見出し画像

幸せと孤独を腑に落ちる一言でまとめた小説に出逢った【マチネの終わり】

今、マチネの終わりという小説を読んでいる。一言で表すなら、「今まで見てきた恋愛を表現しているすべての本や映画、ドラマとは段違いに心に残るもの。」という感じだ。


小説を読むのはいつぶりだろうと振り返ってみると、きっと中学生以来なんじゃないかと思った。

私は自分でも嫌になるくらい現実主義者で、ノンフィクション以外にはあまり興味が湧いてこなかった性だった。読む本といえば、政治や経済、医療や栄養についてや、哲学や心理学など、基本的に社会や自分自身のことを知ろうとするものばかりで、現実世界で役に立つものが前提だった。

映画でも小説でも、自ら好んで触れるとしても、「限りなく"現実に起こり得るだろう"」と思えるようなものだった。

しかし、「マチネの終わり」は、そんな現実主義者な私も久しぶりに夢中になれる小説であり、現実世界で役に立つと思えるようなものだった。

きっと、小説に出てくる洋子の人物像と自分がすごく重なったからだろうと思う。

・・・

このnoteでは、以下の3点を書いていこうと思う。

まだ全部読み終わるまで50%くらいなのだが、そこまでの私の感想と、軽いあらすじ印象に残った言葉をここに残しておこうと思う。

正直印象に残る言葉は今ここに紹介できないくらいたくさんあるのだが、その中でもかなり印象に残った2つの言葉をここに書記そうと思う。

【個人的な感想】

人類にとって、「愛」とは最も苦しめられる概念であり、最も歓びを見いだせる概念でもあり、永遠のテーマであると私は思う。

自分と相手が同じタイミングで、しかも互いが100%求めている愛なんて、この世界において、「類稀なる奇跡なのかも知れない。」とこの小説を読むと以前にも増して思わされる。

しかし、この小説で出てくる洋子と蒔野は、互いがまるで出会うことが決まっていたかのような、なんとも辻褄の合う出逢いを果たす。そして、理屈も余計な言葉も要らないような二人の関係は、もはや神秘的なものを感じてしまうほどだった。

そして同時に、「愛情とはこんなものなのか」と長年の謎が溶けたような感覚になった。

そして、この二人を見ていて、二人が羨ましいなという気持ちにもなり、まだここまでの経験は恐らくしていないであろう自分を振り返ると、少し寂しい気持ちにもなった。しかし、この小説で動いた感情によって自分にもまだ人並みに動く感情があることを確認でき、自分の未来にも期待を抱けるような作品だった。

その「愛」を見い出したまでのプロセスと感情を的確にきめ細やかに丁寧に表現している作者の技術は、本当に素晴らしい感受性と表現力だと感じた。

マチネの終わり【あらすじ】

サントリーホールでの演奏を終えたクラシックギタリストの蒔野聡史は、偶然演奏を聞きに来ていたジャーナリストの小峰洋子と出会う。

その夜のコンサートで、会場の聴衆を惹きつけたのは、アランフェス協奏曲だったが、彼が会心の出来だと感じていたのは、アンコールで演奏したブラームスの間奏曲第2番イ長調だった。

そんな中で小峰洋子はたった1人、ブラームスの間奏曲第2番イ長調が良かったと言ってくれたのだ。

懇親会で2人は語り合い、お互いの波長が合うことを確認しながらも、彼女にフィアンセがいることもあり、その夜は特に何も起こらないまま別れた。

洋子はその後、バグダッドに取材に向かい、蒔野は日本からスカイプやメールで連絡を取っていた。

そんなある日、バグダッドの彼女が宿泊していたホテルでテロ事件が起こる。

幸い、彼女は一命をとりとめるも、その出来事が心に大きなトラウマを植えつけてしまうこととなる。

蒔野はマドリードでコンサートを開催することとなり、その際にパリに住む洋子のもとを訪れる予定を立てる。

蒔野は彼女に再会し、気持ちを抑えることができなくなり、彼女に愛を告白し、フィアンセとの結婚を止めようとする。

洋子はその求めに応じたかったのだが、迷いが生じ、マドリードのコンサートの後に、再びパリを訪れた際に返事をすることにしたのだった。

揺れ動き、すれ違う2人の恋愛譚は、どんな結末を迎えるのか・・・?

印象に残った言葉①

幸福とは、日々経験されるこの世界の表面に、それについて語るべき相手の顔が、くっきりと示されることだった。

洋子と蒔野が仲睦まじく過ごす日々の中で、表現されていた言葉だった。その二人の中を表す言葉か他にもあったので、これもシェアしておきたいと思う。

会場を出る時間が迫っていたが、二人の会話は尽きる気配がなかった。それは、最初だからというのではなく、最初から尽きない性質のものであるかのようだった。

私はこの表現がしっくりときていて、なんというか、上手く言えないが、自分の求めていた答えのようなものをこの本は私にくれたように感じている。

・・・

印象に残った言葉②

孤独というのは、つまりは、この世界への影響力の欠如の意識だった。自分の存在が、他者に対して、まったく影響を持ち得ないということ。持ち得なかったと知ること。──同時代に対する水平的な影響力だけでなく、次の時代への時間的な、垂直的な影響力。それが、他者の存在のどこを探ってみても、見出せないということ。

孤独については、私も考えてきたテーマだったが、この小説の中では、いとも容易く一言で孤独について表現されていたかのように見えた
が、きっと作者がこのように秀逸な表現ができるということは、作者もまた孤独について人一倍考えてきた人なのかなとも思った。

この孤独を表す一言が正解のように感じた。

そして、主人公の蒔野の細やかな心情を繊細に表現されていて、本当にどれも心に刺さる言葉が多かった。

多少のネタバレはあったが、ぜひ興味を持った人は読んでみてほしい。映画もあるみたいなので、小説を読んだら映画も観ようと思う。

読んでくれてありがとう。ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?