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Don't rain on my parade! あとがき

こーんばんは、七枝です。こちら拙作「Don't rain on my parade!」https://natume552.amebaownd.com/posts/48702903のあとがきとなっております。後書きから読む人がいるとは思いませんが、念のため。お約束の挨拶ってやつです。もしいらっしゃったら本編もみてください。

声劇台本制作バトルについて

さて、まず最初に今作ができたきっかけから。あの日、令和5年9月29日。私は大盛りさんと穂村一彦さんとオンライン飲み会をしていました。この三人の関係を端的に言うと、お酒という絆の上で結ばれた声劇台本制作仲間です。

それで、えーっと、たぶん、創作の悩みとかそういう高尚な話を……したんだっけな、どうだったか……なにぶん酒が入ってたので……最後の方、煽りあってたのはおぼえてるんですけども。そんなこんなで三人で同じお題で台本かいて誰が一番面白いか勝負しようってことになったんです。勝敗の決め方は個々人の独断と偏見です。
飲み会の中では「読者からアンケートをとろう」って週刊誌に魂を売り渡したのか?っていう地獄の提案もありましたが、回避しました。
いくら保守的と言われてもいい。私はまだ酒飲み仲間を失いたくない。

そんな思いで決めたお題は以下の通り。
納期:10月20日
登場人物:2人
文量:約30分程度(10,000字)
お題:「妖怪(おばけも可)」「果物」「ラストチャンス」

納期は穂村さんが、登場人物と文量はあみだくじ、お題は私のスペースに居たリスナーさん、穂村さん、大盛りさんが1人ずつ出し合いました。なかなか公平な条件設定が出来たのではないかと自負しております。どや。

勝つために何をしたか

勝利条件を曖昧にして、友情の持続を優先したはいいですが、勝負は勝負。やるからには勝たねばなりません。2人のファンにどう思われてもいい。私だけは私が勝ったと思えるものを書こう。それにはまずお二人の執筆作品の傾向を分析する必要があります。
「敵を知り己を知れば百戦してあやうからず」兵法の基本ですね。

まず敵のひとり、穂村一彦さんは声劇台本制作専門ではありません。横浜劇団「無題」の台本制作担当を担われており、声のみというよりも舞台台本の方をメインとされております。本人曰く舞台用に作った話を声劇ナイズしたこともしばしばおありだとか。
読まれたことがある方はおわかりでしょうが、穂村さんの作品はとても画が浮かびやすいです。登場人物が今どこに居て、どのように動かれてるか。それが明白で、とても生き生きされてます。群像劇を書かれても、そのシーンに描かれていない登場人物が何をしていたか想像することができます。
当たり前……と考えられるかもしれませんが、複数の登場人物を自在に動かして物語にオチをつけることって、書いてみると難しかったりします。
それを面白おかしくロジカルにこなされるのが穂村さんです。

次に大盛りさん。飲み会でお伺いしましたが、大盛りさんは長く声劇界隈に身をおかれていらっしゃるだとか。
某声劇アプリから大盛りさんを知られた方は、大盛りさんといえばコメディ!という印象をお持ちかもしれません。私も実はそうでしたが、長い経歴の中では色々なものを書いてきたと語っていらっしゃいました。
ですが、それにも満足せずまだまだ創作幅を広げたいとのこと。
たしかに最近の作品群を拝見してもそのとおり。
「夜のオフィスのラブロマンス」ではBLを、「アルカレコードゼロ」では少年バトル漫画風台本を。
また最近では「笑いの渦」と音響にもこだわったオーディオドラマを発表されてます。経験を積まれ、そこに満足せず試行錯誤されている、というのが
大盛りさんです。

私、このおふたりと勝負するんですか?いえ、棄権したいとは言ってないです。言ってないですよ。でもちょっと、お酒飲みすぎたかな……そんなことを考えてしまう秋の午後。

とはいえ、相手にかまけてばかりで自分の作品がおろそかになってもいけません。納期まで約20日と時間はあるものの、人の心とは締切に耐えうるほど忍耐強くありませんし、技量と経験で劣る相手にやれることはひとつです。場外戦術です。はやめに書きあげて相手にプレッシャーを与える。
「兵は拙速を尊ぶ」これも兵法のひとつです。

まず、脳内をピックアップして書けるものを書いていこう。その後に2人が書きそうな要素を除外して、私の中の最善を目指そう、そういう方針に落ち着きました。
正面突破できないなら搦め手で。勝てない勝負なら負けない勝負で。
いや、勝つ気はちゃんとありますよ。逃げ道用意してるだけです。
ええい、言い訳はここまでとしましょう。そんなこんなで私は台本を書き始めました。

