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「夏と秋」Webマガジン 第15号

【はじめに】
こんにちは、「夏と秋」です。4か月ぶりの公開となります。
Webマガジン第15号は、歌人の瀬戸さやかさんと秋月祐一の短歌推敲セッション、読者投稿欄でぐでぐを6本立て。短歌の推敲の過程をじっくりとご覧ください。

* * *

今回のマガジンは、

【短歌「愛について」/秋月祐一】
【読者投稿欄でぐでぐ(18)/瀬戸さやか】
【読者投稿欄でぐでぐ(19)/瀬戸さやか】
【読者投稿欄でぐでぐ(20)/瀬戸さやか】
【読者投稿欄でぐでぐ(21)/瀬戸さやか】
【読者投稿欄でぐでぐ(22)/瀬戸さやか】
【読者投稿欄でぐでぐ(23)/瀬戸さやか】
【カピバラ温泉日記/秋月祐一】

という内容でお送りいたします。

* * *

【短歌】

    愛について   秋月祐一

あなたとの日々は衛星5個、6個浮いてる星のお月見みたい

おねいちやん、ぼく知つてるよ蜘蛛の巣にポップコーンをぶちまけたこと

あなたには恥づかしいとこ見られても構はないんだ春のおもらし

手のひらの渦のぞきこむ人がゐて添へられた手のその温かさ

底のないコップはコップと言へるのか しかし、あなたはさういふ人だ

でも、ぼくは謝らないぞ 乾電池入りの味噌汁ごくりと飲んで

ごめんごめんジャングルジムにからまつた影ほどくのに手こずつちやつて

駅前のイオン・西友はしごする父の愛とか売つてないかと

こんなにもやさしい雨にぬれながらぼくもあなたも液体になる

あいにくと前世が朱欒でいらつしやる方には向かない治療法です

微乳好きとロリはちがふと言ひ訳をすればするほど遠ざかる月

* * *

*投稿者の瀬戸さやかさんと、秋月祐一のメールのやりとりを紹介させていただきます。短歌の推敲がどのようにして行われているのか、その様子をご覧ください。

【読書投稿欄でぐでぐ(18)】

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

こんにちは。
コロナ一色のご時勢ですが、お仕事に影響はありますか?
私の職場は大きく変わらずです。

でぐでぐへの投稿です。

【原作】
メールとふ手段手に入れたる君の「初メール」とふ文字うひうひし

意外性がないと言われそうですね。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご投稿ありがとうございます。

3月からのぼくの新しい職場は、コロナの影響ありまくりで、てんやわんやです。

それはさておき……

〉メールとふ手段手に入れたる君の「初メール」とふ文字うひうひし

このままだと、類想歌がたくさんありそうですね。

「メールとふ手段手に入れたる」は、字数的に省略したいところ。
その字数を、君の初メールの内容に費やしてみては、いかがでしょうか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案1】
初孫の誕生祝うメールにて「初メール」とふ文字うひうひし

これも類想歌がありそうですね。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

〉初孫の誕生祝うメールにて「初メール」とふ文字うひうひし

初孫の具体的な描写に、目一杯、字数を費やしたいような気がします。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案2】
初孫は我に似たりと言ひ切って「初メール」とふ文字うひうひし

どうでしょうか?

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

〉初孫は我に似たりと言ひ切って「初メール」とふ文字うひうひし

初孫は我に似たりと初メール

として、下の句は、どこが似ている、というような細部を詠んだほうが、よいのではないでしょうか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案3】
初孫は我に似たりと初メール眉が太くて額は広し

なんか、最初と違う作品になってきたと思うんですけど、まあいいか…

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

〉初孫は我に似たりと初メール眉が太くて額は広し

めでたい感じは、よく出ていますね。個別性をもうすこし追求したいような気はしますけど。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

き、きびしい…
頑張ります。

【改作案4】
初孫は我に似たりと初メール笑った時に下がる目尻が

個別性、どうでしょうか?

