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エキストラ

どうも、俳優の肝数値高男です。
読者の皆様はどうせ「は?」って思っているのでしょう。でも、事実だから仕方ありません。なんてったって俺は映画俳優ですから。サンミュージックに所属していた某女優と打ち上げで近くの席になりましたから・・・と、書けば書くほど嘘っぽくなってしまうのは普段の行いが悪いからでしょうか。恐ろしいことに、全部嘘ではなく本当の話です。あ・・・いや「映画俳優」ってのは嘘かな。「エキストラ」でとある映画に出演したってだけの話です。

というのも、これは俺が社会人になりたてくらいの話。なので相当昔の話です。そうですねぇ・・・まだ地球ができて間もない頃で、光合成を行う生き物が誕生していなかったので酸素もない頃の話です。
就職した会社ってのは・・・って、今もこの会社でシコシコ働いているんですけれども、小さな小さな田舎町にありまして、ちょうど働き始めたくらいのタイミングで、とある映画が制作中だという話が舞い込んできました。なぜ上映前の映画の情報が俺の元に来たのかといいますと、なんとその映画のロケ地が俺が就職をした会社のある町なのです。

映画のロケ地になるとのことで、町は大騒ぎ!田舎はこういうことが起こると大騒ぎです。
いわゆる「北の国から」シリーズで富良野がバズったみたいに、我が町もバズるのではないかということで、町全体が本気を出して映画制作に協力することに。
いろいろなルートで役場の人間と繋がっている我が職場でありますが、当然 映画の制作の手伝いをしろ!という話になってきます。ある時「若者のエキストラが必要なので、ご協力ください。」との通達が。どうやら若者がたくさん出るシーンの背景に映り込む若者を、町全体で募集をかけているとのこと。若者ですよ・・・。今では32歳の汚いおじさんになってしまった俺でございますけれども、当時はまだ20歳とかですよ。肌もピチピチで、髪の毛に艶もあり、朝勃ちもしまくるスーパー若者でした。

エキストラ募集の話を受けて、当時の会社のボスがほぼ新人状態だった俺に「エキストラの撮影に行きなさい」と命令してきたのでした。なんのシーンだかわからないんですけれども、朝7時発のバスでロケ地まで行かされるし、そもそも映画になんか映るとかスッゲー恥ずかしいし嫌だなと思ったので断る気でいっぱいだったんですけれども、同じタイミングでエキストラの撮影に行くよう声をかけられていた女性の方がなかなかに可愛い方だったので、こりゃこの方と同じバスに揺られて撮影現場まで向かう道中で仲良くなって連絡先を交換するしか☆と、思った俺は「はい!行きます!!」とノリノリで返事をして当日行くことに。

びっくりするくらい早い時間に集合場所に行き、バスに揺られて1時間。撮影場所に到着です。
というか集合場所からバスに揺られて1時間ってのでお察しかもしれないですけれども、撮影場所が全然違う街だったのです。いやいや、この町での撮影じゃないんかーい!って話ですけれども、話を聞いたらメインの撮影は我々の住んでいる町で。他の特殊な撮影になってしまうと他の地域を使っていたらしいですね。

ちなみに撮影の内容ってのが・・・これ本当申し訳ないんですけど、内緒でございます。書けば書くほど、俺が住んでいる場所とかが特定されてしまいますから。しかも厄介なことにちょいとばかりマニアックな映画なので余計です。
ギリギリ書けることと言えば、「設定」くらいでしょうか。
先ほども書きましたが、俺は「若者集団」の中のひとりの役でエキストラに出演。「若者」と言ってもただの若者ではありません・・・。なんと「高校生」の役です!いやいや、「高校生」だなんて!かつては俺もリアル高校生だった時代もありましたが、遠い昔の話です。
この時ですら20歳でしたので、この年齢で制服を着させられるなんてのはかなり恥ずかしく、自分の制服姿を鏡で見た時に「キッツ〜!!!」って思ってしまったのですが、32歳になった今から考えたら20歳であろうとも、当時の俺の制服姿はそこそこイケていたのではないでしょうか。

少し離れたところに監督やスタッフ、そして俳優たちが演技をしています。そこから少し離れた場所に我々高校生集団の役をやらされているエキストラ達がいます。
俺たち高校生役は、とある動作を永遠にやらされたのですが、正直な話、俳優たちのセリフは聞こえてこないくらいの位置にいたので、何をやっているシーンなのかわからないのです。ギリギリ覚えていることといえば、俳優のひとりが大急ぎで走ってきて誰かに何か話かけているみたいなシーンだったような・・・。で、一連の撮影が終わったらメガホンを持ったスタッフが我々エキストラを元の位置に戻るよう指示し、同じ動作をまた最初からやらされるのです。

で、また俳優が大急ぎで走ってきてもうひとひりの俳優に何か話かけている、の繰り返し。
どのくらいの時間だったか覚えていませんが、同じシーンを何度も何度も撮影していました。印象的だったのが、撮影し直しのたびに俳優の腕につけていた腕時計の時間を戻していたことです。腕時計なんてカメラに映り込むのかどうかもよくわかんないし。映り込んでいたとしても見る人がいるのかって話ですけれども、そこまで徹底しているだけで「映画ってすげぇな〜」と思ってしまったのでした。
俺たちエキストラの動きは大したことなかったのですが、俳優さんは何度も何度も走らされて大変そうだったなぁ・・・。

