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Spintires Mudrunner:主役はお前じゃない、泥だ

※お時間と心に余裕のある方のみお読みください。
完全に主観的な文章です。

今の時代においてこういう発言をするのは非常にリスキーなのは承知で敢えて言いたい。
男なら誰でも巨大で力強いトラックに心震わせたことがあるはず。
ないとは言わせない。
巨大なタイヤで多少の段差など物ともせず悪路を走破するトラックにときめかないやつ男などいないのだ。
このSpintires Mudrunnerはまさにその気持ちを思い起こさせてくれるゲームだ。

ゲームの舞台は母なる大地ロシア。
季節は雪解け間もない春。
ゲーム内でキミが闘うのはロシア兵でも秘密研究施設が生み出したミュータントでも宇宙人でもない。
敵は長い冬の間に降り積もった雪が溶け、どろどろでぐっちょんぐっちょんの液状化した地面そのものだ。
ぬかるみなんていう生易しい表現ではとても足りない。
某ギャンブル漫画の主人公が、首まではまっていたあの沼の感覚を疑似体験できるほどのどろどろっぷりである。
いくらアクセルを踏もうが、どんどんとタイヤが深みにはまって行くあの時の絶望といったらない。
アスファルトで舗装されていたであろう道ですら、陥没しところどころ泥が吹き出し、深い水たまりが口を広げているのはある意味感動すらおぼえる。
本当にこんなところに人が生活しているのかとすら思うが、電柱がありアスファルト舗装された地面があるのだから人が生活しているのだろう。(ちなみにゲーム内に自キャラ以外の人間はいない)
むしろ『道路を舗装し電柱を建てた人たちが凄い』といいたくなるくらいの劣悪な環境だ。

プレーヤーに与えられた目標は、このどろどろぐっちょんぐっちょんの大地に点在する木材置き場から指定数の木材を製材所までトラックで運ぶこと、それだけである。
ゲーム内には複数のマップが用意されているがどのマップでもやることは同じ、心折れずに木材を運ぶ、それだけだ。
やってみるとわかるのだがこれがなんとも難しい。
初プレイ時は低難易度であるカジュアルモードをお勧めする。
いきなりハードコアモードに手を出そうものなら思いっきりコントローラーを投げつけるか、私のようにどハマりしてヨメに呆れられるかのどちらかしかない。
はっきり言ってどちらにせよ失うものが多すぎる。

しかし、カジュアルモードならトラックが底なしの泥沼にハマろうが、山道から転落しようが、雪解け水で信じられないほど増水した川に沈んで行こうが、メニュー画面から一瞬で拠点に戻ることができる。
ペナルティはない。(あったらキレる)

さらにこのゲームでのプレーヤーは裁量労働制で運送会社と契約を結んでいるらしく、陽が落ちようが深夜になろうが木材を運び続けるしかない。
言っておくがロシアの僻地に街路灯が満足にあるなどと思ってはいけない。
横道に一歩でも入ったらそこは漆黒の闇である。
月明かりすら深い森の中までは届かないのだ。
ヘッドライトだけを頼りに走り続け、あと一歩でクリアというところで崖から転落し、木材をばら撒きながら転がって行くトラックを見たいのなら止めはしないが、夜は寝るものだ。
道を熟知するまでは夜間走行はオススメしない。
カジュアルモードならペナルティ無しに朝まで時間を進めることができる。(ただしエンジンを切らないとガソリンは減る)

プレーヤーはマップを選ぶと用意された(もしくは自分で選択した)車両に乗り込んだ状態でスタートする。
君の所属する運送会社はあらゆる点において社員のことなど考えていないようで、そのエリアの情報すら満足に与えない。
マップ画面の大半は真っ黒に塗りつぶされている。
こんな状態で『木材運んでおいて、よろしこ。』なんてよく言えたものだ。

初期マップでわかるのは拠点となるガレージと木材切り出し場、製材所、給油所、監視所の位置くらい。
そこまでどのように道がつながっているのか、ましてや本当に道がつながっているのかさえ怪しい状態である。
実際走って行ったら道がつながってなかった、なんてことも多い。
そしてそういう時はたいてい泥沼にはまってリスタートを余儀なくされる。

そんな状態でキミは木材を運ぶことができるだろうか。
無策ではまず無理である。
新人研修を兼ねてキミに伝えておこう。
最初にやるべきことはマップを明らかにすることだ。
各地の監視所をおとずれマップの黒い部分を解放して道のつながりと地形を把握する。
この作業には小型のジープが向いている。
監視所は森の奥深くにあることが多く、とても大型のトラックでは小回りがきかない。
だが、小型のジープはちょっとした段差や倒木や水たまりを乗り越えるのも大変だ。
ルートを慎重に選び、時にはウィンチを使え。
これは究極のワンオペだ。
助けに来てくれる仲間はいない。