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。よくなったと思います。

【改作案5】
初孫は我に似たりと初メール「笑った時に下がる目尻が」

と鉤括弧でくくるか、

【改作案6】
初孫は我に似たりと初メール笑った時に目尻下がると

と伝聞調にすると、話者が明確になるような気がします。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

〉初孫は我に似たりと初メール笑った時に目尻下がると

の方がいいような気がします。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

では、このかたちを今回の最終稿とさせていただきます。的確なご改作ありがとうございました。

【最終稿】
初孫は我に似たりと初メール笑った時に目尻下がると/瀬戸さやか

上の句の文語調から、下の句の口語調へ変わるところが、「笑う」という内容とマッチしているような気がするのですが、いかがでしょうか。

【読書投稿欄でぐでぐ(19)】

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

お久しぶりです。
でぐでぐへの投稿です。

【原作】
よろよろと歩く柴犬に寄り添ってゆっくり歩く朝のお散歩

類型歌がありそうだとおっしゃられるかもしれませんが…なんかほっこりする光景だったので。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご投稿ありがとうございます。

〉よろよろと歩く柴犬に寄り添ってゆっくり歩く朝のお散歩

そうですね。「よろよろ」「ゆっくり」あたりを検討してみては、いかがでしょうか?

二句「歩く柴犬に」も、韻律的に詰め込みすぎのような気がします。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

二句に関しては「歩くワンコに」を考えましたが、ワンコはどうかなぁと思って柴犬を詰め込んだのですが…

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ワンコのほうが、韻律がゆったりして、いいと思います。

この歌、犬も飼い主も老齢で、というのが眼目かと思うのですが、「ゆっくり歩く朝のお散歩」が説明になってしまっているのが、惜しいような気がしました。短歌は、説明よりも(小さな具体による)描写が活きる詩型です。

ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

全然違うものになってしまったのですが、

【改作案1】
お互いに歳をとったと愛犬をつないだひもはたるませ気味で

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

〉お互いに歳をとったと愛犬をつないだひもはたるませ気味で

たるませたひもで、自分と愛犬の老いを表現した点、巧みだと思います。

ひとつ気がかりなのは、これが散歩の歌だと、読者が理解できるだろうか、ということです。(問題は「つないだ」かもしれません)

あと「愛犬を」は「愛犬に」とする可能性はないでしょうか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

「愛犬を」を「愛犬に」とする可能性はありますし、考えていたら、「愛犬と」の可能性もあるかなと思えてきました。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

「愛犬とつながる」はどうでしょうか。

【改作案2】
お互いに歳をとったと愛犬とつながるひもはたるませ気味で

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

〉お互いに歳をとったと愛犬とつながるひもはたるませ気味で

「愛犬とつながる」いいと思います。ひもだけでなく、愛犬との心のつながりのようなものを感じさせてくれます。

「歳をとったと」は、「歳をとったな」と二句切れにする可能性もあるのかな、という気がしました。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

「歳をとったな」は私も考えました。その方がいいかもしれないですね。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

「俺たちも歳をとったな」というのも考えましたが…

【改作案3】
俺たちも歳をとったな愛犬とつないだひもはたるませ気味で

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

〉俺たちも歳をとったな愛犬とつないだひもはたるませ気味で

よいと思います。「お互いに」よりも、主体と愛犬に踏み込んだ感じで、共感性が高まったように思います。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

俺たちも歳をとったな、はいいのですが、そうすると、「愛犬」という言葉がちょっと硬い感じがしてきました。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

なるほど。「愛犬」はちょっと客観的に、引いた感じがするということですね。なにか、いい手はあるかしら?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

今のところ、「ワンコロ」しか思いつかないです…もっといいのがありそうな気がするんですが。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

それともやっぱり「柴犬」?別に柴犬にこだわっているわけではないですが。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

いまのところ、「愛犬」がいいように思います。

「柴犬」は、犬との距離がちょっと遠いように感じられます。

他には、犬の名前とか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案4】
俺たちも歳をとったな愛犬とつながるひもは少したるんで

「愛犬」がいいようです。
結句を少し変えてみましたが、どうでしょうか?

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

〉俺たちも歳をとったな愛犬とつながるひもは少したるんで

〉俺たちも歳をとったな愛犬とつながるひもはたるませ気味で

「たるませ気味で」のほうが韻律に張りがあり、いいように思います。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

それでは、

>俺たちも歳をとったな愛犬とつながるひもはたるませ気味で

こちらを最終稿でいいでしょうか?

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

はい。

【最終稿】
俺たちも歳をとったな愛犬とつながるひもはたるませ気味で/瀬戸さやか

とさせていただきます。

原作から大きく変化し、深みのある歌になったと思います。「俺たちも歳をとったな」の共感性と、たるませたひもに託された「老い」。的確なご改作をありがとうございました。

【読書投稿欄でぐでぐ(20)】

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

こんにちは。でぐでぐに投稿です。

【原作】
社会的距離をとれない僕たちはふたりで社会を作るほかなく

まだまだ推敲しようがあるような気がしますが、パッと思いついたものを投稿してみました。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご投稿ありがとうございます。

〉社会的距離をとれない僕たちはふたりで社会を作るほかなく

「ふたりで社会を作るほかなく」の部分が弱いような気がします。

密な状態でふたりで行う意外性のあることを、具体的に詠んでみてはいかがでしょうか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案1】
社会的距離をとれない僕たちは黙って激しくメールを交わす

「それぞれ違うスマホを見ている」とか「同じストローでタピオカを飲む」を考えたのですが、意外性が出ず、これを考えました。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

「同じストローでタピオカを飲む」が、恋の気分も感じさせ、スリリングでいいような気がするのですが?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案2】
社会的距離をとれない僕たちは同じストローでタピオカを飲む

これで最終稿でいいですか?