初期草稿はこんな話でした

実はというと、「Don't rain on my parade!」は初期草稿は全く違う話でした。深夜雨降るバス停で男がひとり佇んでいる、というところは一緒でしたが、この男が抱えてる荷物には爆弾ないし毒性のガスを発生させる化学物質であり、自爆テロを起こそうと考えていて、それをドッペルゲンガーが止めに来るという……もっと鬱々とした話でした。
ちょうどこの間みた「カルト」っていう映画の影響うけてますね。この映画の解釈を自分なりにまとめたかったんだと思います。

が、書き始めてすぐこの草稿は破棄しました。おそらくこの内容で、お二人と被ることはないでしょう。でもあまりに……あまりにも、幸せではない。というかウケる対象がピンホールです。勝負という体裁である以上、アンケートはとらないにしても読者を意識するのは当然のことでしょう。ターゲット層は広めにとるべきです。なのでやめました。いつか書きます。

で、結果自社を告発するために死地にとびこむ男とそれを止める同僚(幽霊)の話になりました。うーん、ウケるのかなぁコレ……まあかぶることはないからいいでしょう。いいとします。私がいいといえばいいんだ。

ちなみにこの作品にでてくる「M307」という薬品は拙作「ララバイ・ハミングバード」https://natume552.amebaownd.com/posts/34517346?categoryIds=6261608にでてくる「M307」と同様です。
つまり死地に飛びこむ男・村雨くんは無残討ち死にということです。わかる人にだけ伝わればいい小ネタ。

この話を書く上で、オチだけは決めていました。穂村さんが書くお話も、大盛りさんが書くお話も、演者同士が同じ方向をみてハッピーにしろバッドにしろ、「やってよかったね」というお話が多いです。
なので、私は2人が決定的に決別する話にしようと。終わった後に「どうしたらわかりあえたんだろう……」っとやるせなさと共に語り合ってくれたらいいなと思って書きました。
あと会話のテンポのよさ。ナレーションも場面転換もなく、30分間2人が掛け合いをする。その心地よさを意識して書きました。
狙ったとこはできたんじゃないかと思います。

書き終えてみて

10月4日、私は書き終えました。制作期間正味3日です。どうだ早いだろ、がはは。英字タイトルの綴り間違ってましたけども。同日2時間後に大盛りさんも出来上がってましたけども。いいんだ、ひとつでも勝つとこがありゃ。

あとは座して10月20日を待つのみです。じたばたあがいても仕方ありません。

さて、ここまで読んだ皆さまは穂村さんの「Forest」、大盛りさんの「終末の昼下がり」を当然読んで下さったと思います。読んでない?ここまで3000字使ってネタバレに配慮してるんだぞ。以下から台本の核心部分にも触れるので、「台本は新鮮な気持ちで読みたい」って人はこの記事を閉じてください。

まず先に投稿された穂村さんから。
群像劇がお得意の穂村さん。2人劇で30分をどう使ってくるかな~っと思ったら、まさかの化けキツネ。可愛すぎるアイデアにときめきました。くるくると入れ替わり立ち代わり新たな登場人物が出てくる「Forest」ですが(しかもこの登場人物達がキャラ濃くて面白いのです)、その正体はすべてキツネ。自殺志願者の少女を止めるべく健気なキツネが奮闘します。登場人物がたくさんでるけど、真実は2人(1人と1匹)。そして2人の思い出を結びつける木いちご。
私たち3人の中で一番お題を違和感なく作品に落とし込んだのは穂村さんだな~という印象です。「妖怪」「果物」「ラストチャンス」どれも物語のキーでしたね。

そして大盛りさん。こう来たか!と膝を打ちました。シリアスとギャグが溶け合ってハチャメチャなんだけど面白い。特に宇宙人が「ワレワレハ」って言いながら禁断のりんごの話をするところは思わず笑っちゃいます。宇宙人と妖怪というズレた2人だからこそ、かみ合ってる。最後は悲しいけど幸せ。予想できない展開とまとめ方の上手さに舌を巻きました。もちろんお題もしっかり物語に巻き込んでます。正直「ワレワレハ」が面白くてフルーツの下り吹っ飛びそうになりましたけども。
これやるの楽しそうだな~素敵な台本だなと素直に思いました。

書き終えて……というか読み終えてですね。お二方とも真剣に勝負しにきてくださったのだなぁとしみじみ感じました。楽しかったです、とても。

私?私も真剣に考えて勝負しました。正直に言いましょう、私は「勝てない」と思ったので「負けない」勝負に挑みました。う~ん、でも「果物」お題の処理はさすがに雑すぎた気がするな……「Mac=アップル」出すのは逆張りしすぎたかな……要反省です。もしまたこのような機会をいただけたら、もう少し正面から勝負するよう頑張ります。
臆病な私から強敵に敬意を表して。台本バトル、ありがとうございました!




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