そしてある程度マップが把握できたら、次にスタート地点以外に存在するガレージを解放するのだ。
ガレージでは200リットルまでガソリンが補充され、車体のダメージが完全回復する。
さらに車両装備の変更ができる。
もちろん無料だ。
『すげぇ、うちの会社ふとっぱら!』なんて勘違いしてはいけない。
それ以外に会社からのサポートはないのだ。
ロシアの大地で究極のワンオペである。
とにかくガレージを解放しないと満足にマップ内を移動することすら叶わない。
中継基地として利用するのだ。
ガレージの解放にはポイントが必要なので、スタート地点のガレージに戻りトラックの装備を変更して出発しよう。
ガレージの解放には4ポイントが必要なので、一度で解放したい場合キャリーカートを引っ張って行く必要があるだろう。
もしくは2回往復してもいい。
なにせ時間に制限はない。(終わらないと帰れないともいう。)

マップが明らかになりガレージを確保したら、いよいよ本格的な運送ルートを選ぶことになる。
ここまでで相当な時間がかかっているはずだが、ここからが本番だ。
木材置き場と製材所をつなぐルートは自由に選べるが、なるべく路面状況が良い道を選びたい。
当然ながら木材を積んだトラック本体、またはトレーラーを牽引した状態は素の状態よりも圧倒的に燃費が悪い。
給油をする必要があるが遠回りな比較的安全な道を行くか、それとも給油せずに行ける最短コースを行くかは君次第だ。
男ならまっすぐ最短距離!と言いたいところだがそんなことではいつになっても家族の待つ家には帰れない。
男には堅実さも必要だ。

どちらのコースを選ぶにせよ、泥沼を完全に回避することなどできない。
まずは路面をしっかりと読むことが大事だ。
比較的乾燥し、浅いタイヤ痕が残っている地面は安全だ。
何も考えずに走ることができる。
しかし泥沼の中に深い轍が残っているようなところは要注意。
避けることができるなら避けるべきだが、どうしようもない場合は泥の中に入って行くことをためらってはいけない。
泥道を乗り越えてこそこのゲームの醍醐味といえよう。
ただし最悪のことを考えて、周りにしっかりとした木が生えている側を走るべきだ。
時にアクセルを踏めば踏むほど車体が沈んで行くだけという深みにはまることもある。
大抵の場合、落ち着いて(できればお茶でも飲んでアルフォートでも一つつまんだらいい)ローギアにしてアクセルをゆっくりと踏み込むことでタイヤの溝が泥をとらえ、脱出することができる。

が、闇雲にアクセルを踏んでしまって行くも戻るもできない時はウィンチを使え。
ウィンチは正義だ。
神が与えたもうたウィンチこそがこの状況を打破できる唯一の手段である。
底なしと思えるような泥沼に沈みつつある時でも諦めるな。
たとえ画面の中のドライバーがハンドルに突っ伏してうなだれていても、諦めるのはまだ早い。(ゲーム内のドライバーはちょっとしたことですぐうなだれる)
そのために木々の近くを走って来たのだ。
落ち着いて周りを見渡し頑丈そうな木にウィンチを取りつけろ。
ウィンチは裏切らない。
そしてキミを無事ぬかるみから救い出してくれるだろう、天から延びる一筋の蜘蛛の糸、それこそがウィンチの真の姿なのだ。

悪路を物ともせず、我が道を進め。
泥沼も雪解け水で増水した川(普通に考えてここを車で渡るのは無理だろうというようなレベルの川)も敵ではない。
しっかり頭を使い勇気を持ってアクセルを踏み出せばマシンは応えてくれる。
そしてひとつだけ覚えておいて欲しい。
失敗することは恥ではない。
何度も何度も失敗すればいい。
その度に自分のスキルが上がって行く。

このゲームにトラックのレベルアップやステータス強化なんていう、そこらのRPGみたいなヌルいお助け要素はない。
自分がレベルアップしろ。
通っていい道とそうでない道を見極めるんだ。
土を読め。
そうすれば必ず製材所に辿り着けるはずだ。
その時聞こえてくるハードロックの心地よさは達成したものにしかわからない。
これで一人前の男になれる。

そして全マップを制覇したら、ハードコアモードへ来い。
さらなる男の中の男を目指してハンドルを握るんだ。

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