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『NATURE TALK 02』野生動物に迫る問題とわたしたちの選択②

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1、生息地の消失 の補足

人間の活動による生息地の減少や自然破壊は、どの野生動物や生き物、植物にとっても脅威です。
しかし元々住んでいた土地を奪われ追い出されたのは、野生動物だけではありませんでした。アフリカの先住民、アメリカンインディアン、アボリジニなど先祖代々の土地を知り、守り、知恵と技を持って自然と共生していた人たちは、土地も命も権利も奪われ、狭い痩せた土地に追い出されました。
辛い歴史を経てようやく返されたわずかな土地でも、昔のようには生活できません。せっかく作物を育てても、200頭もの象に村を囲まれて畑を荒らされることもあります。想像するだけで恐ろしい光景です。
村人にとってゾウは害獣ですが、象を傷つけてはいけないことになっています。畑の周りにロープを張り巡らしたり、夜は交代で見張りをしたり、ゾウが近づいてきたら大きな音を出したり、光を当てて追い払います。しかしゾウは賢いのでやがてそれに慣れ、ロープの切れ目を探して入ってくるようになります。どんなに被害をうけても政府からの保証はありません。
人間のすみかと野生動物の生息地が近づくことで生まれる軋轢はとても深刻です。
さらに密猟による悪循環も加わっています。
野生動物そのものと生息環境、野生動物のすぐそばに住む人たちの暮らしを守ることは、同じように大切です。

2、密猟と違法取引  の補足

象牙は古くから使われてきました。
日本でも奈良時代の頃から使われ、正倉院にも楽器用のバチ、刀の鞘などが納められています。
この頃は自然死したゾウから牙が取られ宝物として扱われていましたが、銃などでゾウを殺せるようになると、象牙がたくさん採れるようになり、日本に限らず色々な国で多く使えるようになりました。
そしてゾウの生息数が少なくなり、「ワシントン条約」(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)が締結されると、乱獲や密猟が抑えられました。
しかし20世紀の終わりころ、日本を含むアジアの経済発展をきっかけに、再び象牙の需要が高まりました。裕福になった人たちは、富の象徴として象牙をほしがりました。解熱剤やがんの治療薬などとしての漢方薬にも使われています。
象牙の需要はあまりなくならないまま今に至っています。

日本から中国への違法輸出

世界最大の象牙の輸入・消費国であった中国が2017年12月、国内市場を閉鎖しました。アジアでも次々に象牙市場は閉鎖され、最近ではシンガポールでも2021年9月から国内取引が禁止されました。
日本の市場はまだ開いていて、日本で購入された象牙が海外へ持ち出されるケースが問題となっています。2011年~2016年の6年間の象牙の日本からの密輸出は、2.42トンに及びました。
楽天市場、メルカリ、ヤフー、ヤフオクなど大手のプラットフォームは取引を禁止しています。

マンモスの牙

また、ワシントン条約で守られ取り引きするのが難しくなった象牙の代わりに、マンモスの牙を掘るハンターたちが現れました。
地球温暖化で溶けたシベリアの永久凍土にマンモスの牙を掘りに行き、それを売るのです。
永久凍土が溶けるとメタンガスが出ます。メタンは二酸化炭素以上に温室効果が高いガスです。
私たちは地球の資源を活用して生活しています。しかし、欲望のままに使いたい放題だとどうなるか、地球を見ていると分かります。
すでにマンモスは絶滅していますが、マンモスの牙を流通させることは象牙の需要を加速させているように思います。

・終わりに

自然界を見ると菌類と植物、昆虫と植物、鳥類と哺乳類、など、とても上手く共生しています。自然の輪のなかで驚くほどバランス良く関わり合っています。

『Nature Talk 02』はアフリカゾウが直面する危機をについて書く中で、特に人間と野生動物との共生について調べ、考えました。
どの問題も他の問題と複雑に絡み合っていて、簡単に解決することではないですが、自然保護のことを考えた時にそこに暮らす人間のことを抜きにしてはいけないということをとても意識しました。
野生動物を大事にするあまり、人間がないがしろにされているという事実もあると知ったからです。

私にその視点をくださった、UAPACAA国際保全パートナーズの岡安直比さんのメッセージ、
アフリック・アフリカというNPOで理事をされている岩井雪乃さんの、
『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。: 野生動物と共存するってどんなこと?』
という本が、現地の人たちの歴史や声を知るのにすごく勉強になりました。

私は、追いやられた世界中の先住民の、自然と共生してきた知恵や暮らし方に、これからの持続可能な社会をつくるヒントがたくさんあると思います。

ゾウは雄大な大地に暮らす、偉大な哺乳類です。
自然の中で愛情深く子育てし、尊厳ある姿をいつまでも見ていたいです。

【 参考 】
・『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。: 野生動物と共存するってどんなこと?』
  岩井雪乃・著
・WWF 『日本の象牙市場の最新動向、報告書『TEETERING ON THE BRINK:
  日本のオンライン象牙取引』を発表』
  『中国が象牙市場を閉鎖 アフリカゾウの密猟を止める最大の転機』
・ナショナルジオグラフィック『マンモスの牙を探せ』


日本国内の象牙取引にまた動きがあれば記事にしたいと思います。

読んでくれてありがとうございます!


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