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運転見合わせ発生時の「到着予測時刻比較」機能

こんにちは。ヤシです。
ナビタイムジャパンで、公共交通に関する予測や経路探索機能の研究開発をしています。

本日は、『NAVITIME forスゴ得』 アプリ※に到着予測時刻比較機能をリリースいたしましたので、機能紹介をしつつ、開発にあたって工夫した点をお伝えします。

※『NAVITIME for スゴ得』アプリとは
『NAVITIME』と同等の主要機能(乗換案内、トータルナビ/音声ナビ 、運行情報/迂回ルートなど)を株式会社NTTドコモの提供する「スゴ得コンテンツ®」契約者向けに提供しているアプリです


到着予測時刻比較機能とは

通勤通学をしていて、鉄道の運転見合わせが発生した時、運転再開を待つか、迂回するかで迷った経験はありませんか?

「運転再開は1時間後を予定しています」と情報が入り、バスで迂回すると30分ぐらいで済みそう、でもちょうどいいバスが来るかわからない……。
遅刻しそうで急いでいて、すぐ移動したい・何時に着くか連絡したいのに、判断できずもどかしい思いをされることがあるのではないでしょうか。

「到着予測時刻比較機能」は、運転見合わせが発生した場合に、普段の経路と迂回経路とで、目的地への到着予測時刻を一目で比較できる機能です。

使い方

普段利用する経路をマイページに登録することで、その経路内で利用されている路線が運休が発生した際に経路比較をすることができます。

ルート一覧画面では、運休が発生した路線に運転再開予測情報がある場合、
運転再開までにかかる時間を考慮した経路が一番上に表示されます。
その下に、運転見合わせが発生した路線を迂回した場合の経路が数パターン表示されるため、その経路を比べることでそのまま運転再開を待つべきか、迂回をするべきかを判断することができます。

使用イメージ

開発経緯

この機能は、プロジェクト内の施策を話し合うミーティングで、「電車が止まった時にどうしたらいいかわからない」「誰かに相談したい」という雑談から、乗換案内を提供している複数のプロジェクトと研究開発部門と合同で検討を重ねたものです。
運転見合わせ発生時の体験向上というテーマの元、バリュープロポジションキャンバスやユーザーストーリーの作成などのワークを通して原型となる方向性が決まり、技術的にできることが整理されて今回の機能が完成しました。

工夫した点

経路の組み立て方

マイページに登録された経路に対して、運転再開時刻を待った場合の出発時刻・到着時刻を算出します。
その経路の組み立て方についてお話します。

実際の運休時は特別な運行時刻になる可能性もありますが、
運転再開見込み時刻を考慮し、かつ対象路線の時刻表に合わせた出発時刻、到着時刻になるように以下の対応を行っています。

  • 公式発表や精度の高い運転再開予測が利用できる場合のみ出力。
    一部でも欠けていた場合は精度を考慮し結果は表示しないようにしている。

  • 対象路線の運転再開時点に合わせた時刻表の考慮。
    特に本数の少ない路線などは大きく結果が変わってしまうため。

  • 運休している路線の対象範囲を見るように対応。
    ⇒例:A駅-B駅-C駅-D駅の路線でA駅-B駅だけ運休している場合、B駅-C駅-D駅は通常運行の扱いにできるようにしている。

  • 予測を考慮した結果、出発時間はどのくらいずらす必要があるのかもわかるように対応。

少々内容が複雑なため、どのような探索手順で行っているのかを図と合わせながらご説明します。

処理イメージ

, , ③ 通常の経路探索結果と、運転再開見込み時刻、運転見合わせ発生区間を、それぞれ取得します。
B駅の運転再開見込み時刻と当初の出発時刻を比較し、遅いほうを出発時刻とし、B駅〜D駅を再探索します。
→ 再探索の結果、最終的な到着時刻「13:45」が取得できます。
再探索後のC駅の出発は12:45発であり、c路線の運転再開見込み12:15より後なので、C駅〜D駅の再探索は不要とわかります。
通常運転の区間でも経路再探索を行います。
→ B駅に11:45までに到着できる出発時刻「10:30」に更新します。

以上の手順で処理を行った結果、
⑧で取得した出発時刻:「10:00」⇒「10:30」
⑤で取得した到着時刻:「13:00」⇒「13:45」
と運転再開時刻を待った場合の時間を算出することができます。

運転再開時刻の予測

当社では、以前から運転再開予測時刻を活用し、サービスに反映しておりました。詳しくは、2022年7月のプレスリリースをご覧ください。

以前は、運転再開予測時刻として、鉄道会社の公式X(旧Twitter)から発表される時刻か、過去事例をもとにナビタイムジャパンが独自に予測した時刻を採用しておりましたが、予測に使われる過去事例が十分集まっていない場合、精度の低い予測になってしまいかねません。

到着予測時刻比較機能のリリースに伴い、より精度の高い運転再開予測時刻を採用するため、以下の取り組みを行っています。

  • 公式発表時刻を返却する際に使うデータソースとして、提携会社発表の情報を導入することにより、公式の予測に対応する事業者を拡充しました。

  • 過去事例が十分数利用可能な場合に限って予測値を利用する選択ができるよう、内部の制御フローを改善しました。

見せ方の工夫

運休が発生した時に待った方が良いか、迂回した方が良いか、どちらが最適かをなるべく簡単なステップで判断できるように見せ方・機能の体験についても工夫をしています。

見せ方の工夫
  • 工夫した点①…「提案」に見える文言と比較対象を強調することでユーザーに判断を促す

『乗換NAVITIME』などでもよく使用される表現ですが、到着予測時刻のセクションと、迂回経路のセクションのタイトルとして、Mr.NAVITIMEからの言葉に見えるように吹き出しによるタイトルの表現をしています。

Mr.NAVITIMEの吹き出し

このような表現と文言によって、表示されている複数の経路が『提案』のように見えると思います。

本機能は迂回経路で目的地に行くことを勧めるための機能ではありません。
どちらかというと「待つとこれくらい、迂回するならこの経路があるよ」という提案をして、誤差程度なら待ってゆっくり行くか、待つより早く着く経路があるならそれで行くかの判断はユーザーに委ねている機能です。

そのため『提案』として経路一覧が見えるような見せ方を心がけました。

また、次の経路と経路を比較し、次の行動を判断しやすくするために一番比較する項目は時間だと判断し、「到着予測時刻」を強調して、比較できるような画面作りも心がけました。

  • 工夫した点②…運転再開予測時刻を明記することで、到着予測時刻をブラックボックスにしない!

先ほど到着予測時刻の計算方法を記載しましたが、ユーザーが全てを把握することは非現実的です。
かといって、どのような情報をもとに計算をしているのかがわからないと到着予測時刻の判断材料としての信頼度が下がってしまいます。
そのため、ユーザーも計算の中身を想像できるようにするために、Myルート上の運休路線の運転再開予測時刻を明記することで到着予測時刻の信頼度を上げられるように工夫しました。

このような見せ方の工夫によって到着予測時刻の信頼度を上げ、ユーザーにとって本当に最適な行動と経路を判断することができるようなUI設計を心がけました。

まとめ

到着予測時刻比較機能は、複雑なロジックを組み合わせ、簡単にユーザーが比較できるよう工夫を経てリリースすることができました。

ナビタイムジャパンでは、引き続き、ユーザーの皆様の意思決定のサポートができるよう努めてまいります。最後までお読みいただき、ありがとうございました。