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(23)ぼくはいまつよくなっている

繁忙期を討ち取ったり

忙しくてたまったもんじゃない。

印刷業界は、年度末が書き入れ時だ。
僕が勤める会社も御多分に洩れず、正月休み明けから、週6の13時間勤務が3ヶ月ほど続く。
たいへん分かりやすい繁忙期だ。

社会人経験の長い会社の猛者達の中には、「このくらい忙しい方がテキパキ動けてちょうど良い」という人もいるが、こちとら社会人3歳の赤ん坊だ。
体感的には「目が回るほど」というレベルではない。
カレンダーは締切でびっしり、仕事が片付くスピードよりも積み上がるスピードの方が遥かに速く、1日のタスクの半分が片付いたと思えば定時、怒涛の残業であっという間に終バスの時間である。
ドラム式洗濯機の中を走らされているような、めちゃくちゃな毎日である。

そんな繁忙期も、今週から幾らか落ち着いてきた。
僕の仕事は印刷データ作りまでなので、印刷が始まってしまえば格段にやることは減る。一方で下流の工程を担う社員は、年度末納品に間に合わせるためにフル稼働していてお気の毒様だが、これまで散々彼らに急かされてきたので、いい気味だと思う余裕も出てきた。

忙しいと、身の回りのメンテナンスに気が回らなくなり、ダメージを受けやすくなる。
線路を敷きながら汽車を走らせ、部品が取れてもセロハンテープでくっつけて誤魔化すだけなので、いつ爆発四散して空中分解するかもわからない。

そんな日々を少しでも快適に過ごすためには、ストレスとの付き合い方が重要だ。

繁忙期を乗り切りつつある今、本当はハチャメチャに羽を伸ばしまくりたいところをぐっと堪え、ストレス対処法の反省会をしておきたい。
もはやノーチの活動の制作日記でもなんでもないが、これは来年度の自分への覚書だ。

意識してやると幸せなこと

今の業界に転職したのは一昨年のことなので、今回の繁忙期は2回目。ズタボロだった前回に比べたら、うまくいったほうだと思う。仕事に慣れたのはかなり大きいが、その分作業も倍増した。その割にはうまくやれたと思う。なんか特別なことしたっけなと思い返す。
特別な対策というより、日頃の小さな心がけはあったなかもな…

  • 仕事中はポジティブに振る舞う
    マイナスな発言は伝染するので、仕事を頼まれて嫌な顔したり忙しアピしない。

  • よくしゃべり声を掛け合いやすい状態を作る
    よっぽど不利益になるような情報以外は、基本的に余計だと思っても共有した方が自分が助かることが多い。

  • 不満を感じたら一旦咀嚼
    すごくモヤることがあったら、その場で騒がず整理し、場所を改めて上司に伝える。

  • 小タスクをためない
    ひとつひとつのタスクがたいしたことなくとも、沢山あるだけでパニックになる。一瞬で片付きそうな小タスクは、発生した瞬間に片付ける。

  • 全力で休む
    休憩時間は意地でも仕事をしない、仕事のことを考えない。イヤホンを突っ込んでくだらない動画を見る。

  • デスク周りを綺麗にする
    机上や引き出しの中が散らかっていたり、モニターの上にホコリがたまっていたりすると、無意識下でちょっとダメージになっている。

  • 身だしなみを整える
    前髪、眉毛、爪が伸ばしっぱなしだと、「いつか切らなきゃなぁ」って考えているエネルギーがもったいない。

  • トイレ休憩で長めにサボってストレッチ
    職場で唯一1人になれる空間なので、無駄に大暴れすると正気を保てる。

  • 美味しいコーヒーとお菓子のストックを切らさない

文にすると大層つまらん。
ひとつひとつを書いている時は、「こんなに小さな心がけで繁忙期を乗り切れるなんて大発見じゃないか!」とも思ったが、書き終わって3秒後に、世界中の自己啓発書で2億回こすられている内容だと思い直した。

しかしある意味真理なのかも。
どれも本当に些細なことだが、衝動から遠い理性的な行動とも言え、できる大人は当たり前のようにやっていることだ。
くだらん、つまらん、というむず痒さも、結局は自分を律して「ちゃんとする」ことこそが、強く生きる秘訣だと思いたくないのかもしれない。
それが真理であるならば、ストレスに悩む自分はつまらんことすら出来ていないことを認めることになるからだ。

僕は今強くなっている

ひとつだけ、ストレス耐性を上げるために役に立ったチップスがあったのだった。
それは、前にTwitterか何かで見かけた、「俺は今強くなっている」と心の中で唱えるというもの。
自衛隊員がつらい訓練を乗り切るためにやっているというような文脈で紹介されていた気がする。

これが本当に効果があり、有難かった。

はじめのうちは、そうポジティブに思えれば苦労しないだろうと思いつつも、口では「強くなっている」と言って自分を騙すことにした。
明らかにキャパを超える仕事で帰りが遅くなっても、一生懸命企画を考えた入札案件に落ちても、「いい経験になりました」と言って笑う。

我ながら感じの良い若者の振る舞いだ。
本当に心の底から「強くなっている」と思うのは難しいが、嘘も通せば本当になる。
難易度の高い仕事や逆境ほど、ゲームで言う経験値メーターがチャリンチャリン、実績トロフィー解除だと思えば、まあ良いかという気持ちになる。

似たようなことを、カービィやスマブラの生みの親、桜井政博氏がYouTubeで言っていた。

「苦労は忘れる。作品は残る。」

一般的に想像しうる”マックス忙しい”とは比にならないくらいの修羅場をくぐり抜けてきた桜井氏でさえ、苦労は忘れると言ってるんだから、僕が直面している平凡な忙しさくらい、まあ何とかなるだろうと思える。
自分がやった仕事は残るし、経験は蓄積されていく。

2回目の繁忙期が終わりつつある今、僕は間違いなく、僕の人生史上最強になっている。
それが救いだと思って、明日も働こうと思う。

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