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

いいと思います。

【最終稿】
社会的距離をとれない僕たちは同じストローでタピオカを飲む/瀬戸さやか

「同じストローでタピオカを飲む」が絶妙で、歌として強度を増したような気がします。

的確なご推敲、ありがとうございました。

【読書投稿欄でぐでぐ(21)】

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

こんばんは。
でぐでぐに投稿です。

【原作】
真隣の壁で仕切られた細胞は近くて遠いふたりに似てる

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご投稿ありがとうございます。

〉真隣の壁で仕切られた細胞は近くて遠いふたりに似てる

硬質な上の句と、やわらかい下の句という趣向でしょうか。「近くて遠いふたりに似てる」がいい感じですね。

上の句はどうでしょうか。「真隣」という言葉がこなれてないのと、「壁で仕切られた」の字余りが気になりました。

このままでもいい歌だと思いますが、さらなる可能性を追求してみませんか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

いくつか作ってみました。

【改作案1〜3】
隣り合う細胞の壁やぶれずにふたりの距離は近くて遠い
隣り合う細胞にいる私たち隔てる壁は薄くて硬い
隣り合う壁を隔てた細胞は近くて遠いふたりに似てる

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作、ありがとうございます。

〉隣り合う細胞の壁やぶれずにふたりの距離は近くて遠い

この形がいいように思います。「やぶれずに」によって、やぶれたときの動きをイメージさせてくれます。

一首としては、細胞レベルでもっと相手に近づきたい衝動を詠んだ歌、という風に感じました。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

〉隣り合う細胞の壁やぶれずにふたりの距離は近くて遠い

では、これを最終稿でお願いします。

いつも思うのですが、改作をすると、元の作品では思いもつかなかった世界が作り出されるという感じがします。こんなに短い詩型なのに、少しだけ変えただけなのに、ガラリと世界が変わってしまって。面白いですね。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

【最終稿】
隣り合う細胞の壁やぶれずにふたりの距離は近くて遠い/瀬戸さやか

「少しだけ変えただけなのに、ガラリと世界が変わってしまって」というのは、その通りですね。この歌の場合、「やぶれずに」が加わったことで、世界が広がったような気がします。

的確なご推敲、ありがとうございました。

【読書投稿欄でぐでぐ(22)】

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

おはようございます。
でぐでぐへの投稿です。

【原作】
久々の混雑久々の残業ため息乗せて走れよ電車

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご投稿ありがとうございます。

〉久々の混雑久々の残業ため息乗せて走れよ電車

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、電車がまた混むようになりましたね。

さて、いただいたお歌は、すでに出来上がっているとも言えますが、「ため息乗せて走れよ電車」は、ちょっとベタな感じもします。

下の句の可能性を探ってみることから始めてみませんか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

改作です。

【改作案1】
久々の混雑久々の残業頭と頭の向こうの富士山

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

〉久々の混雑久々の残業頭と頭の向こうの富士山

「頭と頭の向こうの富士山」が新鮮でした! 車窓から富士山が見えると、なんだかうれしくなりますよね。

問題は、「電車」を省略したことで、車窓の景であることが、読者に伝わるかどうかです。伝わるような気もするのですが、念のため、ご一考ください。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案2】
久々の混んだ電車に揺られつつ頭と頭の向こうの富士山

「残業」はいらないかもしれないですね。

今、
頭と頭の向こう「の」富士山

頭と頭の向こう「に」富士山
のどちらがいいかと考えています。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案3】
久々の混んだ電車に揺られつつ頭と頭の向こうに富士山

富士山は東京や千葉あたりからだと朝か夕方しか見えないんですよね。主に、夕方に見えますね。だから、「仕事帰りの電車」だということは自明ということで、いけるでしょうか?

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

「混んだ電車」は朝夕の通勤時間帯だと思いましたが、夕方の仕事帰りという読みの限定はむずかしいような気がします。そこのところは、読者の想像力にゆだねてもよいのでは?

