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(18)子供向けと子供騙しの違いはどこにある

トイザらスを徘徊する成人男性がいてもいいじゃない

大人になって、子供向けのものの面白さに気がついた。

何回も書いているが、クレヨンしんちゃんが好きだ。
劇場アニメは絵が抜群にうまくて、デザインが奇抜で演出も凝っているという「作り手目線の好き」もあるが、純粋に面白いと思って視聴している。

ディズニーが好きだ。
映画もショートアニメも良い。
大人のシラフの頭では想像もできないようなことが次々と起こり、とてつもない技術でコミカルな映像になっている。
パークも良い。
景観もショーもパレードも良い。
アトラクションだと、イッツアスモールワールドがいちばんのお気に入りだ。
色んなところで色んなことが起こっていて、何回乗っても飽きない。

おもちゃ、絵本、児童書、子供番組、子供向けアニメ、遊園地、ゲームなど、子供を楽しませるために全力で作られたものは、とても素敵だ。
そこには、人間が根源的に「面白い」と思う要素と、それを的確に伝える工夫が詰め込まれていると思う。

大人の娯楽は、人間関係のゴシップと酒になりがちだ。
大人になってから友人と会う約束をすると、大抵は酒を飲みながら近況報告をするだけになった。
テレビやYouTube、ネトフリなどでは、愛や友情や憎悪などの「人間関係」がテーマのドラマが永遠に流行っている。

それはそれで好きだが、なんか寂しい。

子供の頃は、クラスの全員が自由帳を持っていた。
自分が考えたゲームキャラクターを描いたり、自分の作った迷路を友達にやらせたり、隣の席でも後ろの席でも、教室中のそこかしこで自由帳の見せ合いっこが起きていた。

下校中に木の枝が1本落ちていたら、それを拾って立てて、倒れた方向に行ってみようと探検した(今思えば通学路から外れるのは危険行為すぎる…)。

家族で遠出するときは、姉弟で車窓から見える自動販売機を数え、どちらが多く見つけられるかを競った。

身体ひとつあれば遊びを発明できた。
何でもかんでも面白がれた。

子供向けのコンテンツには、子供の面白がる力を感じさせてくれるものが多いから好きだ。
子供向けアニメの主人公は子供で、子供の目線で世界を見ている。
全てが真新しい体験で、曇りのない感性で全てを吸収していく。

トイザらスを歩くと、大人にとっては「こんなの何が楽しいんだ」というおもちゃがたくさんある。
ブロックを穴にいれるだけ、電車がレールに沿って進むだけなど。
しかし、子供の頃は、それだけで確かに楽しかった。
おもちゃは想像力を広げるきっかけにすぎなかったが、それも想像力を掻き立てる仕掛けが詰め込まれているからだ。

そんなこんなで僕は、子供もいないのに、すすんで子供向けコンテンツを求める成人男性になってしまった。

おや、と思うもの

マニアというほどではないものの、同世代の子供がいない男性の平均値と比べると、かなり子供向けコンテンツに注目しているほうだと思う。
子供向けは力を抜いて楽しめるからとても良いが、ごくたまに、これは「子供向け」ではなく「子供騙し」だなと思うことがある。

子供はこれくらいで面白がってくれるだろうという甘えを感じるのだ。
確かに子供は何でも面白がる天才だが、だからといってテキトーに作ると見抜かれる。
子供は大人をよく見ている。

度を越して教訓じみているなど、子供を操ろうとする大人の意図が透けて見える場合も興ざめだ。

いずれの場合も、「子供だから」という舐めが混入しているのが良くない。

リスペクトの問題

子供騙しは良くないというものの、自分の作品が本当に子供騙しでないと言い切れるか?とも思った。

絵も文も映像も、何か作品を作るということは、見る人の感情を、ある程度操るということでもある。
狙って視線誘導したり、状況や感情が伝わるような演出をしたり、受け手の心情をコントロールする技を駆使することが多い。

特に子供向けの作品は、最初から伝えたいテーマが教育的である事も多く、押し付けがましい印象になりかねない。

これは「子供騙し」とも取れるのではないか?

考えたが、客観的に判定方法は思いつかない。
だって、スピリットの問題だし。
作り手が受け手に、伝えたいことを本気で伝えようとし、楽しませようとする誠実さが、あるかないか。
それだけの違いのような気もする。
自分本位の独りよがりだったら子供騙しになる(※)し、誰かを想って作ったものだったら良い物になる。

根拠は全く無いが、そう思って作っていた方が良い。

※あくまでエンタメ作りの範囲で、自己表現としての芸術は除きます。自分の為に作ったものの美しさに感動することもたくさんあります。

そんなわけで、子供に向けてものを作るときは、自分も子供になって、全力で楽しいものを作りたい。
それを見た子も楽しい気持ちになって、その後の人生でふとした時に思い出すような、素敵なものを作りたい。

教室で友達と自由帳を見せ合いっこした時のように。

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