社長就任時の炎上案件話

私は約5年前の2015年6月に入社、今率いている会社を上場企業の部門を独立させる形で子会社化し、3年前の2017年5月、社長に就任しました。入社から2年で社長は異例なのですが、これは私が親会社社長の息子だからです。この子会社の初代社長は私の叔父で親会社の専務でもあったのですが、この叔父がグループを離れることになり、私に白羽の矢が立ったわけです。

子会社立上げはもともと工場だった部門の人間が出来るわけもなく、実質私が実務面をほとんど主導して、本社機能の立上げと新規事業の創設をやり、既存事業は収支をまとめる経営企画的な仕事はしてましたが、ほとんどノータッチでした。

社長就任して発覚したことが、

前社長が始めた2つの案件が炎上している

と言う事でした。

でも、これに対して恐怖というよりは、社長になり、モチベーションも高く、意気込んでいましたから、「よし、絶対鎮火させて着地してやる」と言う気持ちが強かった。社長就任からすぐに弱いところは見せられない、と間違ったプライドもあったと思います。簡単に言うとカッコつけたかったんでしょうね。


1つの案件は終息したので、ここに記載します。もう一つはまだ進行形なので割愛し、語れる時期が来たらまたノートに記そうかと。


そもそもその当時の会社の状況というのは、

1)安定的な利益が出る製造事業↑、でも右肩下がりでジリ貧↓
2)大赤字の装置開発事業↓↓↓↓↓ 実力値としては1案件1千万円規模

この2)を立て直す目的で創設され、1)の利益が出ている間に立て直す必要があったので、焦りもあったと思います。叔父である前社長が2つの炎上案件を取ってきたのも。悪気があったわけではないと思います。叔父はエンジニアでなく営業なので、案件の難易度というのを理解していなかったのだと思います。リサーチも早々に受注してしまいました。振り返れば見積もりが甘すぎるという事なのですが、この辺は割愛します。笑

案件の規模としては1億2千万円、実力値の10倍以上、しかも今まで縁のない半導体市場向けです。そして、設計者は1名。普通に考えれば絶対ムリです。あり得ない。。。受注が4月、納品12月の9ヶ月納期、社長就任時5月中頃ということで既に1.5ヶ月経ってます。残り7.5ヶ月。。

就任からまず現況を知るためにヒアリングを行いました。ここでこの案件が既に炎上しており、納期に間に合わすことが出来るのかすら危ういことがわかりました。進捗としてはガントチャート上は5%もなかったと思います。しかも全ての工程にこの1名の担当者の名前が。。。本当にあり得ない。

ちなみに余談ですが、クライアントはアメリカのA社(スマホの)、最悪です。めっちゃ厳しい事で有名。まだ日本企業であれば多少の納期遅延でもなんとか出来ますが、アメリカ企業は納期遅延でも起こそうものなら即刻賠償問題に発展する可能性が高いです。

このきな臭い感じを嗅ぎ取った6月から採用活動を開始します。。残り7ヶ月。。

そして振り返ってみるとここでの判断がダメでした。まずはこの状況を即親会社社長に報告するべきだったんです。なぜかしなかった。今思うと集中しすぎで視野が狭くなっていたし、社長就任早々に弱音見せたくなかったという妙なプライドがあったんです。そもそも報告する義務ということすら頭から抜け落ちていたような気がします。

話を採用活動に戻しますが、優秀なメカ設計者で半導体装置も経験ある方が長野と広島にいると言うことで、飛んでいき、説得し、口説き落とし、彼らを採用しました。焦っていることを見透かされないようにうまくアピールして。一本釣り成功、そして、入社前であるにも関わらずこの案件にコミットしてもらいました。めちゃくちゃです。

他の案件はほぼ捨て、この案件に社員も出来る限り集中させ、設計者も1名→3名体制になり、夜遅くまでやり、その間にも採用を続け、若手2名や派遣社員を採用しました。

7月末立ち会いを8月末に延期してもらい、組立外注のスケジュールも当初と合わなくなったので、場所だけ借りて、社員総出で慣れない組立を行い、8月末立ち会いもずさんな状況を外注先、受注先にひたすら謝り続け、そこから12月まで怒涛の追い込みでなんとか1月アメリカ設置、そこから3月まで調整を行い、なんとか検収してもらいました。

話は逸れますが、もう一つのまだ語れない案件も同時期に追い込みをかけており、2つの案件で大炎上、徹夜や休出も多く、本社からも勤怠についてチクチク言われ、本当にあっという間に過ぎて行ったなというのが感想です。

今振り返っても、親会社へのレポートを怠ってしまったこと以外で、これ以上の事が出来たとは思えません。むしろ納品出来たことが奇跡でした。

しかし、レポート不足でこの件は評価されてません。むしろコストかけすぎ、案件ベースで想定利益を大幅に下回ったので叱られました。現場と離れてる方々にこのカオスな現場、目の前の炎上を鎮火する消防士のような状況をどう説明すれば良いのか。映画にするか演劇でもやらんと伝われないと思います。笑

と、話はまとまりませんが、社長になると急に守備範囲が広くなり、自分が取ってきた案件でなくても、炎上しているのがわからなかったとしても、お客様に迷惑がかかれば謝罪し、対策し、なんとかしないといけないとわかりました。

ひとつ良かったことは、ちょっとしたことでは動じなくなったことですね。大変でも、何かしら意味を見出して前向きに捉えることできっと次に繋がるのだと信じる事ですね。反対に言うとそれをしないとキツイです。笑

最後に株主への報告は悪いことほど逐一しましょう。炎上中は本当に大変ですけど、身のためです。

ではこの辺で。

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