歌の情景としてもっとも美しいのは、仕事帰りの電車から見えた富士山であること。それには同意します。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案4】
久々の残業帰りの電車から頭と頭の向こうに富士山

上の句が少し説明的でしょうか?

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

おっしゃる通り、説明的かもしれませんね。

ひとつ前の、

〉久々の混んだ電車に揺られつつ頭と頭の向こうに富士山

のほうが、韻律がゆったりとしていて、いいような気がします。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

では、

〉久々の混んだ電車に揺られつつ頭と頭の向こうに富士山

これを最終稿でお願いします。
なかなか、「韻律がゆったりと」しているかどうかまでは判断できませんので。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

それでは、

【最終稿】
久々の混んだ電車に揺られつつ頭と頭の向こうに富士山/瀬戸さやか

とさせていただきます。

いま、この歌を読む人は、緊急事態宣言解除後の混雑と読むかもしれないし、また、べつの機会に読む人は、コロナ禍は意識せずに読むかもしれません。

短歌は長いスパンで読者に読まれ続けるものなので、そういった個別と普遍の両立を考えるのは、意味のあることだと思います。

韻律に関しては、推敲する際に、声に出して読んでみることを、おすすめいたします。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

ありがとうございました。

【読書投稿欄でぐでぐ(23)】

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

こんにちは。でぐでぐに投稿です。

【原作】
八十四初めてキムチ買ったとてメールに写真添付する父

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご投稿ありがとうございます。

〉八十四初めてキムチ買ったとてメールに写真添付する父

84歳で初めてキムチを買った、というところに面白みがありますね。

「八十四初めてキムチ買った」は、父のメールの文面でしょうか? もしそうならば、鉤括弧でくくると、わかりやすくなるような気がしました。

「メールに写真添付する」は実話なのだと想像しますが、短歌としてはちょっと説明的ですね。ここは想像力をふくらませて、自由に創っていい部分だと思います。たとえば、「自転車とばし見せにくる父」とか。

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

【改作案1】
「八十四初めてキムチ買った」とて辛そうな顔自撮りする父

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ご改作ありがとうございます。

〉「八十四初めてキムチ買った」とて辛そうな顔自撮りする父

「辛そうな顔」動きが出てきて、とてもいい感じだと思います。

ただ、このかたちだと、作者の目の前で、父が自撮りをしているように読めますが、それは作者の意図にかなっていますか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

それは意図にかなってませんね、自撮りした写真をメールで送ってきた、というのが意図です。

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

ですよね。

短い言葉でまとめるなら「写メ送りくる」だと思うのですが、これだと音数的に「父」が入りませんね。さあ困った。

あるいは、「辛そうな顔送りくる父」で、写メであることが伝わると思われますか?

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瀬戸さやかさん→秋月祐一

「辛そうな顔送りくる父」でどうでしょうか?

【改作案2】
「八十四初めてキムチ買った」とて辛そうな顔送りくる父

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秋月祐一→瀬戸さやかさん

読者の想像力を信じて、それで行きましょう。

【最終稿】
「八十四初めてキムチ買った」とて辛そうな顔送りくる父/瀬戸さやか

「辛そうな顔」が効いていると思います。

スピーディーかつ的確なご改作、ありがとうございました。

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*読者投稿欄でぐでぐでは、
みなさまからのご投稿をお待ちしております。
  ↓
natsutoaki.degdeg☆gmail.com
(☆を@に替えてお送りください)

* * *

【カピバラ温泉日記/秋月祐一】

3月6日(金)
[日々]3月から新しい職場に通いはじめました。最初の1週間を乗り切って、ホッと一息。週末は作句に励みたいと思います。

3月10日(火)
[日々]51歳になりました。妻から誕生日プレゼントに、カピバラ柄のネクタイをもらいました。ぼくの第一歌集は『迷子のカピバラ』です。

3月14日(土)
[読書]作家の直筆原稿を印刷して本にしたもの。たとえば、開高健の『夏の闇』とか『OPA!』などを書店で見かけますが、ぼくは、立原正秋の直筆原稿本を読んでみたいです。どこかの出版社が出してくれないかな。

3月16日(月)
[俳句]ネット句会の選句をして、評を書きました。このところ、オフラインの句会に参加できずにいるので、いまの自分にとっては、とても大切な場です。

3月19日(木)
[電影]TBSの「ぶっこみジャパニーズ」。和食の達人が正体を隠し、海外のなんちゃって和食屋に弟子入りして、その腕前を見せつける内容。Twitterでは賛否両論あるみたいだけど、ぼくは面白いと思います。発想がきわめてテレビ的。

