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Hondaのクルマでアプリが動くぞ! 「よってこ!」開発の話

こんにちは。KTです。

4月23日に発売された Honda の SUV「VEZEL」や、6月4日に発売されたコンパクトカー「FIT」では、「よりみちスポット検索 よってこ! by NAVITIME」などナビタイムジャパンが開発したアプリが利用できるようになっています。今回はこのアプリについてお話したいと思います。

Honda アプリセンター

Honda の「Honda CONNECT(ホンダコネクト)」に対応した、「Honda CONNECT ディスプレー」搭載車両で利用できるサービスです。

昨年発売された Honda の電気自動車(EV)「Honda e」から対応しており、当社は「NAVITIME CONNECT for Honda」というアプリを開発、提供していました。

冒頭で触れたとおり、「VEZEL」「FIT」より当社からの提供アプリも大幅に増やし、「NAVITIME CONNECT for Honda」「よってこ!」のほかに、「トイレ検索」「周辺駐車場」「ガソリンスタンド検索」「EVスタンド検索」「周辺観光スポット」といった手軽に各種スポット検索を行うことができるアプリも提供中です。

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アプリ開発者から見た特徴としては、スマートフォンではなく車載機器にアプリをインストールして、車両上で直接動作するアプリであることと、Android アプリが動作する環境であることです。

なぜ「よってこ!」が生まれた?

Hondaの企画担当Mさんと、当社企画担当Jさんの会話の中で、

「旅行から帰ってきた後になって、あそこにも寄っておけばよかった、という残念体験がある。そうならないためには事前に周到に調べておかなければならないし。」

という課題を見つけました。当社の豊富なスポットデータと検索技術を使って、最適なスポットをおすすめすることができるのでは、というところから企画がスタートしました。

・メインの目的地は決まっているけど、ほかは特に決めていない
・目的地周辺に余裕を持って到達し、空き時間ができた
・話題/人気のスポットを見落したくない
・出発後でもクルマの中で観光情報などを手早く手に入れたい
・ただの周辺検索ではなく、自分にあったおすすめの提案をしてほしい

というニーズを想定し、「ユーザーにあった、人気や話題のおすすめスポットを手軽に発見する」ということをコンセプトに開発を進めました。

「寄り道スポット検索」だと味気ないので、少し遊び心を持たせて「よってこ!」としました。(せっかく行くなら)"寄っていこうよ"、"よってみようよ" という思いが込められています。

「よってこ!」は何ができる?

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目的地がHondaのカーナビですでに設定してあれば、その目的地やルートにもとづいた、寄り道/立ち寄りに最適なスポットをおすすめすることできます。

目的地が設定されていない場合は、地図で表示されている地点周辺で、レコメンドを行います。

おすすめなので、周辺スポット全てを表示するのではなく、人気・話題のスポットの中からいくつかご提案。

スポットに関しては、名前や住所だけでなく、そのスポットの写真や、営業時間、予算の目安、滞在目安時間、駐車場の有無、など、手早く判断してもらうための情報を分かりやすく表示しています。

行きたくなったスポットが決まったら、経由地候補に設定。スポットごとの滞在時間も確認・調整でき、当社のルート検索技術により各地点までの到着予測時間も確認しつつ、確定であれば、それをHondaのカーナビにセット、ということが可能です。

詳しく知りたい方は以下リンクでサービス紹介をしていますので見てみてくださいね。

「よってこ!」の開発者たちのこだわりポイント

上述した、ニーズを満たす機能を実装した、というのももちろんですが、それぞれのユーザーインターフェースもできるだけ直感的にシンプルにすることで周囲からもご好評をいただけるアプリに仕上がりました。

また、「おでかけに関するサービスなのだから、楽しさを感じるものにしたい」という考えから、遊び心の入ったデザイン、ユーザーインターフェースになっています。

Androidアプリということもあり、これまでの車載HMIのように、リストなどから選択して一つ一つ画面階層を下がっていって、といった操作だけではなく、例えば、経由地候補をドラッグして並び替えをしたり、とスマホライクな操作を導入しました。

