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二〇二一年七頭 渋谷道頓堀劇場 感想

お友達と一度ストリップを観て以来、また行きたい! とひそかに願いつつも一人で行く勇気はなく……
ひとを誘いにくい世相もあってなかなかきっかけがつかめず……
そんな折、文フリで『ストリップが魔法じゃなくても』という素敵なご本を買わせていただき、作者の美樹あやかさん(@omoidemanjyu)からありがたいお誘いをいただいて、いざ渋谷の道頓堀劇場へ。
そこで見事にハマってしまい、ひとりで劇場に行けちゃうようになりました。
はじまりの気持ちを残しておきたくて、つたない文章ですがわたしから見た感想を書いていきます。

〇美月春さん
初めて見た春さんの演目は『板の上の……』。いきなり強烈なパンチにやられてしまいました。とにかく格好いい! セクシー! 
歌詞と表情がリンクして、強くて繊細な表現者の葛藤と昂ぶりが目まぐるしく表現されていきます。お! ま! た! せ!のところめっちゃ好きでした。
はじめて行ったその週に、我慢できず仕事帰りに二度目の道劇へと駆け込むことになったきっかけのひとつがこちらの演目。狙い通り二度鑑賞することができたのですが、暗転の瞬間の表情が一度目はどこか不敵な格好いい表情に、二度目はすこし照れたような可愛らしい表情に見えて、同じ演目を複数回見てはじめて見えてくるものもあるなと思った次第です。格好いいと可愛いの振れ幅がたまらない。
春さんのようなゴージャスな身体に生まれてみたかった……!

〇愛奈さん
お人形さんが動き出したみたいな印象のとても可愛らしい方。
衣装はアメリカのハイスクールにいるカースト上位の女の子(ファッションにもアメリカのハイスクールにも詳しくないわたしのぼんやりしたイメージです…!)を思わせるポップな雰囲気だけれど、表情や演目はしっとりとして所作のひとつひとつが美しい。
つま先、指先まで意識が行き渡っているのを感じる。そのせいか、立ち姿勢が特に好きでした。シルエットまで完璧。
伏し目がちの表情が印象的で、なぜか「盗み見ている」ようなドキドキ感を味わいながら演目を楽しみました。

〇浅葱アゲハさん
この日の香盤で唯一、以前にも演目を拝見したことがあったアゲハさん。はじめてストリップを観に行った日に、アゲハさんの空中での演技にすっかり圧倒されてとても印象に残っていたのです。
輪っかでも布でも、アゲハさんの演目の時に天井からぶらさがっている「何か」を見ると、きっとこれを使うんだろうけど……ほんとうにこれで人が浮くの……? とそわそわする。そして、毎回予想をはるかに超えたやりかたで、浮く。
すずしい表情で軽々と舞っているように見えるから、羽根が生えているのか? と思ってしまいそうになるけれど、まぎれもなくアゲハさん自身の鍛錬によって実現している光景であるということを、鍛えられたからだが物語っている。ただ座っているだけで、こんなにすごいものを見せてもらえていいのだろうか……。
ポラのときはつい「腹筋が見えるポーズでおねがいします!」とリクエストしてしまいました。アゲハさんの腹筋と、華やかなお声がとくに大好きです。


〇黒井ひとみさん
美樹あやかさんの『ストリップが魔法じゃなくても』でお名前を拝見してから、ずっと気になっていた黒井ひとみさん。その黒井ひとみさんが百合の演目をなさっていると聞いてから、わたしの人生のどこかがはっきりと切り替わったように思います。
初めて観たひとみさんの演目は人魚姫の物語。夢のように可愛らしい衣装をきこなしたひとみさんはどう見ても完璧なプリンセスなのに、演出でしっかり笑わせてくださるその緩急がたまらない。強くてかわいい、幸せは自分でつかみとる女の子の姿に元気をもらいました。
そして念願の『Black Lily』。冒頭から、これは好きになっちゃうやつだ……と確信しました。
冒頭と終盤にわずかなセリフがはいるものの、音楽が始まってからは言葉による説明はありません。それでも、ひとみさんの目の動きや舌のつかいかた、動きのひとつひとつから、ストーリーがどんどん立ち上がってゆく。むしろ、言葉による縛りがないぶん、みているひとそれぞれにオーダーメイドの物語が発生しているのではないか? と思ったりする。ひとみさんに自分を重ねることも、ひとみさんに愛される対象として感情移入することも、傍観者に徹して眺めていることも、すべてが許されている。
とりわけ好きなのが、肌をさらす直前に十字を切って天を仰ぐところ。あの瞬間もまた、わたしが仕事帰りに渋谷へと駆け込んだ理由のひとつなのでした。
『Black Lily』目当てで行った二度目の鑑賞。まだ記憶が新しいので、一度目よりもはっきりと見たいポイントを目に焼き付けることができました。そしてこの日、わたしははじめてストリップで涙を流します。それは『エスケープ』を見たときでした。
しあわせな日常。思い出ボックスのふたを開けて、なつかしさにはしゃいだ様子から一転、どこかがっかりしたように表情の曇る瞬間があります。そこから過去へと戻っていくように、華やかな衣装を身に着けて踊りだす。いまあるしあわせを選ばなければ、もしかしたらまだ続いていたかもしれない楽しい時間。けれど、衣装はすこしずつ脱ぎ捨てられてゆき、やがて身一つになった肌の輪郭を背後から真っ白なライトが照らし出す。
たしかな決意をもって凛とたたずむ華奢なからだを見ていると、なにかを選び取ることのただならぬ覚悟や、捨てざるをえないものを悼む切ない気持ち、それでも腹をくくって微笑んでみせるつよさ、そういったものが胸に直接つたわってくるようで、本当に涙がとまらなかった。このようにひとは沼にはまります……幸せ……。

〇六花ましろさん
お名前をみたときから、雪国のご出身なのかな? と勝手に想像していた六花ましろさん。真相のほどはわかりませんが、お名前のイメージ通りにつやつやの肌と、黒髪に赤リップ、赤いお着物のコントラストがとても鮮やかで、一目で引き込まれてしまいました。
演目もさることながら、ましろさんのオープンショーがすごく好きで! 華やかな演目のイメージとはまた違う、ちょっと癖のある(?)選曲に合わせてニコニコ踊るましろさんがとても魅力的で、次はどんな曲かな、とついそこを期待しちゃいました。
オープンショーの時、脚をぴん! と伸ばして何度も交差させるアレ……リングフィットを持っているわたしは知っている、あれめっちゃきついやつ(ハサミレッグをもっと大きくやる感じ)や……! リングフィットで何度も泣きをみたあの姿勢をこともなげに、余裕の微笑みでこなすましろさん。可憐な雰囲気とは裏腹の凛とした強さを、いたるところから感じました。

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