ベットベトになったぷっちょ

向かいの電車に乗り込んだ。とにかく口に何か入れようと、カバンの中からベットベトになったぷっちょを取り出した。包み紙がベタベタしていた。それが何故だか無性に悲しかった。口の中に嘘の甘さが張りついて、急いで水で流そうとした。パワーバラードを聴いていた。今は信じたくないことも、いつかは時間の海に溶けてしまうのだろう。絶え間なく押し寄せる痛みや悲しみが、ちっぽけな弱さを浮き彫りにした。それなのに、全然現実味を伴っていない。時間の経過も麻痺していた。遠くのどこかで一人ぼっちになりたいという願望だけが、窓から見えたやけに真っ白な雲のようにぼんやりと浮かんでいた。