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リビングウィル(施設で死ぬか病院で死ぬか)

クオリティーオブライフ(QOL)
今の生活を(クオリティー)維持しなから、生きる(ライフ)と言う意味

治る見込みのない病気で、良く使われるんだけど、抗がん剤で体力なくなったり、副作用で苦痛を伴いながら延命するか、現状のまま体力を維持しながら人生を全うする、生き方の質の選択のことです。
その他に、高齢者にも使われる事が多いです。

 現在では治療によって、命を縮めたり後遺症が残ったりするような時、高齢により治療しても完治が認められない場合など、治療によって今の生活の質を保てなくなる時に選択を迫られる事が多くなっています。
QOLを選択した場合治療はしないで、苦痛を取り除く対処療法しかしなくなります。
これを、ターミナルケアと言います。
不治の病や高齢者の病気や老衰に、この二つはよく使われます。

家では父をターミナルケアで看取りました。
詳しくはマガジン「死を迎えた方や家族の方へ 闘病・介護など」の記事「ターミナルケア(死と向かい合うたびに思うこと)」をご覧下さい。

リビングウィル(LW)
意識や判断能力があるうちに、自分の最後の治療法を決めておく事

尊厳死の権利を主張して、延命治療の打ち切りを希望するなどといった意思表示のこと。
病院に入院していて危篤状態になると、医師は延命治療に気管切開をしたりすることがあります。
それを行いたくない場合、あらかじめ自分の意思を表示しておく事が大切です。


今から約30年前祖母が誤嚥性肺炎で亡くなりました。
二度目の脳梗塞で重い障害が半身に出てしまい、嚥下(飲み込み)障害で一度目の誤嚥性肺炎を起こしました。
祖母は足腰が不自由だったので施設入所していて、そこから入院したのですが、その時医師に経管食を勧められました。
胃ろうもあるけど、消毒などがあるから施設介護ではやらないと言われました。

※経管食
鼻から管を胃まで通し、流動食で栄養を取る方法
※胃ろう
お腹に小さな穴を開けて胃までチューブを通し、そこから栄養を摂る方法

と、同時に誤嚥性肺炎を起こすと、二度目は命が無いと宣告されました。
祖母は私が在宅で介護していた時に、将来寝たきりになって管につながれて生きるようになったら、管を全部抜いて殺して頂戴。と私に言っていたので、そのように医師に伝え最後まで口から食事をさせてあげてください。とお願いしました。
その頃、リビングウィルという概念が薄く、医者の言う事が聞けないのかと言わんばかりに、きつい言葉を浴びせられましたが、私は大好きな祖母の望み通りにしてあげたかったから、何のリスクを言われても構いません。それで祖母が亡くなっても責任は問いません。その事で一筆書いても構いません。と言い切りました。

祖母は半身麻痺があるので、舌も左半分麻痺していて、食事が上手く飲み込めませんでした。それでも食べると言う事は人間の本能なんだと思います。
祖母は少しづつでも食べようとします。「もぐもぐごっくん」と私が声をかけると、一生懸命食べようとします。
それを見ていた看護師が、嚥下が上手くできないからと、少量で栄養の取れる高カロリーゼリーを手配してくれました。
今では普通にスーパーや薬局に販売されてますが、当時そのような補助食品は知らなかったので、その心遣いにとても感謝したものでした。

やがて熱も下がり、無事に退院し施設に戻りました。
当時特別養護老人ホームは今のように数が多くはなく、介護保険も始まり何年か過ぎたばかりの頃でした。
今では考えられない事でしょうが、嚥下が出来ない入所者の食事は施設看護師が介助していましたが、ヘルパーと違って二人しかいないから、介助ができないからと言い経管食を勧めますが、散々嫌味を言われても、ここでも私ははっきりと断りました。
そして食事介助に時間が掛かるから、手伝いに来いとまで言われたので、仕事の帰りに施設に寄って、食事介助をしました。

