カップ蕎麦日記
2022/12/29
皆仕事を納めたらしく、コンビニの冷蔵棚に並ぶ食べ物の種類が豊富で、うらめしかった。
昼休みを使って昼ごはんを買いに行くのがもったいないから、朝に買うことになるのだけど、腹が減っていない状態で、昼のわたしのためにごはんを買うのがつらい。
つらいというか、自分が自分のために、食べたいものを探すはずなのに、コンビニでごはんを買うことを楽しみにできなかった。
家の近所に、まあまあよく行く蕎麦屋がある。定食や、丼も出すタイプの蕎麦屋だ。なんとなく、年内にはその店に行かない気がして、じゃあもう蕎麦を食べることもないなと思ったら、ここでは蕎麦を選ぶのが良い気がしてきた。
冷蔵棚にはかき揚げが乗った500円くらいする蕎麦がなかったから、どん兵衛を買った。
どん兵衛は軽いし、手頃な価格で、それでもカップ麺を久しぶりに買うわたしは、「こんなにしたっけ」と思ってしまう。
購入後、トートバッグに適当に放り込むとカラカラ、ぱらぱら、みたいな簡単な音がした。
コンビニを出て、歩きながら、たぶん今年に入ってからカップ麺を食べた回数は片手の指におさまるだろう、と自分で自分に健康マウントをとっていた。別に、日頃健康的な食生活を心がけているわけではない。
職場の休憩室は、いつも誰かしらが持ってきてくれた菓子に溢れていた。しかし、誰もが遠慮をするから菓子の減りは遅く、最近はでかい箱に入った、美味しそうな菓子があったりして、机を圧迫していた。最近の菓子状況を見かねた社員のIさんが、昨日すべての菓子を一人ずつビニール袋に分けてくれて、わたしはそれを持ち帰ったばかりだった。
だから、職場には菓子がなかった。
カップに湯を注ぐ。
注ぐけど、はじめは湯を注いでいる実感が沸かないものだ。だって全然湯が見えてこないから。
電気ポットの給湯ボタンを長押ししていると、急に目安のラインのすぐ下のところに湯が見えて、焦る。いつも肝心なところでカップの蕎麦をひっくり返す妄想をするけれど、そういう妄想のおかげで、何事も無くわたしは蕎麦を啜れていた。
どん兵衛の蕎麦はそれなりに美味く、麺が四角いかたちをしているなあと思いながら食べた。七味を入れると、より美味かった。
あと入れのかき揚げはソフトせんべいに似た食感だった。
菓子がないことに軽く落胆していたが、これを菓子の代わりとも思えなかったし、やっぱり落胆して、どん兵衛の汁を三口は飲んで、カップをすすいで、休憩時間が終わるまで眠った。