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トラック向けに指定方向外進行禁止情報の表示機能を開発した話

はじめに

こんにちは。ジャムにいさん&うに君です。この記事では、先月『トラックカーナビ』にてリリースした、指定方向外進行禁止情報の表示機能がどうやって開発されたかをお話ししていきます。

指定方向外進行禁止とは

指定方向外進行禁止とは、運転をしているとよく見かける、矢印の看板に記載された進行可能な方向を表示した標識によって表される通行規制です。多くの場合、道路の細さや中央分離帯などで進行が困難な道路に設けられています。また、学校周辺などでは通学する時間帯のみ進行禁止の道路なども多くあります。

どうしてその情報が必要か

たいていは、標識を一瞬見ただけで進行可能な方向がわかると思います。しかし、規制対象となる車両の条件や特定時間帯のみの通行規制など様々な条件が標識一枚に記載されている場合があり、瞬時に進行可能方向を判断するのが難しいケースがあります。

指定方向外進行禁止の簡単な標識と複雑な標識の比較
指定方向外進行禁止標識の一例

国土交通省が発行している安全教育マニュアルのトラック事業者編に「安全な運行を行うためには、運転者はあらかじめ、その経路についての情報を把握し、適切な運行経路を選択する必要があります」と記載があるように、安全に荷物を配送するためには事前の確認が必要です。

どういうときに使うことを想定しているか

『トラックカーナビ』をはじめナビタイムジャパンのカーナビアプリでは、指定方向外進行禁止の情報を考慮してルート案内を行なっています。しかし、指定方向外進行禁止の情報はこれまで地図に表示されておらず事前確認ができませんでした。ルート案内時以外でも、事前に経路確認や周辺の地図を確認する習慣がある場合、進行可能な道路をなるべく頭に入れておきたいかと思います。そのため、この機能では主に走行前の準備を行うシーンで利用されることを想定しています。

デザインの工夫

この機能の開発段階では何度もデザインの修正を行いました。構想段階ではアイコンとテキストによる表示の方がスッキリしていて見やすいという考えで仮実装をしていました。しかし、実際のデータを投入して確認してみるとどの方向に進行可能かがわかりにくいことに気がつきました。

そこで次の段階としてアイコン+線+テキストの3要素での表示に切り替えました。どの方向に進行できるかがだいぶ見やすいという意見がチーム内でも出ましたが、アイコンが丸であることから、規制されている進行方向を進行可能な方向と勘違いしてしまうことに気がつき、最終的に現在の見た目に落ち着きました。

デザイン案の変遷(案1→案2→最終案)
デザインの変遷

このようにデザインを更新し、最終的に下図のような画面構成になりました。一覧性の担保と詳細情報の提供を両立するため、アイコンタップで詳細情報を表示できるような仕組みになっています。

指定方向外進行禁止情報の表示機能を利用した際のスマホ画面
最終的な画面構成

必要な規制だけを表示

この機能では、アプリに登録済みの車種が対象となる規制のみが表示されます。対象かどうかの判定には以下3つの条件を利用します。

  • 車種区分(例:普通乗用自動車、普通貨物自動車、大型特殊自動車など)

  • 全長

  • 最大積載量

このフィルタ機能により、関係のない規制情報が除外され、本来確認したかった規制情報に集中することが可能になります。条件数の違いはありますが、大型車規制情報の表示機能でも同等のフィルタを実装しています。

データのノイズを減らす

指定方向外進行禁止情報の表示機能では、ナビタイムジャパンの経路探索エンジンで使われるものと同じ道路ネットワークデータを利用しています。もとは経路探索のために整備されたデータですので、人の目に直接触れることは想定されていません。したがって、人の目に触れても誤解を与えることが無いように、専用のコンバータを整備してデータを修正&配信する必要がありました。

例えば下図のような交差点があります。北西方向から来た自動車は、矢印のように二又に分かれて進行していきます。大きな交差点ではありますが、緑色で示した分離帯に沿って、いずれの方向にも進行できるようになっています。

馬込銀座交差点を拡大した地図
馬込銀座(実際に自動車が通る道筋)

しかし、ネットワークデータの観点から考えると、下図の赤い矢印のような進行禁止情報が入ってしまっています。先に述べた通り、東に進みたい自動車は緑色で示した分離帯の北側を進行するため、明らかに見せる必要のない(利用者の誤解を招く)規制情報です。これは比較的簡単な例ですが、画面上で指定方向外進行禁止情報を見せるためには、このようなデータノイズを取り除く必要がありました。

馬込銀座交差点を拡大した地図+ノイズ
馬込銀座(ネットワークデータ内のノイズ)

今回開発したコンバータでは、内部にプチ経路探索エンジンを搭載して、『少しの迂回路で同じ地点に到達可能なら無効な規制とする』ようにしています。上の例でも2,3回別のリンクを辿って迂回すれば同じ地点へ到達できますので、この検出処理にかかって除外されることになります。

この他にも、角度差が小さいリンクが重複したなら除外、退出方向が一方通行なら(既存機能で既に読み取れるため)除外、など、様々な除外処理を経て、最終版のデータリリースに至っています。数週間限定の規制情報など、比較的タイムリーな規制情報も随時投入していますので、是非ご利用ください!

まとめ

今回は指定方向外進行禁止情報の表示機能についてお話しさせていただきました。今後もナビタイムジャパンでは、トラックドライバーをはじめ多くのドライバーに安心・安全を届けていくための開発を行なっていきます。ぜひこんな機能があったら嬉しいなどご意見お寄せください。最後までお読みいただきありがとうございました。