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バナナかよ、自分もできちゃうのかよ。

2020年2月4日、気管切開の手術を無事に終えた。

まず思ったことは鼻マスクから解放された爽快感の半端なさ。
と同時に、もう喋れないんだな、これからどうしようかという不安も襲ってきた。
試しに口パクで話してみると、相手によってレベルはまちまちだけど伝わる人にはそれなりに伝わると分かった。
仲の良い男性スタッフの「分かる分かる、いけるいける!」には救われたし、若い女子が高精度で読み取ってくれた時には心の中で『好きだ』と呟いた(おかしい)
そんな男なので時折ヘラヘラしていると、自分を引き戻してくれた看護師さんに「そのニヤケ顔をまた見れてよかったよ」と言われたのをよく覚えている。

数日後、主治医が注射器を持って現れた。
カニューレ(喉元に埋まってるやつ)の中にある痰や唾液の落ち込みを防ぐためのバルーンの空気を抜いたら声が出るのではということでトライ。
それによって口の方に流れてくる空気を利用して声を出せるケースがあるということだったが、刺激でゲホゲホ言いながらも少しだけ声が出た。
ただし誤嚥やリークによる血中酸素飽和濃度の低下のリスクを伴うので誰にでも可能な行為ではないが、自分の場合はマメに吸引すれば問題なかった。
送気される時だけ発声できるという条件ではあるものの、自分でも驚くペースでコツを掴んでバリバリ喋れるようになった。

数年前に大泉洋が筋ジス患者役を演じた映画"こんな夜更けにバナナかよ"を観ている人ならこの話にピンとくるものがあるかもしれない。
当時まだこの行為にはグレーな部分があったので、看護師さんにバレないようにコッソリ試してかすかに声が出るというシーン。
『アレ、自分にもできちゃうのかよ』と分かった時の喜びと言ったらそりゃもうね(誰もおっぱい触らせてくれなかったけど※映画本編参照)
結果的に自分は喋れたものの特に何の準備もしていなかったのはどうだったのかというのはあるが、現代には合成音声の技術もある。
自分の状態もこの先ずっと維持できるとは限らないので、今からやってみても良いし、これから手術する人たちにも是非とも知っておいて欲しいと思う。


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