2020年秋号・12月20日成人科 ナザレン希望誌ウェブ版

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布にくるまれ飼い葉桶に眠るイエス   ルカ 2:1-20

 ルカが描くクリスマスの光景は最も美しくファンタジーの世界を醸し出すにふさわしいみ言葉です。しかし現実はそんなにイメージするような世界ではなかったと思われます。
 そんなことからこの箇所が示すテーマ、「いと高き所には栄光神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ。」(14節)が何を意味しているのかを探っていきます。
 結論を言えば神の御祝福(御子イエスの御降誕)を得るのは、真に信仰をもって救いを求める人のみであるということです。
 マリアがそもそも身ごもってイエスを出産するのは、ローマ皇帝アウグストゥスによる人口調査のさ中にある、ベツレヘムの馬小屋であり、人ごみの雑踏にかき消されるような出来事として実現します。知る人とて全くいない状態での出来事でした。
 一方、山岳地帯で生計を営む羊飼いたちは、羊を野の野獣から守るために寝ずの番をしていました。ルカはこの光景を美しく描いています。ともすれば私たちはこの光景から牧歌的なイメージを描いてしまいます。しかし現実は夜間における羊の番は命を張った仕事でした。ここでイメージするようなホンワカ感はなかったのです。そんな中で彼らに唯一許されたのはわが身の行く末を案じながらの救いに馳せることでした。彼らは、山岳地帯で生活するため、ユダヤ人として普通の信仰共同体としての社会で生活することができなかったのです。牧畜業は家畜の性質から普通の社会環境では飼育が困難でした。おのずと山岳地帯に限られたのです。彼らは人口調査においても前述したような理由から参加することが不可能だったのです。実はこんな厳しい生活環境の中で彼らは羊を守るために寝ずの番をしていたのです。彼らの生活はその年の状況、自然環境、などによって大きく影響を受けました。
 こんな中で羊飼いたちはわが身の行く末を案じていたのです。彼らが心から願ったのはわが身の救いだったとしても不思議ではありません。そこに彼らは今回テーマとして取り上げた14節のみ言葉が与えられたのです。ルカはこの信仰の世界を最も美しい形で表現したかったのだと思われます。
 主の救いに与る者として最もふさわしい人たちとしてルカは羊飼いたちを選んだのです。だからこそ「地には平和、御心に適う人にあれ。」だったのです。
 その後、羊飼いたちは御子イエスの御降誕にまみえるために旅立ちし、最終的にその神の祝福に立ち会っています。ルカはこの最終的な結果を短い文で締めくくっていますが、ここにルカは、羊飼いたちの生涯かけての救いの希求を示唆しています。

【設問】
1.救いにふさわしい人たちとして、ルカが羊飼いを描いた理由は何ですか。
2.御子イエスの御降誕が人に隠されたのはなぜですか。

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