顔を合わせる度に看護師が嫌味を言うので、私も心が折れそうになっていた時でした。
祖母は半身麻痺で思うように体が動かないので、筋力の衰えも激しかったのですが、ある日食事をしている時に、口に食べ物を含んだまま動かさなくなってしまったので、食べるのも疲れちゃうんだろうなぁ・・と思いこのまま食べられなくなくなっちゃうと、鼻から管入れて食べるようになっちゃうよ・・と諦め半分で祖母に言いました。

すると、祖母は急にびっくりするほど口を動かし、一生懸命食べようとしました。
よっぽど経管食が嫌なんだなぁ・・と思い、私も心を決めました。「最後まで口から食べさせてあげよう」と。

施設内のケアマネージャーに、祖母の意思を伝え、食べられない時は無理に食べさせなくても良いですから、最後まで口から食べさせて欲しいとお願いしました。
ケアマネージャーが食べないと管になっちゃうよ。と言うと口を動かし始める!とびっくりしてました。
そして、おばあちゃんは、余程経管食が嫌なんだね。と言い、承諾してくれました。

施設では病院と違って高カロリーゼリーの導入はしておらず、祖母は食べられる量が少ないので、少しでもカロリーの高いものをと、薬局を駆け回って流動食を探しで買い、とろみの元でとろみをつけて食べさせていました。
管理栄養士からは、食事摂取量が少ないから食事から取れる水分が不足し、脱水症状が起きるかもしれないと言われ、それを防ぐためにポカリスエットを買って来てとろみの元で食べさせたり、ヴィダーインゼリーを飲ませたり試行錯誤色々試してみました。

病院に掛け合って高カロリーゼリーを売ってほしいと頼みましたが医療用だからと断られ、インターネットでやっと探した補助食品ゼリーは施設専用品で売ってもらえませんでした。
仕方なく、事情を話し施設長にお金は払いますから、取り寄せて頂けませんか?と頼みに行きました。
施設長は取り寄せるのは構わないけど、どんな状態だか管理栄養士に先に聞いてからお返事しますと言われました。

ダメかなぁ・・と思いながら、次回食事介助に寄った時、管理栄養士に呼び止められ「施設長に何か言いましたか?」と声をかけられました。
補助食品ゼリーを買いたいとお願いしましたと答えると、「それでなのね」と言い、管理栄養士は施設長が入所者の栄養状態を聞いてきたので、どうしても食事で補助しきれない亜鉛類がある事を伝えたら、入所者全体のためになるならと、補助食品の導入を決定してくれたわよ。と教えてくれました。
管理栄養士も私の働きかけに喜んでくれ、これで食事が食べられない入所者にも補助食品を支給できると言ってくれました。
それを聞いてすぐに施設長を訪ね、お礼を言いました。
私が一生懸命動いてるのを見たら、今まで目が行き届かなかったことまで、管理栄養士から聞けたから、導入を決めたんですよ。とやさしく言ってくれました。

それから施設の食事は、レトルトパックに吸い口の付いてるゼリーを、すすっている入所者もいました。
ケアマネージャーが、補助食品が美味しいみたいで、みんな喜んですすってるわよ。よく頑張って交渉してくれたね。と言われたので、施設専用品だから買えないので、お金払うから買って下さいと頼んだだけです。
あとは施設長が管理栄養士と話して決めた事なので、私が関与したわけじゃないですよ。と言うと、あなたが言ってくれたから、施設長も気が付いてくれたのよ。管理栄養士も言えなかったことなんだから。とお礼を言われました。
そして、本当におばあちゃんの事が好きなのね。と言われたので、私にとっては、たった一人のおばあちゃんですから。と答えました。

それからは、きつい言葉を浴びせた医師も、脱水症状が出そうなので、施設回診で点滴をしてくれ、出来る事はやりますから。と言ってくれました。
私の祖母への思い、祖母の意思がみんなに伝わり、良い方向に動いてましたが、それもつかの間で再び誤嚥性肺炎になりました。

