ひとしずくのスペクトルム
見上げると丸い空だけが見えた
わたしは嬰児籠の中で起き上がろうと手足をばたつかせた
ようやく藁の淵を掴みよろよろと這い上がる
目の前に鏡のように白っぽく輝く田んぼが広がった
母の姿を探した
広がる水面に餌を探す動物のように腰を屈めた数人の中に
母の後ろ姿があった
わたしは母を求め嬰児籠から這い出そうともがいた
突然からだは中に浮き草むらに落ち
土手を転がりながら田んぼに水音をたてた
気がつくと母はわたしの両足を持ちげ
逆さ吊りの泥だらけの背中をパンパンと叩いていた
私は泥水を