「観光列車優先ルート」のご紹介
こんにちは、ヤシです。
ナビタイムジャパンで、経路探索エンジンの研究開発をしています。
先日「観光列車優先ルート」の提供を開始しました。従来の経路探索とは異なり、移動そのものを楽しめる移動手段を提供する経路を探索します。
この記事では、本機能を支える工夫や、地道な調整についてご紹介します。
機能紹介
観光列車優先ルートは、観光用列車等への乗車を伴う、移動自体を楽しめるようなルートです。今年1月に、ナビタイムジャパンが提供するサービスの『Japan Travel by NAVITIME』および『NAVITIME Travel』で利用できるようになりました。プレスリリースも配信しております。
これら2つのアプリでは、行きたいスポット間を結ぶ旅行プランを、経路探索により作成できます。この時、通常のサービスでも提供している経路探索だけでなく、観光列車優先ルートも探索され、経路探索結果に出現します。
加えて、経路中に含まれる観光列車にはロゴで強調表示がされます。どれが観光列車なのか知っていただけるのに加え、ここからチケットを購入いただくこともできます。
※『NAVITIME Travel』では、観光列車優先ルートは有料会員向けの機能となります。
東京を10時に出て、高松まで電車で出かける場合、従来の探索ではこのような経路が表示されます。
観光列車優先ルートは、このような経路を探し出します。
所要時間を1時間長く、出発時刻を1時間半ほど遅らせる形を取って、子どもが大喜びの列車を選べるようになりました。
経路探索での工夫
観光列車優先ルートは、通常の経路探索と違い、ある方針のもと経路を探します。
通常の経路探索で考えていること
経路探索では、通常、以下の条件にあうような乗り継ぎを探します。
早い: 目的地に早く到着できる。
安い: 目的地まで運賃安く到着できる。
楽: 目的地までの乗換回数が少ない。
しかし、観光列車は、景色や車内のアクティビティを楽しむために、あえてゆっくり運行されることがあります。利用する際に乗換が必要なこともあります。
「早い」「安い」「楽」のいずれの条件でも優位ではなく、探索されにくい列車なのです。
「観光列車優先」をするための工夫
観光列車に乗るルートを探索したいので、経路の探索方針を新しくしました。
「乗って楽しい」と思えるような列車を列挙し、観光列車データとして整備しました。
経路探索時、観光列車でない列車が選ばれにくいよう考慮条件を修正しました。
こうして観光列車優先ルートが探索できるようになりました。
苦労した点
観光列車優先ルートを実際にサービスに反映するにあたり、ここまで紹介した工夫にとどまらず、さらなる調整が必要でした。
無理に観光列車に乗ってしまう
単に観光列車を出しやすくすると、逆に「観光列車に乗るため、乗り換えに1時間かける」「観光列車に10分乗り、そのあと便利な列車に乗り換える」といった不要な経路が出てきてしまいます。
不要な経路が出ないようにすると、観光列車にめったに乗らない経路になってしまい、新機能としての価値が下がってしまいます。
実用的な機能になるよう、観光列車優先ルートを出す条件を精査する必要がありました。
「観光列車優先ルート」と「観光列車」は違う
移動を楽しめる観光列車として整備したデータの中には、「ディズニーリゾートライン」「大井川鐵道井川線」など、それを使わないと歩かざるを得ない列車も含みました。
出にくい列車を出しやすくするためだけではなく、移動を楽しめる列車をもれなく集めるほうが、名実の一致したデータベースを構築でき有利だからです。
※歩かざるを得ない列車とは?
目的地まで通常通り「早く・安く・楽に」移動するときに使う列車のことです。
例えば、東京ディズニーシーに行く際、経路探索をするとディズニーリゾートラインに乗る経路が出ます。それ以外には、舞浜駅から歩いて向かうことになります。
結果、従来の経路探索で、これらの観光列車が見つかる状態になりました。
このとき、観光列車優先ルートが見つかったとしても、もとの経路探索結果と統合されてしまい見られなくなる場合があることがわかりました。
観光列車優先ルートではなくても、乗って楽しい列車がどれなのかをユーザに知っていただきたいです。そのため、フロントエンド側・バックエンド側で協議を重ね、観光列車そのものを識別して返却できるよう改修しました。
おわりに
以上の工夫をもとに、今までとは違う移動をユーザに提案できるようになりました。
お出かけが増えるシーズンが近づいてまいりました。ぜひ観光列車優先ルートを使って、移動自体を楽しむ経験をしていただければと思います。
ナビタイムジャパンでは、引き続き、観光列車の他にも移動を楽しめる機能を拡充してまいります。