空想

鬱陶しい人混みを抜け、誰もいない道を探した。どこまでも本当で、同時にどこまでも空想だったこと。時が経つほどその感覚は強まった。

時々誰かの空想を生きている感覚になる。私は私の中にしかいない。だけど誰しもが他の誰かの中にも存在している。それは恐ろしいことに思えた。

満ちていく蠍座の月が全てを見透かすようだった。人がまばらに通り過ぎる。季節が変わった。風がそよいだ。分からなかった。それで良かった。