3月24日(火)
[音楽]さだまさしさんの『情継 こころをつぐ』。美空ひばりさんの名曲の数々をカバーした、傑作アルバムです。さださんの歌声も、アレンジも素敵。

3月27日(金)
[映画]テレビ放映された『魔女の宅急便』。数えきれないくらい観てきてるのに、キキがトンボを助けたシーンで、涙がこぼれました。ぼくは、ジブリ映画のなかで、この作品がいちばん好きです。

3月29日(日)
[日々]東京は、桜が満開の季節に雪。家の中で暖房をつけていても、寒さを感じます。サビ猫くうちゃんは、ぼくの蒲団の上で、くうくう寝ています。

4月4日(土)
[電影]「志村どうぶつ園」。志村けんさんの追悼番組。志村さんが、チンパンジーの赤ちゃんプリンちゃんと全身全霊で向きあう姿に、胸を打たれました。

4月11日(土)
[映画]大林宣彦さんを偲んで、『時をかける少女』を見返しました。ぼくらの世代は、この映画で魔法をかけられ、原田知世さんを永遠のアイドルと思うようになったわけです。ぼくは、これからも、この映画を何度も見返すことでしょう。大林監督、素敵な作品を世に送り出してくださって、ありがとうございます。

4月12日(日)
[音楽]夜の音楽は、アレッサンドロ・ステッラの『Midwinter Spring』。静謐で美しいピアノアルバムです。

5月5日(火)
[映画]筒井康隆原作のアニメ映画『パプリカ』を観ました。夢と現実の境が混沌とした作劇と、平沢進さんの音楽が絶妙なマッチング。

5月6日(水)
[音楽]haruka nakamuraさんのピアノソロアルバム『スティルライフ』。ミュートピアノの柔らかな音色に包まれています。

5月8日(金)
[音楽]吉田慶子さんのニューアルバム『taurus』。坂ノ下典正さんのギターと吉田さんの歌声、という素敵なデュオのライブ盤です。静謐で豊かな演奏を堪能しています。

5月10日(日)
[読書]
おおさわほてる句集『気配』(創風社出版)より

あっ僕はあやまらないぞあおばずく

ぽこちんにしょう油が落ちた春淡し

実は僕満身創痍だ満月も

ちっぽけなぼくらのちくびゆきがふる

水温むおーいおーいはーいはーい

オロナイン常備している雪女郎

5月12日(火)
[音楽]夜の音楽は、鈴木祥子さんの『あたらしい愛の詩』。大好きなアルバムです。1曲ごとに映画のような広がりを感じます。

5月16日(土)
[読書]
山本直一句集『ちんたらぽん』(編集工房ノア)より

ピカソにも蝶にも青の時代あり

春は名のみの旅人として娘宅

青えんぴつだけのスケッチいぬふぐり

晩年晩年桜トンネルちんたらぽん

ねねの道のののとすするところてん

バキバキ夏TAROの塔も臓物も

5月17日(日)
[読書]
笹原玉子歌集『偶然、この官能的な』(書肆侃侃房)より

ゆめみどり蝶の古名がひらひらとみどりのゆめかゆめのみどりか

5月27日(水)
[電影]NHKの「解体キングダム」という番組が面白かったです。横須賀の船渠、尾道城、沖縄の牧志公設市場の解体に密着。職人技のすごさを伝える内容でした。

5月30日(土)
[短歌]今日は、zoomを利用した歌会に参加。大阪や仙台の方と、歌会でご一緒できるというのは、すごいことだと思います。運営に当られている方々に感謝を。

6月4日(木)
[映画]石橋夕帆監督の映画『左様なら』がDVD化されました! 大好きな作品なので、とてもうれしく思います。主演の芋生悠さんがすこぶる魅力的。

6月5日(金)
[読書]

さびしさの単位はいまもヘクタール葱あおあおと風に吹かれて /大森静佳

https://sunagoya.com/tanka/?p=22884

ものすごくインパクトのある歌。
岩尾淳子さんの鑑賞文もすてき。

6月7日(日)
[俳句]俳人の後藤比奈夫さんが亡くなられました。

人の世をやさしと思ふ花菜漬

この句がぼくは大好きです。

* * *

【編集後記】

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

ばびろにあばびろにあつてつぶやけば液体のねこどんどんのびる

そんな感じで、猫が伸びています(秋)

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「夏と秋」Webマガジン 第15号
2020年6月16日発行
発行人:秋月祐一
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