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たくさん電車に乗る旅①

10月8日(土)

午前3時。
ありえない時間にiPhoneとiPadから大音量のアラームが鳴り出す。2時間半前に布団に入ったばかりなのに、もう起きる時間になってしまった。始まったばかりの三四郎のオールナイトニッポンZEROを聴きながら身支度をして、真っ暗で静かな町を駅まで歩いた。JRの改札の前には、始発を待つようにうずくまって眠る人がたくさんいた。



5:20 東京駅

これから長い旅がはじまる。
今回の旅のテーマは、電車の中でたくさん眠り、たくさん読書をすること。最近は電車の旅をしていなかったけれど、先週行った札幌〜小樽間の旅の電車にかなり旅情があって、電車旅をしたい気持ちがかなり刺激された。
うれしいことに、10月は「鉄道開業150年記念 秋のフリーパス」という素晴らしい切符があるので、それを使って思う存分電車に乗りまくろうと思う。

まずは東海道本線で西の方へ向かう。久しぶりの東海道本線だ、と思ったけど、5月にも鈍行で浜松までは行っていた。しかし今回はその比ではない。浜松もそこそこ遠いけれど、今日は地獄の長さである静岡県を突破し、大垣、米原、京都を経由し、城崎温泉のほうまで行かなければならない。
しかも、現時点ではまだ宿を決めていないので、今日中に自分がどこまで進むのかわからない。

おとといまでは、西に行ってたくさん電車に乗るいうことしか決めていなく、昨日も、目的地は決めたものの、飛行機で行くのか、新幹線なのかバスなのかすら決めていなかった。前日の夜になっていろいろ考えるのが疲れたので、とりあえずまずは鈍行で京都くらいまで行ってしまうことにした。どこまで進むかは長い電車の中で決めて宿を予約すれば良い。


わたしは普段、電車で座らない。人と一緒にいる時は、人に合わせて座るけれど、一人だと空いている時ですら立っていることが多い。
知らない人と触れそうなほど近づくのが苦手だし、わたしは身体が小さいので、少しガタイの良い人が隣に座ると、押しつぶされそうになって、座っているのに全く落ち着けない。
しかし電車の旅となると、自ら積極的に座らないと、今後に響いてくる。なので旅の電車に限っては、両サイドに大きな人がいようとも、なるべく頑張って座る。
しかし、普段座り慣れていないので、目の前に単語帳を持って勉強している学生が立っていたりすると、「ただ遊びにきただけなのに座っててすみません、、 譲ってあげたいけどいまから何時間も電車に乗るから座らないといけないんです…」と思ってしまう。そのうちに電車の揺れが心地良くて眠ってしまい、目を開けた時には、先ほどの学生はいなくなっていた。


東海道本線は、東京駅から横浜、静岡県を縦断し、名古屋、岐阜、京都、大阪を通って、神戸まで続く路線だ。大きな街を通るし、乗り継いでも乗り継いでも、ずっと人が多く、乗っていてもあまり旅の電車している感じがしない。はじめの頃は、そんな東海道本線でもうきうきしながら長距離移動をしていたが、何回か往復すると、車内の人の多さから、「せっかくの旅なのにこんなに人がいてもったいない」なんて思うようになった。
地方のガラガラの電車のクロスシートに乗るのが好きなので、一刻も早く人が多くてロングシートのエリアが終わってほしすぎる。


9:43 浜松駅で乗り換え

乗り換え前からすでに停車していた電車には、すでにたくさんの人が座っていた。あとからやってきたわたしは、もちろん座れなくて、ドアの前で車窓を見ながら立っていた。テーマである睡眠も読書もしづらい状況なので、今朝聞いていた三四郎のラジオの続きを聴くことにした。
そうしているうちに、運良く近くの席が空いたので座ることができた。なので、また寝た。睡眠不足が功を奏してか、今回はかなり寝ている気がする。東海道本線を使って旅する時、いつも静岡が長すぎてうんざりするのだが、今回は寝てばかりいたので静岡も愛知もすぐに終わってくれてお得だった。おかげで4時台から電車に乗り続けてる気がしない。

車内にパンパンに人が詰まっていた人も、名古屋駅で一気に降りていった。これが気持ち良い。
大きな川が目下に広がる。電車からでも水のきれいさがわかるからすごい。

ついにクロスシートの車窓側の席に座ることができた。いままであまり景色を楽しめていなかったが、この席は景色独占、見放題である。何度か通ってきた路線なので、いままでの旅が思い出されて胸がギュッとなる。


13:50 大垣駅で乗り換え

名古屋で人が一気に降りてから大垣までは平和だったけれど、米原行きの電車から、ふたたび人がわんさか乗ってきた。きっとみんな京都へ行くのだろう。わたしは席に座れなかった。

他の席に座れなかった人たちの中には、わたしがいたドア前端っこ(背もたれ用のクッションがついているところ)を、網棚に荷物を置くのを利用してポジションを奪ってきたおじさんがいたり、醒ヶ井駅で「焼物探訪」という自作っぽいしおりを持った老夫婦が乗ってきたりした。

混雑した電車を乗り換え、今度は姫路行きの快速列車で京都へ向かう。あと少しで京都だから寝ないようにしようと起きていたら、突然電車が減速して止まってしまった。
人身事故で、京都ひとつ手前の山科駅で運転見合わせになってしまったらしい。京都まであと少しだったのに……

なんと、1時間も電車が止まってしまうそうだ。長距離電車の旅は、少しでも乗り換えプランが狂うと、すべてが崩壊するおそれがある。場所や時間によっては乗り換えプランの崩壊=死である。

しかし、幸いここ山科駅には地下鉄がある。
本当は京都駅でごはんを食べてゆっくりしていく予定だったけれど、京都駅のほうはあきらめて、山科駅から地下鉄で二条駅に向かうことにした。
かなしみながらSHIZUYAでパンを買った。

14:30 二条駅

二条駅に到着。本日初ごはんはやよい軒だ。
本当は志な乃っていうお蕎麦屋さんに行こうとしたけれど、駅からの距離と自分のごはんを食べるスピード(ものすごく遅い)を考えると、電車に間に合わない恐れがあるので、駅近のやよい軒にした。駅前チェーン店ありがた〜…

なす味噌&焼きサバ定食を食べ、ギリギリで嵯峨野線に乗れた。嵯峨嵐山駅を過ぎると、トンネルと渓谷の美しい風景を繰り返して進んでゆき、一気に山と田んぼだらけの景色になった。乗客も一気に減った。これだ、わたしが好きな旅はこれなのである。

さて、ここからが本番である。電車はどんどん西へと進んでいく。キングオブコントが始まる19時までにチェックインできるように、兵庫県豊岡市にある江原という町に宿を取った。
今夜は江原を目指してあと3時間ほど電車に乗る。


🚃 蓋のコーナー 🚃

福知山市のドッコちゃんの蓋


乗り換えがシビアで、ほとんど町に降り立つことなく進んだ。写真もあんまりない。
明日はいろんな蓋とか町を見たいな…!