入院先の医師からは二度目だから、覚悟してくださいと言われました。
前に聞いていたので、「はい」とだけ答えました。
祖母は初めのうちは、普通にしていたけど、だんだん肺に吸収される酸素の量が(酸素飽和度)が減ってきて、時々苦しいと訴えていました。
鼻にチューブを付けていても、肺機能が健全ではないので、あまり酸素が体内に取り込まれないようです。

そのうち、意識が朦朧とする事が多くなってきて、点滴で脱水症状を防いでいても追いつかずに、唾液が固まるようになっていきました。
固形物となった唾液の固まりは、喉に詰まり窒息しそうになることも何回かあり、ネブライザー(薬品を霧状にして口の中に噴霧する機械)で防いでいても、吸引器を使わなければならないほどになってきました。
ベッドの頭上にある吸引した痰が入っている瓶は、日に日に血液が混じるようになり、やがて口を開けなくなってしまった祖母のベッド横の床頭台には、開口器が置かれるようになりました。

窒息しないために、無理やり口を開け吸引するからです。
血液混じりの痰は、喉が傷ついているからです。その痛みに耐えかねて、口を開けなくなってしまうのですが、病院である以上、命を守る事が優先されます。
最初から気管切開などは一切やらないで下さい。と言っていたので、最低限の処置だと思います。
でも、かわいそうだから、もう止めてと言いたくなりましたが、病院で死ぬと言う事はこう言う事なんだと思い知らされました。

やがてICUに入り、心電図や血圧計を常時つけるようになりました。
もうその頃は意識もなく、朦朧とした状態で開眼していましたが、眼球が左右に小刻みに常時動いていて、目が回っているようでした。
延命治療はしないで欲しいと頼んだから、特に何もしませんでした。
ICUに入って3日目の未明に病院から電話があり、駆けつけると心電図の音がピッピッと弱いリズムで鳴っていて、医師が点滴に注射器で何か薬品を入れているだけでした。
医師は呼吸バルーン装置で、手作業で酸素を送ってくれてました。
酸素が吸収されないのはわかっているのに・・と思いながら、黙って見てました。
やがてピッピッと言うリズムが徐々に間隔が広くなり、波形の山がだんだん低くなり血圧が低下していき、けたたましく緊急アラームが鳴り始め波形が徐々に平になり、やがて波形は一直線になりリズムを刻んでた音はピーっと言う連続音になりました。
医師は腕時計を見て、死亡時刻を宣告しました。
おばあちゃん。心臓が強かったんだね。と医師に言われました。
心臓が強い人は死ぬに死ねないと、聞いた事はあるけど確かにそうだなと思いました。
電話があってから、1時間半後位に静かに息を引き取りましたから。

リビングウィルと言えども、死に対して何が良い方なのかはわかりません。
自分の望んだ方法を、選択するのは自分です。それがリビングウィルです。
祖母の意思を尊重し、施設と病院両方でリビングウィルを選択しましたが、私自身は歳をとった時、祖母のこの経験を見てるので、施設入所も病院にも入りたくないなと思いました。
QOLもそうですが、何かあっても、119番に電話しない。電話すれば病院に運ばれ、何かしらの処置があるからです。そしてそれが、更なる苦痛を生むことになりかねないからです。


それと私は、死に対する恐怖心がありません。
一度経験した事があるからです。
家で生活していて、眠るように息を引き取る事を望むのは、誰でも理想的でしょうが、意識があるうちは、多少苦しみもあります。
でも、途中で意識がなくなります。
私は激しい痛みにより動けなくなり、1人暮らしだったために誰にも助けを呼べずに「あ・・私このまま死ぬんだ・・」と意識を失う経験をしたことがあるからです。
一度経験してしまうと、1人で死ぬってこう言う事なんだな・・と理解できた貴重な経験だったと思います。

この経験と脳内のメカニズムは、またの機会に書きます。









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