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アニマルパラダイス こうさき初夏 左手の小指ちぎってきましたとぽつ梟に差しだす手紙 眠れぬ夜に心臓バクバクばくばく喰らふバクに会う日に 炭酸と青将軍がはじければわたしは夢遊病になる山羊 ウォンバットはハートみたいなきんたまを広げて眠る砂にうもれて もるもつともつとときやべつ食ふきみの耳はきくらげみたいはむはむ 浴槽からフタバスズキリュウがあと5分あと5分だけおまちください 0か1かの分水嶺にさしかかる診察室に3匹のヒト 閃光は等身大に迫りゆき相似の象ら金貨を
あたらしいみづ こうさき初夏 宮沢賢治『ツェねずみ』より 「償つておくれ 償つておくれ」の『ツェねずみ』を初めて読んだ小六の秋 うまれたてのペンギンみたいな歩き方よよよよよよよよゐよゐよゐち あたらしいみづをください、できるならわたしの奥の奥から湧いて センステの水たまりから金平糖はじけるやうなスポットライト まひるまに口説かれて識るくどき方あの人にいつためしてみよう TOKYO にただよふわたしペラペラの紙は重石にたぶん勝てない いれずみを首に彫
ぽと梟 こうさき初夏 「私は詩そのものである」梟が語る時代はいつごろだらう ぽつと鳴かなくなる梟は現在下腹部上にをります ふくらんでゆく梟の胎内はふくらふくらと詩情を集め ぽつ ぽつぽと梟が鳴いてゐたよと吟遊詩人(バード)啼き ぽつ 梟のつつくピーナツ奪ふ父 ポォーーポーーポォーーーーー 身一つの夜間飛行へ旅立てば月が二つに見えて、梟 ぽ ぽ ぽぽ 梟ふくふく「通行手形を」 ぽ ぽ ぽぽ 旧姓の印鑑くはへた梟と真夏の夜にかはす密約 昨日より目を見開いた梟の小
水槽のなか こうさき初夏 かつて豚だつた足裏そこかしこ爪が空(くう)へと向かふシンクで 性欲のなかつた頃はどうやつて恋してたつけ ポンと抜く栓 母となら年の離れた姉妹だと思つてるから LINE 知らない 念仏と母の泣き声まざりあひいつか必ずわたしが喪主さ 実家なる場所へはけしてもどるまいもはやわたしは死んだ子なのだ 永遠に目覚めたくない起きたくないセミの幼虫ならばよかつた 見覚えのある割烹着まつ白の蝶結び二つやつぱり祖母だ 大泣きが先か目覚めが先なのか軽くなり