ナビタイムの高速道路料金の裏側
はじめに
こんにちは、釜揚げしらすです。ナビタイムジャパンで高速道路料金計算システムの開発を担当しています。
皆さんは普段、高速道路を運転しますか?高速道路は一般道に比べて短い時間で目的地にたどり着ける一方で、安くない高速道路料金がかかるというイメージがあるのではないのでしょうか。
実は高速道路には様々な割引制度が存在しており、それらをうまく使えば何もしないよりも安い料金で高速道路を利用することができます。
ナビタイムジャパンのサービスで表示している高速道路料金は割引を考慮した金額になっています。
NEXCO東日本・中日本・西日本の提供する深夜割引や休日割引、ETC割引、ETC2.0割引などの主要な割引はもちろんのこと、その他の多種多様な割引をサポートしています。それらの中には、適用されるのに複雑な条件があるもの、高速道路事業者の発表から実際の導入までの期間が短いものなど、対応するのに苦慮する割引も存在しています。
その中でそうした割引に対応している背景には、ナビゲーションサービスを提供する企業として高速道路料金に対する当社の思いと、それを可能にする技術が存在しています。
この記事では、ナビタイムジャパンの高速道路料金に対するそれらの取り組みの一部をご紹介いたします。
※この記事では2022/6時点で有効な高速道路料金割引を紹介します。割引制度は変更されることがありますので、詳しくは各高速道路事業者のWebページ等でご確認ください。
市街地の環境改善のための割引
割引が存在する背景には高速道路事業者の様々な目的が存在しますが、そのうちのひとつが市街地の環境改善です。
高速道路の付近に市街地がある場合、騒音や近隣の一般道路の渋滞などにより市街地の環境が悪化する恐れがあります。それを回避するための対策のひとつとして、市街地を通る高速道路の料金よりも湾岸部等を通る高速道路の料金を安くすることで、湾岸部等に交通を転換する割引が存在します。
具体的には、首都高速羽田線沿線の環境改善を目的とした環境ロードプライシングや、都心流入・湾岸線誘導割引がそれに該当します。
当社のサービスで提供する高速道路料金ではこれらの割引に対応し、市街地の住宅環境の改善に貢献しています。
混雑緩和のための割引
割引の別の目的として、高速道路の混雑緩和が挙げられます。
高速道路料金は基本的に走行距離が長くなるほど料金が高くなる仕組みになっています。そのため都市部の高速道路を突っ切って最短経路を走行する車両が多くなり、都市部の高速道路が混雑する傾向にあります。
こうした課題を解消するため、遠回りしても近道をしても同じ料金になるよう料金調節するという割引が存在します。具体的には、首都高速の外環道迂回利用割引、阪神高速の神戸都心流入割引、大阪都心流入割引などが該当します。
当社のサービスで提供している高速道路料金情報は上記3つの割引を考慮しています。
(少し話がそれますが、)当社のカーナビアプリで表示される経路は渋滞情報を考慮しており、渋滞が発生している道路を避ける経路が出やすくなっています。また、特に渋滞を回避したいというユーザーに向けて、少し遠回りでも渋滞をなるべく回避する「超渋滞回避ルート」機能もリリースしています。
このように、当社では「経路」と「高速道路料金情報」の両面から、道路の混雑緩和に向けて取り組んでいます。
高速道路料金の変化にも即日対応
高速道路料金割引は固定されているわけではなく、新規で導入されたり、廃止されたり、時勢などの影響を受け一時的に割引が適用除外になったりすることがあります。当社のサービスではそれら変化する高速道路料金情報をキャッチアップし、基本的に当該料金の導入日までにサービス表示料金に反映させています。
この章ではキャッチアップの事例を2件ご紹介いたします。
首都高速 深夜割引
首都高速の深夜割引は、深夜0時から4時までの間にETCで首都高速の入口を通過すると首都高速の高速道路料金が2割引になるというものです。
この割引は2022年4月1日に新たに導入されたもので、当社の提供するサービスでは導入日までに表示料金に反映しています。
首都高速の深夜割引は既存のNEXCO東日本・中日本・西日本の深夜割引とは適用条件が異なり、高速に乗った時刻のみを参照して割引の適用可否が決まります。(NEXCO東日本・中日本・西日本の深夜割引は乗った時刻と降りた時刻をいずれも参照します。)
当社の高速道路料金システムはこのような適用条件の違いを柔軟に吸収する構成になっており、割引料金の即日対応を支えています。
コロナ禍における休日割引適用除外
通常、NEXCO東日本・中日本・西日本の高速道路を土日祝に走行すると、休日割引が適用されます。一方で、コロナ禍においては緊急事態宣言時や高速道路の繁忙期に、休日割引が適用除外となっています。
特に初回の緊急事態宣言時には、適用除外措置が導入される1週間前にNEXCO東日本・中日本・西日本からニュースリリースが発表されるなど、高速道路料金をめぐる状況が目まぐるしく変化しました。その中においても、当社の提供する高速道路料金では導入日までに休日割引適用除外を反映しています。
当社の高速道路料金システムは通常の高速道路料金とは別で緊急時に特例の料金を設定できる構成になっているため、このような突発的な料金調整にもスムーズに対応することができます。
安定した料金情報提供のための仕組み
上記で紹介しましたように、高速道路料金は日々変化していくため、当社の高速道路料金システムもそれをキャッチアップしていく必要があります。
一方で、ある割引に対応したことによって他の高速道路料金が不正な値になってしまうこと(デグレード)が起こると元も子もありません。当社の高速道路料金システムでは、こうした事態が発生しないようにデグレード検出の仕組みを導入しています。
デグレード検出の仕組みでは、当社の経路探索技術を用いて大量の経路探索を行い、それぞれの高速道路の料金が不正なものになっていないかのチェックを行っています。不正な料金が検出された場合にはエンジニアがログを確認し、問題があれば修正したのち再度デグレード検出の仕組みを流し、問題なければリリースするという流れになっています。
このようにして、日々変化する高速道路料金を考慮しつつ、安定して高速道路料金情報を提供することを可能にしています。
終わりに
この記事ではナビタイムジャパンの高速道路料金に対する取り組みの一部をご紹介いたしました。
当社の提供するサービスで表示される高速道路料金は、この記事で紹介した割引をすべて考慮した金額になっています。高速道路を利用する際は、ぜひ当社のアプリを利用して走行経路や時間帯による料金の違いをチェックしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。