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このあたりはスマートフォンアプリに長く携わってきた当社の強みを出せた部分かなと思います。

あとは、細かーいところだと「ぼやっと」表示と社内で呼んでいたもの。

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目的地までのルート表示をあえて行わず、おすすめするスポットを取り囲むように「ぼやっと」表示しています。企画担当JさんやデザイナーYさんが発案・デザインしたものの、これをプログラムでどう実現するかで苦心しました。

はじめ、スポットとルートの凸包をもとめ、その多角形ポリゴンを描画しようとしましたが、中心あたりを色濃く、周囲の境界線付近を薄くするといったことはAndroidアプリではできませんでした。

であれば、ということで、途中、図のような楕円形やタイル形状にするのが現実的なのでは、という話も出ましたが、、

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やはりなんとか当初の「ぼやっと」デザインを実現できないか、と頭を捻り、グラデーションをかけた複数の円ポリゴンを重ねてみたところ、狙い通りのイメージになりそうだ、となりました。

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これらの円表示をルートとスポットの位置を考慮し、ルートの中間あたりになるにつれて太くなるように半径を大きい円を描いたりと、調整をかけることで完成しました。

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また、ルートが長距離になるほど、用いる円ポリゴンが増えるため、描画パフォーマンスに影響が出ないよう上限を設けたり、地図を拡大表示していくほど必要な情報が見づらくなるので、「ぼやっと」の透明度を上げて薄くしたりと細かな調整も行っています。

このように「よってこ!」では、おすすめの寄り道スポットを提供する、といった機能以外にも、開発に関わった人たちのこだわりが詰まっています。

「Hondaアプリセンター」ならではのアプリ開発

基本的にはスマートフォンでの Androidアプリ開発と同じ感覚で開発をすることが可能ですが、車載アプリならではの開発もありました。

● 車両側の情報との連携
 ○  Hondaのカーナビと目的地を連動
 ○ EVスタンド検索・ガソリンスタンド検索では、
  車両の航続可能距離と当社ルート検索技術から到達可能な範囲を表示
● メモリ使用量はスマートフォンほど潤沢ではなく、
 地図表示機能などのパフォーマンスチューニング
● ドライバーディストラクションを考えたUIの制御
 (当社スマートフォンアプリでもここは考えられていますが、
  車載HMIとして求められる基準をおさえる必要がありました)

かなり簡単な構成図ですが、「よってこ!」は以下のようなシステムで実現されています。

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上述の車両側の情報との連携については、アプリから取得できるインターフェースが用意されており、それを活用しています。

地図表示やルート検索技術については、これまでの当社資産を有効活用し、今回おすすめスポット提案エンジンを新たにサーバーに設けました。

これからはクルマでアプリが使えることが当たり前に

6月4日に一部改良された Honda の「FIT」でも「Honda CONNECT(ホンダコネクト)」に対応し、「Honda アプリセンター」が利用可能になっています。

その FIT は早いもので20周年だそうです。初代の素晴らしいパッケージングに感心したことを覚えていますが、もうそんなに経つのですね…(年がバレる)

現在、Honda ではその FIT 20周年を記念したサイトを公開しています。そこで「よってこ!」も新しい体験価値としてご紹介いただいていますので、よろしければご覧になってみてください。

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スマートフォンをはじめとしたスマートデバイスではどんどんいろいろなアプリが出て便利に使える世の中になってきていますが、「Honda アプリセンター」のようにクルマもユーザーがオンデマンドで使いたい機能を足して使っていくような流れになってきています。クルマもスマホ化していくなんて言われてますものね。

ナビタイムジャパンではこれからも様々なデバイス、環境でみなさんの移動をサポートするサービスを提供していきますので、お楽しみに!