株高の背景や先行きを考える

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59759750Z20C20A5EN2000/

5月の日経平均は結局、2万1000円台と3ヶ月ぶりの高値水準を回復して終えました。
先週は急速に伸び悩んだり、前日終値を挟んで動いたりする日もあり、ここまでの急ピッチな上昇で、若干、息切れ感もでてきてるのですが、2万1500円を割れることなく底堅く、むしろ強い展開。2万2000円を伺う値動きでした。

上昇の背景はなにか。
まず、アメリカ株の上昇です。
アメリカの経済指標は1年前に比べると悪化しているのですが、4月分と比べると5月は減少幅が縮まっているものが出てきました。
一部の経済再開や、今後の正常化への期待から、マーケットには経済指標を前向きに受けとめるムードが広がり、アメリカ株は買い戻される動きに。
ニューヨークダウは、2万5000ドルを回復し、2ヶ月半ぶりの高値水準を回復しました。

そして、日本も経済改善への期待感が。
緊急事態宣言が徐々に解除されたことに加え、首都圏や北海道も月末を待たずに解除となり、止まっていた人や物、サービスといった経済の動きが再開することへの安堵感が広がりました。

他には、金融政策による世界的な過剰流動性相場ということ。FRB=アメリカ連邦制度準備理事会が無制限の量的緩和を決め、ECB=ヨーロッパ中央銀行、日銀も金融緩和の継続で足並みを揃えました。これにより、お金が市場へジャブジャブに流れてきていると言われています。

そして、先進国をはじめとした各国の財政政策も追い風に。コロナで経済活動がとまり、ダメージを受けた企業への支援策や、国民への支給で、悪化した経済を支えようというものです。日本でも、先日、2020年の第2次補正予算が閣議決定されました。

そして、外出自粛で、お家で投資をする人が日本も含めて、アメリカなど世界で増えていること。
日経平均が3月19日に年初来安値をつける中で、そろそろ買い場ではないかと考えた在宅勤務になった方々が株式投資に参入してきたという話も聞こえてきます。
実際、ネット証券の口座数は増えているようです。日経CNBCの視聴者も増えているとか。有り難いことです。

5月の日経平均は月間で、2ヶ月連続で上昇しました。国内感染者が一時期よりいったん落ち着いていることもあり、総悲観の時と比べると、ひとまず安心感がでてきています。

それに、アメリカでは11月に大統領選を控えていて、ここからマーケットにマイナスになるようなことをトランプ大統領はしないのではないかという見方もあり、先高感も根強くあるのかもしれません。

東証一部で年初来高値を更新する銘柄が増えていて、この戻り相場の局面でよく目にとまったのは、ヤマトHD、SGSHD、サイバーエージェント、オムロン、キーエンス、エムスリー、サイボウズ、GMO、モノタロウ、ウエルシアHD、クリエイト、コスモス薬品。
第一三共、中外製薬、テルモなど上場来高値を更新。
マザーズ市場ではバイオベンチャーやIT系企業も上場来高値をつけていました。コロナをきっかけに、新興市場の銘柄は一段と注目を集めています。ここからは業績などチェックしていくことも大事になりそうですし、上下に変動率が大きくなることには注意していてほしいです。

東証1部に戻ると、DyDo、カゴメなどの年初来高値の更新も目立ちました。
また、この前、noteで取り上げた食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地や、
電子部品で唯一増益予想の日本電産も分割後の高値を更新。
今期業績予想が増収増益のペットの保険会社アニコムHDも、年初来高値を更新。ペットは大事な家族ですからね、微笑ましくみてました。

このように東証1部で、年初来高値を更新した銘柄を見ていると、コロナの中で、業績をみながら買われているものが多い印象です。
また、総じてみると、景気に左右されにくいディフェンシブ関連銘柄が多い印象もあり、これから景気が悪化することに備えているようにも思いました。

日本の経済指標といえば、足もと急速な悪化傾向になっています。
例えば、先週末発表された有効求人倍率=仕事を探している人ひとり当たりに、何件の求職者があるかを示す指標は、4年ぶりの低水準でした。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL28HU9_Y0A520C2000000/

厚生労働省が先日、コロナの影響で、解雇や雇い止めになった人が1万4千人を超えたと発表していますし、すでに、新規採用を見送ったり、ボーナスや賃金を見直す企業のニュースもでてきているので、たぶんここからは相当な景気悪化が控えているように感じます。

緊急事態宣言が解除された後も、経済が正常化するまでには時間がかかりそうで、もともと厳しくなってきていた企業にとって正念場は続きそうです。
そうしたことを考えると、今年はここからすっかり回復していくような展開にはならないでしょう。米中対立への懸念も残りますからね。
それに、これまで日本経済を支えた大きな要素はインバウンドでした。
世界でコロナウィルス第2波への懸念がある中、残念ながらそう簡単にインバウンドは戻ってこないでしょう。
東京もそうですが、特に地方経済が心配されます。

そんな中でも、コロナをきっかけに大きく変わった世の中で、逞しく成長していく銘柄を、今後は選別していく局面になっていくのだと思います。

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