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二〇二三年五結道劇、われわれは伝説を観た(後編)


伝説の黒ばらチームショー。正直どこから言葉にすればいいか分からないんですが、とにかく最&高でした。


①序章(当日まで)
まずツイッターで「Black Lilyにのばらさんが出ているらしい」と知った時点で壮大な序章の始まりです。もう寝ても覚めても妄想が広がる。

もともと五結の道劇は何とかして行くつもりだったものの、仕事の予定が読めず平日に行けなかったり土日は用事があったりですぐに駆け付けることが叶わず……観た方々やひとみさん・のばらさんのツイート、そして過去のBLの記憶から「あの人形が……のばらさんに……!」と、隙あらば考えてしまう。

だって人形にどう触れるか知っているわけですよ。なかなかの濃厚さですもの。どうしたってドキドキソワソワが止まりません。そして結末のあの二人の声が脳内再生されて……夢が現実になるとはこのこと。


②通常版BLのおさらい(二回目公演)
いよいよ当日。ここぞとばかりに有給をとって、張り切って開演直後から劇場へ。豪華な香盤にそのつど夢中になりつつも、ポラタイムになるとふと「百合まであと〇時間……」という心のカウントダウンがよぎります。

まずはひとみさんの二回目公演で、通常版のBLをおさらい。何度も観た大好きな演目なので流れはもちろん頭に入っていますが、それでも観るたびに惹き込まれます。

清楚な聖女。聖書に目を落とし、唱え慣れているであろう一節を朗読しています。しかしその行為が、思わぬ感情の引き金に……。自分の本能を知って驚愕したような表情から一転、開き直ったあとの妖艶さったら凄まじいですよね! は~~~思い出しただけでたまんねぇ。続けます。

ひとみさん、リップの色が特徴的だと思うんですよ。コーラルピンクかな? とてもよくお似合いで、香水の匂いと並んで「ひとみさんといえば!」というポイントのひとつではないかと思います。前の方の席だと、本についたキスマークが見えたりして、あの場所にあの唇が触れたんだ……と思ってどきどきしちゃうことがあるんですよね。ここ大事な伏線です。覚えておいてください。

聖女からサキュバスのように淫靡な姿へと変化したひとみさんが、人形を抱えて現れます。数時間後、あの人形の位置には……のばらさんが……! そう思うと、目の前の演目にさらに妄想が重なって、もう脳内は大忙し。人形を抱えて移動するところや、人形を乗せてポーズを切るところなど、再現の難しそうなところはどうアレンジするんだろう? と考えてみるものの予想もつきません。終幕の直前、流れてくる二人分の声……もうすぐこれが、観られるんだ……!


③BAT(四回目公演)
ついに四回目! と興奮が高まるなか、のばらさんの四回目の演目は「BAT」。皆様ご存じつよつよバリタチ演目です。

ところで前からうっすら思ってたんですけど、BATの衣装ってBLの覚醒後とちょっと雰囲気が似ているし、演目の始まりで流れる曲の印象や、白い椅子が真ん中にある感じもどことなくBLを思わせる共通点がありますよね。なんだか対になるような演目だな~とあらためて感じました。

舌ペロやウインク、終始挑発的なしぐさで観る側の興奮が煽られます。もちろんBATそのものに対するときめきはありつつ、この日に限ってはどうしても(この強い女がこのあと……あの人形のように……!)というやや倒錯した興奮が入り交じってしまいます。たまんねぇ。


④黒ばらチームショー
いつのまにか、正面かぶり席は全員が黒井の女に。とんでもないことが起こることだけは分かる。心臓止まるかも……。そんな緊張感のなか「いまが我々の晩年」(新陳代謝さん)という格言も飛び出します。余生ってこんなにどきどきするんだな……。

そして、ついに始まる最終回。

BL、人形を連れてくる前に一旦、思わせぶりに舞台袖にはけるシーンがありますよね? 連れてくる! と思ったらまだ連れてこない。

あの場面、わたしは個人的に「もうすぐ出番だよ! と人形を励ましに行っている」と解釈していたのですが、後日記憶のすり合わせをしたときに天才新陳代謝さんが「はじめは観客に隠れて舞台袖でイチャイチャしてたけど、やっぱり自慢したくなって見せつけに来るっていう流れではないか」と推測なさっていて、それだ!と天を仰ぎました。それだ。

覚醒したかつての聖女・ひとみ。人目を忍んだ触れ合いでは満足できず、ついに子羊・のばらの手を引いて現れます。普段空気人形(頭・手足なしのトルソー)が着ていた衣装をまとったのばらさんが現れた瞬間、もう、息を吞みました。人形に命が! 命が宿った!

