世界に紛れ込んだような、逢いたくても逢えなくなった人と、もしかしたら逢えるかも、と思わせてくれる不思議な感覚になります。英語のコーラスが、振り返ったらそこにいてくれるかも、という思いを抱かせてくれるのかもしれません。私が英語がわからないこともあって、なんだか異空間に迷い込んでしまった感があるのです。

愛する人を失った悲しい曲なんですけど、あまり重苦しくならないのは、アレンジのおかげなのかな。

木蘭の涙〜acoustic〜

2005年、ニッカウヰスキーのCMソングに起用されて、ここで大ヒットしちゃうかも?ってドキドキしながらCM見てました。ま、結果はどうであれ、石田ゆり子さん、キレイだったな。

アコースティックバージョンは、最近はボーカルの根本要さんの最後のロングトーンがテレビでも取り上げられて注目が集まりましたね。ロングトーンは、私には、悲しみの心の糸がピーンと張って、なんともいえぬ淋しさとせつなさと癒やされぬ気持ちを感じていました。

私の「木蘭の涙」のおすすめポイントは、ロングトーンも素晴らしいのですが、

さよならと言いかけて 何度も振り返る WowWowWow

WowWowWow

が、会場に溶け込んで音が消え、一瞬の静寂が訪れたときです。音楽なのに音が無いときがいいというのも変かもしれませんが、その静寂で胸がギュッとなるんですよね。是非、ライブ会場で聴いてほしいです。

福岡のライブの木蘭の涙

2024年1月14日の福岡サンパレスで開催された「ブギウギ ワンダー☆レビュー」の中での「木蘭の涙」は、アコースティックバージョンでした。

この日の要さんは珍しく歌の間で2回むせたのです。でも、歌と歌の間でむせているのに曲はちゃんと成立していて、すごい技術と思って聴いていました。

でも、一番違ったのはラスト。

今までは、悲しみの心の糸がピーンと張って天まで届けというロングトーンだったのですが、今回はとても柔らかく包み込むようなラストだったのです。

その後のMCで、前年に亡くなった親友のミュージシャンのKANさんが「いたずらして自分の中に入ってきたんだよ」って、楽しそうに話してました。そうか、KANさんはここ福岡出身だもんね。楽しい音楽を聴きつけて、逢いに来てくれたんだ。

ここからは、私の実体験です。

私は、お父さん子でした。父が急逝してからは気持ちが落ち着かず、フワフワした状態が続いていていました。

そんなある日、夢を見ました。

向かいの家の玄関から車を中に入れようと、二人の人が車の両サイドを抱え上げて、ドアをガシガシいわせながら悪戦苦闘していたのです。夢ですからね、不思議なことをしているわけです。
私が「大変そうやね」っていうと、いつの間にか父が隣にいて「そうやね」とニコニコしながら言ったのです。

たった、それだけの話です。

でも、目が覚めたとき温かい気持ちになっていて「なーんだ、お父さん、そばにいるんだ」と思ったのです。すると、心がスーッと軽くなりました。だって、そばにいてくれているってわかったのですから。

ちなみに、その日は父が亡くなって6回目の月命日でした。

もしかしたら、要さんもそんな気持ちになったのかな、と思ったのです。KANさんが自分の中に入って来たので「なーんだ、KANちゃん、そばにいるんだ」って。

要さんに聞いたわけではありませんから、単に私の思い込みなんですけど、あの柔らかな「木蘭の涙」は、悲しみだけではない、その先にある逢えなくなった人も自分の中に存在する、そんな気がしました。

その後、3月に出演された「The Covers 春Fes」もこの「木蘭の涙」でした。

逢いたくても逢えなくなってしまった悲しみのその先になにが見えてくるのか。これからも「木蘭の涙」楽しみです。

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