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私の罪悪感

夜さあ寝ましょうかとリビングの電気を消そうとしたら娘がひゃあとリビングに飛び込んできた。
何?と思っていたら、ゴキブリいますと。

娘も私も虫は苦手だ。
どうやら階段の壁にいるという。娘によるとかなり大きいらしい。

うちは山の高台に住んでいて、猫もいるせいかゴキブリはうちには住んでいない。
たまに庭とかで見ることはあっても
家の中では何年かぶりだ。
なので安心しきっていた。でるわけないと。
しかし久々に見ると山のゴキブリはでかい。ゴキブリの域を超えている。

娘はもう無理ですと戦意は放り投げている。私達の寝室は2階だ。見て見ぬ振りして2階にはいけない。すなわち眠れない。

私は殺虫剤を手にして、意を決して戦う準備をする。準備と言っても心がまえの話だけど。いつもなら旦那に頼む。しかしもう2階の寝室ですやすや寝ている。
階段にいるから、起こしに行くこともできない。絶対絶命だ。あきらめて


戦うのは私だ私しかいないんだという心構えをする。



意を決して階段のゴキブリと対峙する
私のほうをみる…がなんだか向こうは戦いたくなさそうに感じた。

敵意をむき出しにしてくるゴキブリもいるが、今回のゴキブリは気の弱そうなゴキブリに見えた。

お手柔らかにお願いします。
もう覚悟を決めているように思えた。

私は殺虫剤に手をかける。
シューっという音と共に白っぽい煙がでてきた。ゴキブリに届いているのか?というぐらい遠かったが…。

私は母親だから子供のためにここは頑張りどきなことは、わかってる。しかし手が震える。こわいものはこわい。今以上は近づけない。飛んでくる可能性もある。そして本当は殺めたくなんかない。

できれば玄関を開けるから静かに去っていってほしかった。話し合いで解決したかった。

しかし遠かったと思ったが、ゴキブリはよろよろしはじめた。

私はただ見守っていた。

すると階段横の洗面所によろよろしながら逃げていく。

私は恐る恐る後をついていく。

もうついてこないで。


そんな声が聞こえたような…


気がした。



ゴキブリはそのまま風呂場に入っていった。私は後をそれ以上追えなかった。


私はリビングに戻った。


娘がどうだった?と私に期待を込めた目で訪ねてくる。

もう大丈夫よ。

「やっつけたの?」

うん。まあそんな感じ。母は強しとはよく言ったものだ。

「えっどんな感じ?」

私は一連の出来事について嘘偽りなく話した。

「なんで息の根とめなかったの…
本当によろよろしてたの?…」

「それは生きてるじゃん!」


娘の言葉にびっくりだ。いやすぐには息絶えてはなくてもかなりのダメージは負わせたよ。
なんて冷たい言葉…猫にはあんなに優しい子が…。

だからぁ…殺虫剤効いてたからぁ…
彼の命は長くはないよ。元々覚悟は決めてたみたいだったし。

「それは母さんの勝手な思い込みだと思うけどね。ゴキブリの生命力しらないね。ああ私の部屋に来たらどうしよう?私今日寝れないよ!」


そんな…あんなに頑張ったのに…。
殺めるとかも嫌だったのに。
山に帰れば彼も野をかけまわれたのに…
お互いウィンウィンの方法きっとあったのに…

娘の言葉は私には殺虫剤並みの威力があった。

彼もこんな思いをしたのか…。


次の日お風呂や洗面所を彼の残骸があるはずと探した。正確には旦那にさがしてもらった。

私はまた一連の話を旦那にした。

かえってきた言葉は

なんでちゃんと殺すまでやらなかったの?風呂場まで追い込んだらあと少しじゃん。

やっぱり私が悪いのか…。

納得がいかない。ちなみに私の母親
娘にはおばあちゃんも一緒に住んでいる。

同じ話をしてみた。

はあ…なんで逃したの…。

悪夢をみているようだ。
逃してないんだよ。

どこかで息絶えてるよ。
みられたくなかったんだよ。
もがき苦しむ姿を。
追わないでって頼まれたんだよ。

こういうことになるから嫌なんだ。

ゴキブリと関わるのは。

この罪悪感はなんなんだろう?。

見た目の問題かな?みんなにそうとう嫌われているよね。


それからまた1日たって彼を発見した。

玄関の外の階段でひっくり返っていた。
カラカラになって。あの彼だった。

ああ頑張って外に出たんだね。
家に帰ろうとした?気の毒だー。
なんでうちに来たんだよー。

だけど、さようなら。


心の中でつぶやいた。


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