露出の多い衣装に変わった覚醒後のひとみさんとは対照的に、清楚なワンピース姿ののばらさん。襟の付いた首元までしっかり隠れています。しかし! 先ほどまで「BAT」をやっていた方ですから、爪は挑発的に長いしピアスもあるし、ところどころにシスターらしくない要素があるんですよね。ここである妄想が広がります。


【黒ばらBL前日譚妄想(ここから)】

BATで向かうところ敵なしのバリタチぶりを見せつけていたのばら。しかしその魅力にあてられて身を持ち崩す人々が続出。ついに教会に目を付けられ、異端者として捕らえられてしまう。

洗脳によって改宗・改心させられたのばらの教育係にあてがわれたのがシスターひとみ。聖母を思わせるようなまなざしと、誰にでも平等に慈悲を注ぐ心の清らかさから、ほかのどのシスターよりも高位の聖女としてあがめられる存在だったひとみ。しかし周囲の期待ゆえに本心を吐き出すことができず、度重なる抑圧はいつしか歪んだかたちとなって身のうちにくすぶっていた。

そこに現れたのが、自分の欲望に正直に振る舞い、多くの人々と奔放な愛の時間を過ごしてきたのばら。洗脳を受けた今でこそ大人しく控えめなたたずまいを見せるものの、きらびやかな爪やピアス、そしてしなやかに伸びた肢体からは欲望に忠実だったかつての彼女が想像させられる。

そんなのばらをシスターへと育て上げるために教育を施すひとみ。聖書の一節をなんども諳んじさせ、自分もまた、同じことばを繰り返す。正しくあるように。清らかであるように。罪が許されるように。罪とは、何なのか?

そうした疑問がふと頭をもたげたとき、読みなれたはずの教えの言葉たちが次々と疑問に変わっていく。正しくあること、清らかであることで、いったい自分に何が残ったのか? 

本心を誰にも打ち明けることができず、他者のイメージに従って振る舞うことしか許されない。本当の自分とは一体何なのか。懊悩は止まらず、閃光が何度も瞬くような衝動に突き動かされ、ついに「本能」が目を覚ます。

【黒ばらBL前日譚妄想(ここまで)】


のばらさんの爪が長くてひとみさんの爪が短い。のばらさんはBATを、ひとみさんはBL(聖女役)を演じていたのだから当然なのですが、この爪の長さひとつとっても意味深に、もっと言えばエッチに感じてしまいます。そうだよね、ひとみさんはリードしなくちゃだから爪は短い方がいいよね……! 後日、ギャル好きのまおさんが「のばらちゃんは誘い受けなんだよ!」と分析していたときにも激しく頷きました。あの爪は誘い受け(偏見)。

のばらさんの髪にひとみさんが触れると、シスターらしからぬ強めのピアスが覗きます。「ねえこんなとこにピアス」!!!

そしてひとみさんの手でゆっくりと引き下ろされていく、のばらさんの背中のチャック。現れる十字架のタトゥー。ここに十字架のタトゥーあるのまじで絶対運命黙示録じゃないですか? 運命に導かれしチームショー。タトゥーがなんだか「洗脳のための焼き印」にも見えてきてますます妄想が捗ります。

盆が回転を始める直前、いつもなら人形に向かって十字を切ったひとみさんが自分の衣服の前を広げる決めのシーンですが、のばらさんを前にしたひとみさんは十字を切ったあと、さらに手を組んで祈りを捧げました。より強い背徳感を想像させられるエモさに心が震える一方で「食べる前のいただきますですか? エッチですね!」なんて盛り上がってしまった野卑なわたしをお許しください。

盆がゆっくり回転を始めるんですけど、盆の外側に垂れたのばらさんの髪がそれはもう色っぽくて……あと、登場の時からずっとのばらさんの表情がガチ恋で。あれ演技じゃないですよね?! 少しの不安感と、抗いようのない期待感。そしていざ触れてしまえば、あとはただ恍惚……。

