2021年春号・5月2日成人科 ナザレン希望誌ウェブ版

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主を愛し、主に仕え、弱者を守る  申命記10:12-22
 申命記の書名は、ヘブライ語聖書では、巻頭の「これらの言葉」が書名となり、前2世紀に訳されたギリシャ語聖書では申命記17:18から「この第二の律法、律法の写し」となっています。邦訳の申命記とは、漢訳の聖書に使われていた言葉ですが、「繰り返し、丁寧に命令する」という意味です。当を得た訳であると思います。モーセの遺言、訣別の説教ともいえるでしょう。
 モーセが、約束の地カナンに入る前に、もう一度律法を確認し、教えているのです。約束の地とはいえ、異教の人々が住む異教の地であり、異教の神々、偶像の神々が拝まれている地であります。バアル,アシタロテなど、農業の神、女神が拝まれている土地であります。多神教、汎神論あらゆる偶像礼拝は否定されているのです(4:15-40)。異教の神々に惑わされないようにという警告でもありました。
 申命記の律法の中心は、唯一の神への信仰の徹底でありました。モーセは、カナンに入る前に、唯一の神、天地の創造主なる神とその教え、律法を民にしっかりと教えたかったのです。唯一の神への信仰が強調されており、中心的な勧告が述べられています(6:4-9)。「聞け。イスラエルよ。我らの神、主は唯一の主である。あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。」「あなたの神、主を愛しなさい、主に仕えなさい、主の命令と定めを守りなさい。」と繰り返し勧告されています(10:12,11:1,13)。唯一の神への信仰、知性、感情、意思を尽くして、全身全霊をもって主を愛し、主に仕えることが述べられているのです。このことを子々孫々に伝えていくように勧められています(6:6-10)。因みに6:4-7は「シェマー イスラーエル(聞け イスラエル)」(4節)に始まっています。ユダヤ人は、今日でも、この個所を「シェマーの祈り」として大切にしています。毎朝朗読し、殉教の時でも、この「シェマーの祈り」を唱えたということであり、第二次世界大戦中、ナチスによって、600万人のユダヤ人が殺戮されました。収容所でも、死の間際でも、彼らは「シェマーの祈り」を唱えたということであります。唯一の神、主への信仰、そして唯一の神への愛を確認したのであります。    
  申命記律法の特色の一つは、人道主義的であることでもあります。神を愛するとともに人々を愛するということです。神がイスラエルの民を愛したように、人々も、社会正義を目指し、強者は弱者を守り、寡婦や孤児を守り、旅人や寄留者をねんごろにもてなし、貧しい人々を助けるすことが規定されています(10:17―19、15:7-11)。愛の行為、慈善の業が勧められています。
 モーセの十戒も要約すれは、神への愛と人への愛ということであり、旧約聖書もそのことを告げています。イエスも律法の要約を神と人への愛として示しています(マルコ12:29,30、ルカ10:26-28)。
内村鑑三は申命記について、「余は旧約聖書の中で申命記を愛読する者の一人である。神の義と愛と情とを示したものとして。古代の書の中にこれに比ぶべきものはないと思う。」と言っています。

設問 聖書の中に流れている教えを要約すると、神を愛し、人々を愛することです。わたしたちの現実の生活の中で、このことが実践されているでしょうか。

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