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写真エッセイ

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たゆたうようにつらつらと
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#街角スナップ

心の忘れ物

 映画「パーフェクトデイズ」で、街角の解体跡地を前に、お爺さんが平山さんに、ここなんだったかな? って聞くんですよ。  で、ふたりとも家の近所だったんですけど覚えてなくて。誰かが覚えてないと、すぐ忘れられてしまうんですよね。無かったことになっちゃうんですよね。何でも。  だから写真撮っとこう。散歩ついでに。日常を。って思っちゃいました。 PENTAX LX.

やさしくされると切なくなる

冷たくされると泣きたくなる天気のはなし  冬ですね。  先日、ちらちらちらりと今年の初雪が通り過ぎていきました。  気温は0.2℃。氷点下まで下がらなかったですし、積もるということもありませんでした。初氷をまだ見ていない気がするので、今回の初雪は上空の冷たい雲からのギフトだったのかもしれません。  雪は美しいのですが、寒いとなんだか泣けてきてしまいます。  子どものころ、冷たい夕暮れ、一度だけ泣きながら下校したことがあります。地吹雪吹き荒ぶ時などは、歩道など逆に危険

残滓のさらにカケラ、それをすくう「ポイ」

縁日の金魚すくいに、濡れたポイ  むかしむかし、私がまだ子どもの頃のことです。  春彼岸のお墓参りの日には、お祭りでもないのにお寺の門前に屋台が数軒並んでいました。流石に食べ物屋さんはありませんでしたが、子ども相手におもちゃ屋さんと金魚すくい屋さんが居たことを覚えています。  私はいままで一匹も金魚を掬えたことがありません(いつもおまけで一匹もらえます)。その時に使う、金魚を掬うための和紙製の道具を「ポイ」と呼ぶそうです。  ポイは最初に水に浸すのがコツだよ、と友人は言