一方のひとみさんは、覚醒した後はどこか挑発的な表情が印象的でしたが、後日新陳代謝さんから「時々宙にチラッと視線をやるところが、神の存在を意識しているように見えた」という証言を聞いてまた天を仰ぎました。なんという背徳感! そしてそれにも関わらず止められない欲望と衝動……たまんねぇ……。

なんとか現実にとどまろうという防衛本能なのか、心のどこかで(イチャイチャしてるふりで、実際は寸止めしてるのかな~)と思っている自分がいたのですが、とんでもない。ここでひとみさんのリップの話を思い出してください。あの特徴的なコーラルピンクが、のばらさんの肌のあちこちに、それはもうあんなところこんなところに! しっかり残っていて……ああ、そこにも唇が触れたんですね……ありがとうございます。もう拝むことしかできません。

濃厚なイチャイチャタイムから一転、曲調が明るいものに変わると、一線を越えたふたりが抱擁を交わします。

「背中に耳をつける」しぐさ、人形のときは上から背中に重なっていくスタイルだったと思うのですが、のばらさんバージョンではしっかりと抱き合うことで前から相手の後ろ首のあたりに耳をつけるスタイルになっていて、それがまたすごく可愛い。もう引き返せない、というある種の絶望が、かえって憑き物がおちたような笑顔をふたりにもたらしています。

手を握り合ってポーズ切るの最高ですよね! 互いを互いのトリガーとして、それまでの自分から解放されたふたり。そんな二人が支え合うことで美しい姿勢が保たれているという目の前の光景が本当に美しくて、まるであたらしい神像のようです。

暗転、そして、ふたりのはけたあとの舞台に残る白い椅子。聖書の一節を読み上げる二人の声はやがて穏やかな笑い声に変わり、物語は幕を下ろします。いや~~~すごいものを、観ました……。

言葉を失った黒井の女たちは、まるでカリオストロの城の秘密部隊のように音もなくポラ列へ並びます。「生きてる……」「生きてるね……」「でも一回心臓止まったと思う」「生まれ変わったね」「寿命伸びたね」みたいな会話をしたかもしれません(うろ覚え)。

天才・新陳代謝さんのおかげでひとみさん・のばらさん二人そろってのポラタイム(本当にありがとうございます)。他のお客さんのリクエストが聞こえてくるたびに、列や客席から「天才」「最高」といった呻きが漏れます。みんな天才。みんな最高。みんなが撮った写真を集めて写真集出してください。

いよいよわたしの番になったとき、もう何も言えない状態だったわたしはとりあえずお二人に手を合わせて拝みました。二枚分の写真を購入し、一枚は可愛く、一枚はエッチに! と欲望のままにおねだりして、エッチなほう(と言いつつ、ふたりがぴったり抱き合っていて、のばらさんはカメラを、ひとみさんはのばらさんを見ているとっても可愛い一枚です!)を持ち帰りにしてもう一枚を預けました。すこし未来の自分へ、幸せの時限爆弾をしかけてやりました。

嬉しいことにオープンショーもふたりそろってやってくださり、二人分のチップをそれぞれポチ袋にいれてお渡ししたのですが、せっかく袋があるので何かお礼をお伝えしたいな! と思いつつ、まだまだ言葉が出てこなかったので、「ええもん見せてもらいました」という謎の走り書きを残した記憶があります。ええもん見せてもらいましたよ本当……。

今回わたしは、チームショーがある! という情報を聞いてから数日空けて念願の観劇となりましたが、チームショーが生まれた日、なにも知らずに客席に居たらのばらさんが出てきた! という体験をした方々のことも羨ましいな~! と思います。その世界線も体験してみたい!

めちゃくちゃ腑抜けになっている自分が恥ずかしく、平気なふりをしたくて、黒井の女の皆さんに「お気を確かに~!」と言いつつ颯爽と帰ろうとしたのですが、後ろから新陳代謝さんに「桐島さんリュック全開!」と教えてもらったのもいい思い出です。わたしのお気が確かじゃなかった。最高の時間をありがとうございました!

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