「大変だった」って言えることの事はやっていないけど、その後エキストラの人たちと撮影の合間に仲良くなったり、一緒にお弁当を食べたり、一緒に行った可愛い人の連絡先も交換できたし楽しい1日になったのでした。
俺の人生で唯一のエキストラ出演作品となったわけですが、なんとこの映画、上映されたってのに観ることはありませんでした。
「普通は観るよね。」って言われるかも知れないですが「観ない」という「普通」もあるんですよ。
というのも、俺が小学生や中学生の頃に、修学旅行の写真が廊下にびしーっと貼られてて、好き写真を選んで購入できるという、カメラのデジタル化が浸透する前の時代にこういうシステムがあったのですが、自分が写ってる写真を買わない人って意外といたんですよね。まさにアレに似たノリで、エキストラで自分が写ってるはずの映画を、観ることがなかったのでした。本当のことをいえば興味が無かったのですが・・・。

映画上映からずいぶん時が経ち、先日友達と食事をしていて「そういえば肝数値高男はエキストラの経験あるよね。」と言われ、自分でも忘れかけていたあの映画のことを思い出しました。
「ああ、そういえば出たことあるよ。」って言われて「結構映っているの?」って聞かれたんですけれども「観ていないからわからないよ。」と答えると「えーなんで?観てないの??」と不思議がられます。「なんでって言われても・・・興味がないから。」と言うと友人が「観てみたい!」と言ってきます。なんせ上映からそれなりに経過している作品なので、マニアックな作品なので今ではもう観ることができないのではないか。そういえば、この映画 DVD になって発売されていたような気がしたのですが、それをメルカリとかで買うしかないのではないかな・・・と、思ったらなんとこの作品、Hulu で配信されていたのです!!!

それを知ってしまったら、もう観るしかありません。すぐに友人らと上映会を執り行いました。
自分が参加したエキストラのシーンはこんな感じだった とか、こんな感じの景色で、自分は高校生役で集団でいて・・・ってのをすべて説明してから、友人と俺で「映画を楽しむ」というよりは、俺がエキストラで参加したシーンがいつ来るか?今来るか?と、ソワソワしながら観ていました。

しかし、なかなか来ない・・・。ん?このシーン?って瞬間もありましたが、違いました。で、物語はどんどんクライマックスへ。あれ?エンディングの方で映るのかな・・・と、思ったのですが・・・なんとそのままスタッフロールへ・・・。

つまり、どういうことかと言いますと、俺が参加したエキストラのシーンがカットされていたのでした・・・!!!!
ガツーン!!マジか!!映画を観なかった俺が悪いんですが、てっきりこの作品に俺が映り込んでいるもんだと思っていました。しかし、まったく映っていなかったとは!!!
ガッカリしてしまったよ・・・!!!

「俺が映ってるシーンは今来るか!?もう来るか!?」という、あのワクワクを返してくれ・・・と、思ったけれども、どうすることもできないので、とりあえずこのテキストを執筆してモヤモヤを解消したのでありました。
そうそう、冒頭でも少しだけ書いたのですが、映画のほぼ主演の女優の方。今では「俳優」って言えばいいのかな?サンミュージックに所属していた某女優さんなんですけれども、この方と一緒に食事したのは本当の話です。って言っても、撮影で関係者にバレないように連絡先を交換してプライベートな時間で密会していたとかそういうカッコイイ話ではありません。

映画の撮影がまだまだはじまったくらいの頃なんですけれども、出演者と、スタッフと、エキストラの皆さんでバカでかい会場でバーベキューをするという謎の会があったのです。俺はあまり行きたくなかったのですが、撮影の時に連絡先を交換した可愛い人い「行きましょうよ!」って連絡が来て「もちろん行きますよ!」と会場へ。
会場内にいくつかバーベキューのコンロがあったのですが、そこに我々エキストラがずらりと入り、それぞれのコンロに出演者・スタッフがランダムで入ってきたのですが、そこに主演の女優さんが!

残念ながら当時俺はその女優さんのことを知らなかったのですが、直接見たらその辺にいるようなネーチャンでした。しかも喋り方がヤンキーっぽい感じの人で、個人的にはあまりしゃべりたい感じの人ではなく、結局一度も会話しないで終わってしまいました。今回、この映画を見てものすごく清楚な感じの役で出演していたので、ギャップを感じて一周回ってその女優さんのことが好きになってしまいました。誰かは内緒ですが!

という、どうでもいい話を今日は書かせていただきました。ところで、あなたの後ろにいる血まみれの女は誰ですか?


というところまで書いて文字数が4329文字になりましたので今日はこの辺でオヒラキにしたいと思います。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。明日も元気いっぱいにテキストを更新しますのでその時また会いましょう。 ・・・俺が逮捕されていなければ。

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