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挿絵のお仕事!武器と刀剣と防具

こんにちは。ノーチのしっぽ研究所の¥0sukeです。

以前、昆虫本の挿絵を担当させていただいた時のことを書きましたが、その時の編集者様がノーチのしっぽ研究所を推薦してくださり、なんと次のお仕事もいただいてしまいました。

それが、古今東西の武器と防具について紹介する『大迫力! NEO 伝説の武器・刀剣・防具大図鑑』です。

今回僕が担当させていただいたのは、見開きイラスト3点と、コラムイラスト6点。
1つずつ制作裏話を紹介します。

キルケの魔法薬

ギリシャ神話に登場する魔女、キルケが用いた毒薬です。
キルケはオデュッセウスの部下たちをもてなす振りをして毒を盛り、魔法で豚に変えてしまったという逸話があります。
今回描いたのは、なかなか部下たちが戻らない事を不審に思ったオデュッセウスが豚に変えられてしまった部下たちを目撃する、という場面です。

ラフ

「宴の後に酔いつぶれてすやすや眠る豚たちと、魔法薬を隠しながら妖しく微笑む魔性の美女」という状況が伝わりやすいよう、もっとも目立たせたい魔法薬を手前、発見者のオデュッセウスを奥に配置。
薬の魔力や魔女の恐ろしさ・美しさを強調したかったので、場所は薄暗い洞窟内に設定しました。

完成したイラスト

人間が魔法薬によって豚に変えられたという経緯をより伝わりやすくなるよう、今まさに毒を飲まれたご馳走を口にして豚に変わっている最中の場面に修正。
魔法薬の瓶は、キルケが薬草学や薬学に精通していることや、男たちを次々に動物に変えていったというお話から着想してデザインしてみました。

折りたためるロバ

続いては、中国の道教神話に登場する八仙の1人、張果老が乗っていた白いロバです。
このロバは幻術によって動き、使わない時は紙のように折りたたんで小箱にしまうことができたとされています。

ラフ

張果老が小箱を開いてロバを繰り出している場面を描いてみました。
「折りたためる紙のロバ」ということで、飛び出す絵本やびっくり箱のように、箱を開くとたちまちパタパタと展開されてロバの形になっていく、というようなイメージにしてみました。

完成したイラスト

完成したものがこちら。
ラフ時よりも折り紙感のある部分を増やし、質感も紙から徐々に毛皮っぽく移り変わっていくよう変化をつけています。
また、ラフ段階では水墨画風のタッチで仕上げる想定でしたが、幻術で動くロバの登場を印象づける為に、月夜の下で煙を纏って輝く様子にかきかえました。

小狐丸

刀鍛冶の宗近が打った名刀「小狐丸」に関するイラストです。
宗近は一条天皇より刀を打つよう勅命をうけましたが、優秀な助手が見つからず途方に暮れていました。
そこに稲荷明神の化身である狐が現れ、交互に鋼を打って鍛える「相槌」を手伝った、という言い伝えがあります。
今回のイラストではこのエピソードを描きました。

ラフ

この言い伝えは能や歌舞伎の演目、絵画の題材としても人気らしいのですが、狐の姿で相槌を打つのには無理があるので、大抵の場合は稲荷明神の化身は擬人化されて描かれます。
しかし今回は「狐の姿で描いてほしい」「相槌を打たせるのが難しければ刀作りを見守っている様子で」とのオーダーをいただいたので、ラフ段階では、稲荷明神が降臨している風にしてみました。
また、本来は相槌を打つ工程(鍛錬)では、まだ刀の形はできあがっていないはずなのですが、今回は状況の理解度重視で、刀に見えるように描きました。

完成したイラスト

ラフ提出後、やはり狐の姿のまま相槌を打たせたいとのご要望があり、ポーズを修正しました。
また、イラストの中央部分が製本した時に隠れてしまうので、重要な部分に被らないように調整しました。
ちなみに、背景にうっすら神棚が見えますが、刀作りは祭壇の上で行う神聖な儀式でもあり、仕事に取り掛かる前に礼拝を行うと知って描き入れたものです。

コラムイラスト

今回の書籍では、メインの見開きページの間に入るコラム解説のイラストも6点ほど担当させていただきました。

完成したイラスト

(左上)
日本の古武術「杖術」の神道夢想流を拓いた武道家、夢想権之助が、神童に手解きを受けているシーン。
(上中央)
古代中国の刀鍛冶干将とその妻莫耶の悲劇を描いたイラスト。干将は呉王の命で剣を打っていたが、金属が溶け合わず頓挫。イラストは莫耶が神に自らを生贄として捧げるため、炉に身投げするシーン。
(右上)
妻の犠牲のお陰で金属が溶け合い、剣を完成させることができた干将が、呉王に剣を献上しているシーン。
(左下)
アーサー王伝説が2本目のエクスカリバーを湖の精霊ヴィヴィアンから授かるシーン。
(下中央)
持ち主を不死身にするエクスカリバーの鞘を手にし、大勢の敵を切り倒していくアーサー。
(右下)
深い傷を負い死を覚悟したアーサーが、部下を使い湖の精霊ヴィヴィアンにエクスカリバーを返すシーン。

まとめ

前回の空想科学昆虫図鑑の挿絵は比較的得意分野でしたが、今回のテーマは「武器、刀剣、防具」ということもあり、ほとんど予備知識のない未知の分野でした。

そのため、モチーフのバックストーリーを理解したり、過去の美術作品などではどのように解釈され描かれてきたのかを調べたりと、下調べにはかなり多くの時間を費やしました。

イメージだけで描いてしまうと、伝説の中の歴史的事実や文化と大きく逸れた絵になってしまいます。
児童向けの書籍はインパクトや奇抜なデザインの方が重視されるべきとの考え方もあると思いますが、幼い頃に見た絵の印象は長く記憶に残るものなので、誤解が少ないようにしたい、というのが最近の僕の信条です。

今回の編集担当、えいとえふ様にはたくさん資料を提供していただき、とてもスムーズに情報収集ができたと思います。本当にありがとうございました。

今になって気がついたのですが、見開きイラスト3点はどれも動物が登場するものだったので、よりいっそう楽しんで描くことが出来ました。
もしかすると、えいとえふ様がノーチのしっぽ研究所の普段の作品を知って、そういうイラストを回していただけたのでしょうか…?
だとしたらなんという細やかで嬉しい配慮なのでしょう…

最後に告知!


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最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは。

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